2023/11/14

里山の溜め糞場で排便するニホンカモシカ【トレイルカメラ】

 



2023年4月中旬 

里山でスギ植林地の上端部に残されたニホンカモシカCapricornis crispus)の溜め糞場srを自動センサーカメラで見張っていると、ようやく待望の証拠映像が撮れました! 


シーン1:4/11・午前6:11・気温6℃・(@0:00〜)日の出時刻は午前5:08。 
早朝に右から歩いて来たカモシカが手前の溜め糞srの匂いを嗅ぐと、左向きのまま立ち止まりました。 
ちらちらとカメラ目線になりつつも、立ったまま糞粒をポロポロと大量に排便しました。 
脱糞中は尻尾を少し持ち上げています。 
用を足すと左下に立ち去りました。 
残念ながら股間の肛門や外性器は見えず、カモシカの性別は不明です。 
ちなみに同じ溜め糞場srで排尿シーンも撮れたのですが、その体勢から♂が来ていることが分かっています。 



トレイルカメラをもう少し左に向けて設置すれば良かったですね。 
それでも、念願だった野生カモシカの排便シーンが遂に撮れて、感無量です。 


シーン2:4/14・午後・(@0:55〜) 
3日後に山を登り、現場入りしました。 
トレイルカメラと同じアングルから現場検証を始めましょう。 
撮影中は気づかなかったのですが、動画の冒頭でカメラのレンズの近くをハエが飛び回っていました。 
獣糞に集まる食糞性昆虫の活動が再開したことを示しています。 
奥の斜面には未だ少しだけ残雪があります。 

スギの落ち葉が敷き詰められた林床の溜め糞場srには新旧の糞粒が大量に残されていました。 
3日前に残された新鮮な糞粒は黒く艶があります。 
個々の糞粒は歪んでいたり潰れていたり、形がまちまちでした。 
排泄から日にちが経つと糞粒は色褪せ、黒から茶色になります。 
糞塊の横に私の右手を広げて写し込み、大きさの目安としました。 
スギ大木の右下に残る最大の糞塊が最も古いようです。 
これが全て1頭のニホンカモシカが残した糞塊なのか、それとも複数個体が溜め糞場srを共有しているのか、知りたいところです。

※ いつもの私の悪い癖で、現場検証の撮影ではカメラを忙しなく振り回してしまい、酔いそうな動画になってしまいました。 
もっとゆっくりゆっくりカメラを動かさないといけません。 
苦肉の策として、再生速度を70%に落としたスローモーションに加工してお届けします。 
落葉落枝を踏みしめる足音が間延びしているのはそのためです。 


ニホンカモシカの排便行動について知りたい疑問は未だ山ほどあり、これから面白くなりそうなのに、本プロジェクトを泣く泣く打ち切りました。 
限られた台数の撮影機材でやり繰りするとなると、プロジェクトに優先順位を決めないといけません。 
アナグマ営巣地のプロジェクトに回すため、カモシカ溜め糞場srのトレイルカメラを撤去することにしました。(選択と集中) 

カモシカが夏も冬と同じ溜め糞場srに通って排便するのなら、糞虫の活動を観察したいところです。 
しかし私が定点観察に通っても、夏にはカモシカの新鮮な糞粒が見つからなくなりました。 
(スギ大木の右下で、茶色くなった古い糞粒だけがいつまでも残っていました。)
気温の高い夏は糞虫の活動が活発ですから、排便後すぐに糞虫が地中に埋めたのかもしれません。 
それともニホンカモシカが溜め糞場srに来なくなったのかな? 
いずれまたトレイルカメラを設置し直して、上記の疑問について必ずや決着を付けるつもりです。


休耕田の野焼き【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2023年4月中旬・午後14:40頃・晴れ 

広大な田園地帯の一角で野火が燃えていました。 
休耕田の中央部に農家の人が灯油を一直線に撒いてから、意図的に火を放ったようです。 
強風に煽られて枯れた草や藁が激しく燃え、着火点(線)から両側に延焼していきます。 
私が子供の頃には田んぼでよく野焼きが行なわれていた記憶があるのですが、久しぶりに見ました。 

激しく燃え盛る火炎の動きを240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@3:15〜)
まるで生き物のような炎に魅せられて、長々と撮影してしまいました。
火のスローモーションはずっと見てられますね。 
黒い燃えカスが熱い上昇気流に乗って舞い上がります。 
強風で火の粉が周囲に飛んで(山)火事の原因になりそうなら119に通報しないと…と心配で見守りましたが、広大な田園地帯の真ん中なので近くには人家もありません。 

