エントツドロバチの営巣観察@東屋軒下:その2
2012年7月下旬
初期巣Eに出入りするエントツドロバチ♀(Orancistrocerus drewseni)が最も活発なので、これを集中して観察することに。
巣材の泥玉を咥えて帰ると巣内で反転し、中から煙突を増築します。
泥巣の中で蜂が方向転換できる広さの育房があるようです。
この作り方なら蜂が通れる内径を保ちつつ煙突をいくらでも長く伸ばせますね。
初めに、引きの絵で撮った煙突作りを10倍速の早回し映像でご覧下さい。
蜂が外出するのと入れ替わりで、小さな白い蛆虫が出来たばかりの煙突の縁を乗り越えて中に侵入していました!
辺りを飛び回っていた寄生ツリアブ♀が産み付けた幼虫でしょうか?
次は接写してみました。
ろくろも使わずに円筒構造を泥で作る匠の技をご覧下さい。
巣材の泥玉を煙突の縁の円周に大顎で薄く伸ばしていきます。
水を吐き戻しながら左官作業を続けます。
蜂の首の膜質が銀色に光って見えるのが印象的。
出巣する際にエントツドロバチ♀の体を見ると、胸背が特に泥で汚れています。
一方、腹部はきれいでした。
次に蜂は泥巣の外で何やら作業を始めましたが、死角で見えません。
外側から煙突を整形しているのかな?
巣材の泥玉を使い切ったのに、なぜか口から水を巣の外で吐き戻しています。
残念ながらカメラのバッテリー切れで映像は中途半端になってしまいました。
接写中にも、泥巣のすぐ上のボルト表面を這い回る白い蛆虫が撮れていました。
これも寄生ツリアブの幼虫ですかね?
寄主エントツドロバチに対抗手段はあるのでしょうか?
蜂が在巣であれば煙突内で蛆虫を見つけ次第、噛み殺すのでしょう。
入り口に作られた煙突は、蜂の留守中に寄生者が巣内に侵入しても育房にすぐ到達しないよう時間稼ぎになれば良いという防衛戦略と思われます。
トンネルをX線で透視して寄生ツリアブ幼虫との攻防を観察・撮影してみたくなります。
また、軒下を徘徊中のクロアリが煙突に侵入した現場を目撃しています。(すぐに出てきた)
真っ直ぐな煙突にはいわゆる「蟻返し」の効果は薄いことが分かりました。(映像なし)
煙突の泥が乾いたら次の工程として内壁を磨いてつるつるに仕上げます。
これも寄生対策に効果があるのだろうか?
関連記事はこちら→「初期巣の煙突内壁を磨くエントツドロバチ♀」翌日には初期巣Eの入り口は完成し、煙突の先端は下向きに曲がっていました。
この屈曲部分の作り方に一番興味があったので、また来年に持ち越しです。
【追記】
日本のエントツドロバチと直接の関係はありませんが、『アリからのメッセージ (ポピュラーサイエンス) 』p84を読んでいて面白い記述を見つけました。
個人的な覚書として残しておきます。
トリゴナという熱帯性のミツバチの仲間は、木の空洞に巣をつくるが、その入り口はロウでできた長い管の先にある。念のいったことに、管のまわりを粘着性の物質でおおっている。アリを近づけないための工夫である。ところがアリも知恵者である。せっせと土塊を運んできて管にはりつけている。堀を埋めて巣に侵入しようという魂胆である。こうして毎日、ハチは管を伸ばして粘液をはりつけ、アリはせっせと土を運ぶというわけで、とうとうその管が1メートルにも達した例をマレーシアのFRIの森で目撃した。
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