2025/07/28

アナグマの営巣地を深夜うろつくニホンイノシシの母子:疥癬個体?【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2024年6月下旬

シーン0:6/11・午後13:26・晴れ(@0:00〜) 
シーン0:6/11・午後14:10・くもり(@0:04〜) 
平地の二次林にあるニホンアナグマMeles anakuma)の旧営巣地(セット)に2台のトレイルカメラを設置して、定点監視しています。


シーン1:6/23・午後23:41・気温24℃(@0:00〜) 
アナグマの家族(母親♀と4頭の幼獣)が引っ越してきた翌日の深夜に、なんとニホンイノシシSus scrofa leucomystax)がセットに登場しました。 


この地点(平地に点在する二次林)でイノシシが写ったのは初めてなので、驚きました。 
山から降りてきたのでしょうか。 
林床で餌を探し歩く際に落ち葉の匂いを嗅ぎ回る鼻息♪が聞こえます。 

この個体は、体毛が背中にしか残っておらず、背中に黒いたてがみが密生しています。 
夏毛に生え変わっている途中なのかと私は最初思ったのですが、イノシシは他の動物と違って、季節の変わり目に明瞭な換毛が起こることはないのだそうです。 
そして、体表の側面にシミのような斑点があります。 
赤外線による暗視映像ではよくわからないのですが、疥癬など抜け毛が激しい皮膚病の個体かもしれません。 
昼間の自然光下で症状をじっくり見たかったです。 





左の暗闇から大型の別個体がやって来て合流しました。(@0:23〜) 
おそらく母親♀と思われる大型個体には、体中に黒い毛が疎らに?生えています。 
小さい方のイノシシ(疥癬感染個体)は幼獣らしいと分かりましたが、脱毛のせいか体表にウリ(瓜)のような縦縞模様はありませんでした。 


そのイノシシ幼獣が、咳のようなクシャミのような音を発しました。(@0:29〜) 
アナグマ家族の濃厚な残り香が気になって、地面を嗅ぎ回っているだけかもしれません。 



シーン2:6/23・午後23:41・気温27℃(@0:00〜) 
別アングルで設置した監視カメラでも、イノシシ母子の登場シーンが撮れていました。 

イノシシの親子(母子)が林床の匂いを嗅ぎ回っているときに、幼獣がクシャミ♪をしました。(@1:16〜) 
何か土埃でも吸ってしまったのでしょうか。 

獣道を通って右へ行く途中で、幼獣がアナグマの巣口Lを発見して立ち止まりました。 
しかし、あまり近寄ろうとしません。 
実はこのとき、アナグマの家族は巣穴Lの奥に立て籠もっていたのですが(映像公開予定)、巨大な侵入者を撃退することはありませんでした。 
もしイノシシとアナグマが暗闇で対決したらどうなるのか、興味があります。 


シーン3:6/23・午後23:42(@2:07〜) 
ニホンイノシシの母子がアナグマのセットから立ち去った後も、右の死角から物音が続いています。 
イノシシの鼻息♪やパキッ♪と落枝を踏む音が聞こえました。 

画面右下に転がっている落枝が動いたと思ったら、イノシシの幼獣が戻ってきました。 
地表を鼻面で嗅ぎ回って餌を探しています。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 
※ イノシシの鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。


【考察】 
 イノシシ幼獣の皮膚病が疥癬だとしたら、その原因である寄生虫ヒゼンダニSarcoptes scabiei)がアナグマにも伝染するのではないかと心配です。 
採餌中に繰り返しているクシャミも土埃などを吸ってしまっただけなら良いのですが、何か病気の症状の一つだとしたら心配です。

近年報告例が増えているイノシシの感染症として、疥癬症がある。これはヒゼンダニが皮膚に寄生する皮膚病で、強いかゆみが起こり、皮膚がかさかさになる。感染した個体は体を擦り付けるので脱毛し、ひどい場合は全身がただれてしまう。症状が進んだときには、食欲が減退し、衰弱して死に至ることがある。イノシシの疥癬症は、飼育個体で発症が認められていたが、最近は中国・九州地方の野生個体にも認められており、更に広がりつつある。 (環境省のPDF資料より引用)



つづく→

山中の水溜りで水浴し、ホオノキの幹をつついて獲物を探すコゲラ【野鳥:トレイルカメラ】

 

2024年6月下旬 

シーン1:6/28・午後13:14・くもり・気温29℃(@0:00〜) 
山林に湧き水が滲み出した湿地帯があり、野鳥や野生動物の水場となっている水溜りを自動センサーカメラで見張っています。 