枯草が素早く燃え尽きた焼け跡には黒々とした灰が残り、そのまま田んぼの肥灰こえはいとなります。 
野焼きしなければ、枯れ草を刈り取って土に漉き込む作業が面倒になるのでしょう。
風が強い日だったので、野放図に延焼するのではないかと心配でしたが、無事に自然鎮火して一安心。 
野焼きを見張るヒトが誰もおらず、消火器や水を用意してないのは、素人目にも危なっかしく写りました。 
そもそも野焼きは無風の日を選んでやるべきでしょう。

近年の異常気象で雨不足の夏に頻発する山火事は、人間社会に甚大な被害をもたらす悪(天災・人災)とされています。
しかし落雷などで自然発生する山火事は、自然の摂理でもあります。 
定期的に火入れをする原始的な焼畑農業も自然破壊どころか、(ある条件下では)むしろ持続可能だったりします。

山火事による撹乱の生態学はなかなか面白いテーマです。 
今回は地表の枯れ草だけがさっと燃えたので、地中に埋没した種子に高温は伝わっていないはずです。 
野焼きの後にどんな先駆パイオニア植物が生えてくるか植生の遷移を調べたかったのですが、この区画は後に水稲栽培の水田になっていました。 
草灰の肥灰だけでは充分ではないので、化学肥料も投入したはずです。
この区画は後にヨシ原が再生しました。
ガマセイタカアワダチソウも混じって生えました。
ヨシ、ガマなどは湿地に生える抽水植物です。
休耕田だと思ったのは私の勘違いで、田んぼの隣の区画にある小さな湿地帯(湿原)でした。
(水田の端にヨシ原が残されています。)

【参考】
新山恒雄『休耕田で群落遷移を追う』(『現代生態学とその周辺』p284〜291に収録)


藤井一至『大地の五億年:せめぎあう土と生き物たち』は近年稀に見るエキサイティングな名著(ベストセラー)です。
第3章に「酸性土壌と生きるには」と題した一節があり、野焼きや焼畑を科学的に解説していました。
特に勉強になった記述を抜書しておきます。

草木灰はカルシウムやカリウムなどのアルカリ成分を含み、土の酸性物質を中和する中和剤となる。焼畑農業は、ヒトの酸性土壌への適応術ともいえる。
 草木灰は即効性のある中和剤だが、雨に溶けて流されやすいため、有効期間は短い。

人口に対して広い森林さえあれば、焼き畑は持続的な伝統農業である。(中略)焼畑農業が時に環境破壊となる問題の本質は、人口増加である。その土地が持つ焼畑による人工扶養力を超えてしまうのだ。

 焼畑農業そのものは、酸性土壌へのヒトの適応戦略として、生態学的にも理にかなった仕組みである。しかし、どんな農業にもルールがあり、扶養できる人口には限界がある。


関連して、アンドルー・C・スコット『山火事と地球の進化』という本も出ているようです。


春の強風のせいで私が立っているだけでも体勢がぐらついてしまい、手持ちカメラによる撮影では手ブレが生じてしまいます。 
野火があっという間に燃え広がったので、三脚を使う余裕がありませんでした。 
動画編集時に手ブレ補正処理したらだいぶ改善しました。
次に機会があれば、野火が燃え広がる様子を引きの絵の定点で微速度撮影するのも面白そうです。


【追記】
2024年4月22日のNHK山形放送局「山形県のニュース」によると、
産業廃棄物処理法では、野外で廃棄物を燃やすことは原則、禁止されていますが、県は「農業などやむを得ない場合は、事前に消防署に届け出を行い、消火用の水が入ったバケツなどを準備してほしい」としています。

その上で、県は、強風や空気の乾燥時にたき火や野焼きをしないこと、枯れ草の近くなど火災が起こりやすい場所ではたき火をしないことを呼びかけています。

また、たき火などをするときは、その場を離れずに完全に火を消すことなど、火の取り扱いに十分注意するよう呼びかけています。




↑【おまけの動画】
"Why Only Earth Has Fire" by PBS Eons 
火が存在することが知られている惑星は宇宙の中で地球だけです。
生命(シアノバクテリア)の誕生によって初めて地球上で火が燃えるようになり、その後は山火事に適応した陸上生物(特に植物)の進化が始まった、という実に見事なストーリー建てのプレゼンです。


2023/11/13

ニホンアナグマ♀の巣穴に出入りするヘルパーと夜這いに通う♂【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年4月中旬〜下旬

二次林にあるニホンアナグマ♀(Meles anakuma)の営巣地に設置したトレイルカメラの映像記録です。
当時は何が起きているのかよく分からなかった雑多な動画をまとめただけです。
今になって見返すとアナグマの性別がなんとか見分けられるようになり、少し解釈できるようになりました。



