2023/11/14

休耕田の野焼き【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2023年4月中旬・午後14:40頃・晴れ 

広大な田園地帯の一角で野火が燃えていました。 
休耕田の中央部に農家の人が灯油を一直線に撒いてから、意図的に火を放ったようです。 
強風に煽られて枯れた草や藁が激しく燃え、着火点(線)から両側に延焼していきます。 
私が子供の頃には田んぼでよく野焼きが行なわれていた記憶があるのですが、久しぶりに見ました。 

激しく燃え盛る火炎の動きを240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@3:15〜)
まるで生き物のような炎に魅せられて、長々と撮影してしまいました。
火のスローモーションはずっと見てられますね。 
黒い燃えカスが熱い上昇気流に乗って舞い上がります。 
強風で火の粉が周囲に飛んで(山)火事の原因になりそうなら119に通報しないと…と心配で見守りましたが、広大な田園地帯の真ん中なので近くには人家もありません。 

枯草が素早く燃え尽きた焼け跡には黒々とした灰が残り、そのまま田んぼの肥灰こえはいとなります。 
野焼きしなければ、枯れ草を刈り取って土に漉き込む作業が面倒になるのでしょう。
風が強い日だったので、野放図に延焼するのではないかと心配でしたが、無事に自然鎮火して一安心。 
野焼きを見張るヒトが誰もおらず、消火器や水を用意してないのは、素人目にも危なっかしく写りました。 
そもそも野焼きは無風の日を選んでやるべきでしょう。

近年の異常気象で雨不足の夏に頻発する山火事は、人間社会に甚大な被害をもたらす悪(天災・人災)とされています。
しかし落雷などで自然発生する山火事は、自然の摂理でもあります。 
定期的に火入れをする原始的な焼畑農業も自然破壊どころか、(ある条件下では)むしろ持続可能だったりします。

山火事による撹乱の生態学はなかなか面白いテーマです。 
今回は地表の枯れ草だけがさっと燃えたので、地中に埋没した種子に高温は伝わっていないはずです。 
野焼きの後にどんな先駆パイオニア植物が生えてくるか植生の遷移を調べたかったのですが、この区画は後に水稲栽培の水田になっていました。 
草灰の肥灰だけでは充分ではないので、化学肥料も投入したはずです。
この区画は後にヨシ原が再生しました。
ガマセイタカアワダチソウも混じって生えました。
ヨシ、ガマなどは湿地に生える抽水植物です。
休耕田だと思ったのは私の勘違いで、田んぼの隣の区画にある小さな湿地帯(湿原)でした。
(水田の端にヨシ原が残されています。)

【参考】
新山恒雄『休耕田で群落遷移を追う』(『現代生態学とその周辺』p284〜291に収録)


藤井一至『大地の五億年:せめぎあう土と生き物たち』は近年稀に見るエキサイティングな名著(ベストセラー)です。
第3章に「酸性土壌と生きるには」と題した一節があり、野焼きや焼畑を科学的に解説していました。
特に勉強になった記述を抜書しておきます。

草木灰はカルシウムやカリウムなどのアルカリ成分を含み、土の酸性物質を中和する中和剤となる。焼畑農業は、ヒトの酸性土壌への適応術ともいえる。
 草木灰は即効性のある中和剤だが、雨に溶けて流されやすいため、有効期間は短い。

人口に対して広い森林さえあれば、焼き畑は持続的な伝統農業である。(中略)焼畑農業が時に環境破壊となる問題の本質は、人口増加である。その土地が持つ焼畑による人工扶養力を超えてしまうのだ。

 焼畑農業そのものは、酸性土壌へのヒトの適応戦略として、生態学的にも理にかなった仕組みである。しかし、どんな農業にもルールがあり、扶養できる人口には限界がある。


関連して、アンドルー・C・スコット『山火事と地球の進化』という本も出ているようです。


春の強風のせいで私が立っているだけでも体勢がぐらついてしまい、手持ちカメラによる撮影では手ブレが生じてしまいます。 
野火があっという間に燃え広がったので、三脚を使う余裕がありませんでした。 
動画編集時に手ブレ補正処理したらだいぶ改善しました。
次に機会があれば、野火が燃え広がる様子を引きの絵の定点で微速度撮影するのも面白そうです。


【追記】
2024年4月22日のNHK山形放送局「山形県のニュース」によると、
産業廃棄物処理法では、野外で廃棄物を燃やすことは原則、禁止されていますが、県は「農業などやむを得ない場合は、事前に消防署に届け出を行い、消火用の水が入ったバケツなどを準備してほしい」としています。

その上で、県は、強風や空気の乾燥時にたき火や野焼きをしないこと、枯れ草の近くなど火災が起こりやすい場所ではたき火をしないことを呼びかけています。

また、たき火などをするときは、その場を離れずに完全に火を消すことなど、火の取り扱いに十分注意するよう呼びかけています。




↑【おまけの動画】
"Why Only Earth Has Fire" by PBS Eons 
火が存在することが知られている惑星は宇宙の中で地球だけです。
生命(シアノバクテリア)の誕生によって初めて地球上で火が燃えるようになり、その後は山火事に適応した陸上生物(特に植物)の進化が始まった、という実に見事なストーリー建てのプレゼンです。


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