シーン2:6/28・午後14:41・晴れ・気温29℃(@0:04〜) 
雨が降らないので、翌日には水が少し減っていました。
コゲラDendrocopos kizuki)が水溜りに来ていて、かなり浅いのに水浴を始めました。 
左側の深くて白く濁っている泥水には入らず、上澄みが透明な浅い水場を選んでいます。 
なかなか水浴しないので、警戒しているのかと思いましたが、ついでに岸の泥濘で虫を捕食しているようにも見えます。 
短い行水を済ませた後は、右下手前に飛び去りました。 

しばらくすると、キツツキが鋭い嘴で木をコツコツ♪叩く音が録音されていました。(@0:43〜) 
縄張り宣言する速いドラミング音♪とは違い、遠慮がちに叩いています。 
この監視カメラはホオノキ高木の幹に固定してあるのですが、おそらく水浴後のコゲラが木登りしながらあちこちつついて、打音検査のように材内の空洞を探しているのでしょう。 
木に穿孔している虫を捕食するのが目的です。 
トレイルカメラの本体を直接つつかれずに済んで良かったです。 
最後に樹上から飛び去る羽音が聞こえました。 

水浴シーンを1.5倍に拡大した上でリプレイ(@1:53〜)。 


※ 水浴時の水音や打音検査♪が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。

2025/07/27

ニホンアナグマ♀が今季産まれた幼獣4頭を引き連れて旧営巣地に引っ越してきた!【トレイルカメラ:暗視映像】

 


2024年6月下旬 

平地の二次林にあるニホンアナグマMeles anakuma)の旧営巣地(セット)を自動撮影カメラでしつこく監視してきたのは、越冬中に死んだ個体の次に誰か別の個体が引っ越してくるはずだと信じていたからです(願望)。 
今季はこの巣穴で出産、育児するアナグマ♀は居ませんでしたが、遂に執念が実りました。 


シーン1:6/22・午後22:48・気温22℃(@0:00〜) 
アナグマの幼獣3頭が巣口R付近で元気にはしゃぎ回っていました。 
初めての環境で興奮しているようです。 

すぐに母親♀が巣穴Rから外に出てきました。 
腹面に乳首があり、首筋(背中)には交尾痕があるので、成獣♀と分かります。 

この母親♀右目<左目は、今季も無事に別の巣穴で出産育児に成功していたことになります。 
幼獣が離乳し長距離を出歩けるようになったのを見計らって、旧営巣地に転入してきたのでしょう。 

母親は幼獣たちを巣内Rに招き入れました。 
しばらく母親♀が巣口Rの外に出てきて辺りを警戒しています。 
背後から幼獣1頭がついてきました。 

この時点(シーン1)では幼獣が3頭しか写っていません。 


シーン2:6/22・午後23:06(@0:48〜) 
右を見つめて警戒していた母親♀が身震いしてから、巣穴Rに戻りました。 


シーン3:6/22・午後23:39(@1:00〜) 
いつの間にか、アナグマの家族(母子)が巣外で散開していました。 
母親♀が連れて歩いている幼獣は3頭ではなく、4頭でした。 

巣口L付近で、母親♀は近くに居た幼獣の尻の辺りを舐めました。(対他毛繕い) 
母親♀は左へ採餌に出かけたのかな? 
幼獣3頭がセットに居残り探索する間、1頭は母親♀について行ったようです。 


シーン4:6/22・午後23:40・気温21℃(@2:00〜) 
別アングルで設置した監視カメラで続きが写っていました。 
母親♀が画面の右端で採食していると、幼獣たちが興味津々で集まって来ます。 


シーン5:6/22・午後23:45(@3:00〜) 
巣口Lおよびその左で、幼獣3頭が探索したり遊んだりしています。 
1頭の幼獣が立ち止まって痒い体を掻きました。


シーン6:6/22・午後23:46(@4:00〜) 
幼獣2頭が巣口R付近でちょっと格闘遊びをしました。 
幼獣は足元がまだ覚束なくて、その片方が巣口Rに転がり落ちかけました。 
マルバゴマキの細根や落枝に体が引っかかって、なかなか抜け出せません。 

手前の林床で独りひたすら餌を探している個体がいます。 


シーン7:6/22・午後23:47(@5:00〜) 
右エリアで幼獣2頭がうろついています。 
獣道で、ある地点が気になるようで、落ち葉の匂いを嗅いだり、落枝を咥えて引っ張ったりしています。 