シーン1:4/13・午後23:54・(@0:00〜) 
真夜中に1頭のアナグマ♂が奥の巣穴Lの周囲をうろついています。 
巣口Lを覗き込んだものの、中には入らず左に立ち去りました。 
しばらくすると、左から戻ってきました。 
手前の巣穴Rに近づいたところで1分間の録画終了。 


シーン2:4/14・午前0:38・(@1:00〜) 
日付が変わった深夜にアナグマ♀が奥からセットに戻って来ました。 
この♀個体(若い♂かも?)は左右の目の大きさに違いはなく、正常に見えます。 
この個体がヘルパー(前年に生まれた子供)で、左右の目の大きさが違う♀が母親だと考えています。 
どうやらこの営巣地(セット)には、少なくとも2頭の♀が住んでいるようです。 

手前の巣穴Rにしっかり入巣したものの、後退して(巣内の土を掻き出しながら?)再び外に出てきました。 
巣口Rを改修
巣口Rの近くで座り込み、体を曲げて痒いところを甘噛みしています。(毛繕い) 


シーン3:4/14・午前0:53・(@1:53〜) 
奥の巣穴Lの周囲をひたすら徘徊しているのは、ヘルパー♀かな? 


シーン4:4/20・午前3:38・(@2:31〜) 
夜這いに来た♂がセットの奥をうろついています。 
右の二次林に入ってしばらくすると、戻ってきました。 
手前の巣穴Rを覗き込むだけで入巣せず、すごすごと右へ引き返しました。 
このときは巣内の♀が♂を撃退しませんでした。 


シーン5:4/20・午前3:40・(@3:20〜) 
♂が巣口LR付近の地面の匂いを嗅ぎ回り、ひたすらウロウロしています。 


シーン6:4/20・午前4:01・(@3:59〜) 
画面中央の林縁で♂が毛繕いしているようですが、手前の枝葉の陰でよく見えません。 
右奥の二次林の林縁をぶらついています。 


シーン7:4/20・午前4:04・(@4:27〜) 
左奥に立ち去りました。 


シーン8:4/20・午前4:05・(@4:38〜) 
画面中央奥の林縁で♂が何か(採食?)しています。 
右の林縁からセットを見守ります。 
夜明け前の記録はここまでになります。 


シーン9:4/20・午後23:08・(@5:00〜) 
深夜に現れた♂が左奥のエリアを徘徊しています。 
立ち止まって身震い。 
奥の巣穴Lに侵入を試みたものの、諦めて左に立ち去りました。 


シーン10:4/21・午前2:49・(@5:42〜) 
日付が変わった未明に奥の獣道から♂が♀のセットに現れました。 
今回は巣口LRには近づかず、未練がましくセットに周囲をうろついています。 


シーン11:4/21・午前2:51・(@6:38〜) 
いつの間にか♂が回り込んで手前の巣穴Rに近づいて来ます。 
入巣Rしないで右の二次林に立ち去りました。 
その後、右の死角から♂が求愛する鳴き声が聞こえます。(@6:54〜) 
いわゆる「じぇじぇじぇビーム」です。 
♂が独特の求愛声を発しながら、右下から戻ってきて、♀の巣穴Rに近づきます。 
残念ながら、ここで録画が打ち切られていました。 


金子弥生『里山の暮らすアナグマたち:フィールドワーカーと野生動物』には「音声によるコミュニケーション」と題した章があり、少し参考になりました。
アナグマが音声によるコミュニケーションについても豊富なバリエーションを持っていることはあまり知られていない。 (p66より引用)
 ニホンアナグマでも、私の知る限り、ヨーロッパアナグマで報告されている唸り声、威嚇音、遠吠えは存在する。さらに交尾のときに♂が巣穴の前で♀を呼ぶ「ジジジジ…ジジジジ…」というささやき声もある。(p67〜68より引用)

アナグマの配偶行動について最も参考になったのは、福田幸広『アナグマはクマではありません』です。
 日本各地でアナグマの恋を観察しましたが、恋の季節はすんでいる地域によって少し違うようです。2月下旬ぐらいから始まり、4月中旬頃から下旬までに終わるようです。
 ♂は♀よりも広い範囲を行動圏としていて、1頭の♂の行動圏の中には複数の♀が生活しています。♂は♀よりひと足早く冬眠から目覚めて、自分の行動圏内にある巣穴を見て回り、♀の冬眠場所を特定するようです。♀は冬眠から覚めて少しすると巣穴で出産します。驚くことに出産後すぐに発情して交尾が始まります。(p50より引用)


※ 動画編集時に自動色調補正を施して明るく加工しています。 
今回は右の茂みが邪魔で、白飛びしています。 
今のところはトレイルカメラの設置アングルを試行錯誤しているところです。
これから初夏にかけて巣穴の周囲の灌木に葉が生い茂ると、ますます観察しにくくなることが予想されるので、それまでになんとかしないといけません。


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