2015年10月中旬
キイロスズメバチ巣の定点観察#10
以前の定点観察#3でキイロスズメバチ(Vespa simillima xanthoptera)が営巣する軒下をウロウロと歩き回っている黒っぽい昆虫が気になりました。
スズメバチの巣に寄生するハネカクシやゴキブリだとしたら面白い話です。
▼関連記事
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この日の観察では、謎の虫の正体を突き止めることに専念しました。
シーン1:6倍速映像
クサギカメムシ(Halyomorpha halys)が軒下の垂木に沿って右往左往しています。おそらく越冬場所を探し回っているのでしょう。
晩秋になると毎年クサギカメムシは屋根裏や屋内にも続々と侵入して集団越冬することが知られています。
カメムシの歩行を見ていても、スズメバチの巣に誘引された動きではなさそうです。
遂にキイロスズメバチの外被に偶然迷い込みました。(@1:14〜)
しかし巣の本体まで降りてくることはなく、そのまま軒下の棟木へ移動しました。
在巣のスズメバチは未だカメムシに気づいていないのか、それとも無害だと無視(黙認)しているのでしょうか。
カメムシを攻撃したり獲物として狩ったりすることはありませんでした。
シーン2:1倍速(リアルタイム)映像(@1:25〜)
棟木の付近の外被にクサギカメムシが迷い込んで徘徊しています。近くで外被を増築していたキイロスズメバチ♀にも気づかれず、ひっそりと立ち去りました。
シーン3:1/8倍速スローモーション(@2:10〜)
後半は巣に出入りするキイロスズメバチ♀の飛翔シーンを狙って240-fpsのハイスピード動画に記録しようと長撮りを繰り返しました。軒下が薄暗いせいで(光量不足)蜂の羽ばたきがあまり上手く撮れなかったのですが、その映像の中に興味深い対決シーンが偶然写っていました。
巣の外被上はなぜか騒然としており、4〜5匹の蜂が巣口の周りを羽ばたきながらパトロールしています。
巣に迷い込んだクサギカメムシが外被に静止していると保護色で非常に見えにくいですね。(動き出さないと気づきません。)
外被上に迷い込んだクサギカメムシが遂に外被点検中のキイロスズメバチのワーカー♀に見つかってしまいました。
蜂は羽ばたいて威嚇しながらカメムシを追い立てます。
安易に噛み付いたり攻撃を加えないのは、毒ガスの反撃を恐れているのかもしれません。
(これまでに何度も繰り返し侵入されて、蜂もカメムシ対処法を学習していそうです。)
慌てて逃げるカメムシは外被から転げ落ちました。(@3:10)
追跡者は震わせていた羽ばたきを止めました。
同様のシーンがもう一度繰り返されます。
ところが今回は、外被上を逃げるカメムシが一直線に巣口へ向かっています。
巣内へ侵入した!と思いきやキイロスズメバチの門衛に撃退され、挟み撃ちされたカメムシは落下しました。(@4:55)
追跡していた蜂もすぐに飛び立ちました。
その後の展開も興味深く、巣口から出てきた門衛が興奮したように羽ばたきながら巣口周囲の外被をパトロールしてから巣に戻りました。
映像ではいまいちはっきりしないのですが、入巣直前の羽ばたきが扇風行動のように見えました。
頭は巣内を向いているので、ニホンミツバチがやるような排気行動だとすると、追い払ったカメムシの最後っ屁(毒ガス)を換気しているのかもしれません。
巣内の冷却が必要になるほどこの日の気温は暑くありませんし、扇風行動が見られたのはカメムシ遭遇戦の直後だけでした。
肉食性のカメムシでない限り、もしスズメバチの巣への侵入が成功したとしても無害な居候として潜伏するだけでしょう。
寄生や共生のような緊張を伴う緊密な関係ではないはずです。
スズメバチの巣は断熱材で守られたシェルターですから、クサギカメムシが越冬する隠れ家として向いているかもしれません。
クサギカメムシがキイロスズメバチの巣に次々と侵入すれば、やがて集合フェロモンの効果であたかもスズメバチの巣に誘引されているように見えるはずです。
コロニーが解散した後にスズメバチの古巣を調べてみれば、多数のカメムシが集団越冬していそうです。
※ 動画編集時に自動色調補正を施してあります。
つづく→#11:キイロスズメバチの巣に侵入する寄生ハエ?
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