シーン8:6/22・午後23:49(@6:00〜) 
幼獣3頭と母親♀が手前からセットに戻ってきて、巣口Rに少しずつ近づきます。 


シーン9:6/22・午後23:51(@7:00〜) 
母親♀右目<左目が巣穴Lに入りかけたものの、なぜか止めて後退りで出てきました。
 (奥には「いざりタヌキ」の白骨死骸が転がっているのではないかと私は推測しています。) 

母親♀は左に移動し、幼獣2頭がセットをうろついています。 


シーン10:6/22・午後23:51(@8:00〜) 
別アングルで設置した監視カメラの映像に切り替えます。 
幼獣2頭が巣口Rの横で取っ組み合いをして遊んでいます。 

その間、別個体の幼獣がマルバゴマギの根元にある野ネズミの巣穴の匂いを嗅いでいるようです。 

母親♀が幼獣の尻の辺りを舐めてやり(対他毛繕い)、巣穴Rに入りました。 
巣口Rが幼獣で混み合っていたのに、母親♀は幼獣を踏んづけながら入巣R。 
引っ越しで疲れ切った母親♀は巣内Rで寝るようです。

しかし4匹の幼獣はまだ遊び足りないようで、巣外をうろついています。 


シーン11:6/22・午後23:52(@9:00〜)
1匹の幼獣が右下エリアで独り採餌活動しています。 
頑張って地面を掘り返しているようです。 


シーン12:6/22・午後23:55(@10:00〜) 
うろついていた母親♀が右下エリアに座り込み、幼獣に毛繕いをしてやります。 


シーン13:6/22・午後23:55(@10:23〜) 
別アングルで設置した監視カメラの映像に切り替えます。 
広場で格闘遊びしている2頭の幼獣を放っておいて、母親♀が左から右へノソノソと移動します。 
左端に座り込んで、幼獣に対他毛繕い。 

4頭目の幼獣が右から歩いてセットに戻ってきました。 


シーン14:6/22・午後23:57(@11:23〜) 
広場で三つ巴の格闘遊びが繰り広げられています。 
その間、左上エリアでは母親♀が幼獣と相互毛繕いしているようです。 (白い目が光って見えるだけ) 

セットに戻ってきた母親♀が、近くに居た幼獣を次々に掴まえて毛繕いしてやります。 


シーン15:6/22・午後23:59(@12:23〜) 
母子の相互毛繕いを別アングルで。 


シーン16:6/22・午後23:59(@12:57〜) 
母子の相互毛繕いのつづき。 
巣口Rの近くで独りで餌を探し回る幼獣がいます。 

他には、広場の奥でミズキの根元で木登りに挑戦している幼獣個体もいます。
根元の分岐を自力で乗り越えるのが楽しくて仕方がないようです。 


※ 鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。


【考察】 
母親♀がカメラ目線になると、赤外線を反射する目のタペータムが左右非対称(右目<左目)の個体でした。 
この形質(特徴)は、前年にここで出産、育児した母親♀と同じです。 
長らく姿を見ていなかったのですが、存命で健在だったことが分かり、安堵しました。 
彼女が産んだ幼獣は全ての個体で目が左右均等なので、少なくとも優性遺伝(顕性遺伝)の異常ではないと言えます。 

母親♀右目<左目は、前年に続いて今季も幼獣4頭を無事に育て上げていたことになります。 
子連れの引っ越しにヘルパー♂は付き添わなかったようです。 

今季の母親♀がこの営巣地で出産したのではないと断言できる理由は、
  •  ♂の求愛および交尾を見ていない。 
  •  ♀の巣材集め行動を見ていない。 
  •  ♀が歩けない幼獣の首筋を咥えて連れ回すのを見ていない。 
  •  巣外での授乳シーンや対他毛繕いを見ていない。 


母親♀は少なくとも2つの巣穴を毎年交互に使い、出産と育児で使い分けているようです。
前年はここで出産し、離乳すると幼獣を連れてどこかに転出しました。 
今季はその逆パターンになります。
同じ巣穴に住み続けると、巣材に寄生虫が湧いてしまうのかもしれません。 

今季はこのまま越冬までアナグマ家族が住み続けてくれるでしょうか?
それまでタヌキの♀♂ペアが頻繁に巣穴を内検していたので、てっきりタヌキが巣穴を乗っ取るかと思いきや、予想外の展開になりました。 
アナグマ家族の転入後は、ニホンカモシカやイエネコなどがセットに近寄らなくなりました。 


ランダムに記事を読む