2023/03/07

タヌキの溜め糞に集まり産卵するツヤホソバエ科の一種【名前を教えて】

 

2022年9月中旬・午後13:40頃・晴れ 

ホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が里山の稜線(尾根道)に残した溜め糞場cに様々なハエ類が群がっています。
去年からの懸案だった謎の微小昆虫が何匹も集まっていたので、カメラにマクロレンズをいそいそと装着して接写してみました。 
三脚なしの手持ちカメラだと無理な体勢を強いられ、長時間の接写は疲れて無理でした。 
一緒に来ていたハネフリバエ科Euxesta属のハエとは明らかに別種と私でも分かります。 

翅は透明ですけど、全身が美しい金属光沢の構造色で覆われています。 
特に腹部は見る角度によって赤紫や鈍い金色に輝き、とても綺麗です。 

透明な翅の先端付近(前縁)に黒いシンプルな斑紋(縁紋?)あります。 
その翅紋を誇示するように広げた翅を振り立てることもありますが、Euxestaほど熱心ではありません。 
歩行中も白い平均棍を上下にピコピコと動かしています。 

白くて細長い卵を腹端から出し入れしている個体がいました。 
立ち止まると後脚を擦り合わせて身繕いを始めました。 
せっかく♀が産卵しそうだったのに、なぜか私は撮影を中断してしまいました。 

糞塊の上をとにかく忙しなく歩き回るので、口吻を伸ばして獣糞を吸汁するシーンが上手く接写できませんでした。 
同種のハエ同士が糞上で頻繁にニアミスするものの、もう少しズームアウトしないと求愛や闘争などの相互作用が撮れません。 

さて、このハエの名前は何でしょう? 
ときどきお世話になっている「みんなで作る双翅目図鑑サイト」の画像一括閲覧ページを眺めてみると、似た写真に「ツヤホソバエ科Sepsis sp?」とキャプションが付いてました。 
ツヤホソバエ科Sepsis」で改めて検索すると、フッカーSさんのブログ記事がヒットしました。 
翅の外縁あたりに1対の小黒点がある、スリムな体型のハエ。頭部は丸い。 翅に小黒点があるツヤホソバエといえば、Sepsis属のヒトテンツヤホソバエ(Sepsis monostigma)がよく知られているが、Sepsis属で翅に黒紋があるものは10種類くらいおり、安易にヒトテンツヤホソバエとは判断出来ない。 (ツヤホソバエ科の一種 @東京23区内の虫 2 より引用)
今回私が撮ったハエも、とりあえずSepsis sp.としておきます。 
もし間違っていたら、ご指摘願います。
昨年は通常レンズでしか撮れず、ハエなのかハチなのかさえ見分けられませんでした。
微小な寄生蜂なのかと思い込んでいたぐらいです。
この謎の虫をなんとか接写したいがために、今季は頑張ってタヌキの溜め糞をひたすら見て回っていたと言っても過言ではありません。
手ブレの酷い動画ですけど、これで一歩前進です。




【追記】
平凡社『日本動物大百科 (9)昆虫II』を紐解くと、ツヤホソバエ類に関する詳細な解説が載っていました。
 ツヤホソバエ科は小型で体の細いハエで、アリに似ていることから英語でant fly、地上では翅を頻繁に動かすことからドイツ語でSchwing Fliegenと呼ばれている。
 日本全国に分布し、11属35種が知られる。(中略)
翅の先に黒い点状の斑紋をもつものが多い。
 成虫は(中略)あらゆる環境に生息し、動物、家畜の糞、堆肥、腐肉など、広く腐敗物によく集まり、(中略)花を訪れるのは吸蜜するためである。(中略)幼虫はほとんどが糞食性または腐食性で、成虫が集まる糞や腐敗物に発生するが、なかには泥に発生するものもいる。
 卵は白く、長楕円形で、大きさは0.7〜1.5mm、ほとんどが卵の長さの何倍もある呼吸管をもっている。卵は少なくとも2日以内に1齢幼虫となる。(中略)幼虫は、糞や腐敗物を食べて成長し、発生源の内部または下の土中で蛹になる。
 ツヤホソバエ類の成虫の行動でもっとも特徴的なものは、求愛行動と繁殖戦略である。とくにSepsis属の多くの種の交尾行動は新鮮な牛糞上で起きる。♀を探索する♂は、牛糞周辺で活発に活動し、翅を頻繁に動かしたり、腹部を上下に動かすなどして、牛糞に飛来した♀をつかまえる。そして♀の体の上に乗り、そのまま牛糞上を移動して歩き、♀が産卵しているあいだ、交尾器の接触を試み、ほかの♂に侵略されそうになると翅を頻繁に動かして反応する。♀が成熟卵を産み付けたのち、ペアは牛糞から離れ、一般には交尾は成立するが、♀に拒否されることもある。交尾は約20分ほど続く。このように、最初の産卵の後の交尾によって受精が起きる。最初の産卵における受精については正確にはわかっていない。
次に機会があれば、Sepsisの繁殖行動をじっくり観察してみたいものです。

産卵シーン?

2023/03/06

タヌキの溜め糞場で早朝に虫を捕食するトラツグミ?【野鳥:トレイルカメラ:暗視映像】

 

2022年9月中旬・午前5:18・気温16℃ (日の出時刻は午前5:14) 

夜明け直後のスギ林にはまだ朝日が射さず、かなり暗くてトレイルカメラは赤外線の暗視モードのまま起動しました。 
里山のスギ林道上にホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が残した溜め糞の上に冒頭から鳥が乗っていました。 
赤丸の中に注目してください。 
林床に佇み、辺りをキョロキョロ見回しています。 
見事な迷彩模様で、動かないと絶対に見つけられません。 
熱源の動きを感知するトレイルカメラは、その点でヒトの視覚より優れています。(擬態や保護色に騙されない。)
この地味な鳥はトラツグミZoothera aurea)ですかね? 
もし間違っていたら、ご指摘願います。 

しばらくすると、急に左へ歩き始めました。 
ホッピングではなくウォーキングで駆け寄ると、スギの落ち葉を嘴で2回啄んで何か虫を捕食したようです。(@0:30〜) 
気温の低い(1日の最低気温になる)早朝は虫の動きが鈍く、捕食しやすいはずです。
その後のトラツグミは動きに乏しく、飛び去る前に尻切れトンボで録画終了してしまいました。 
トラツグミも朝目覚めたばかりで未だ少し寝ぼけているのでしょうか? 

トラツグミの食性について調べると、
食性は雑食。雑木林などの地面で、積もる落ち葉などをかき分けながら歩き、土中のミミズや昆虫類などを捕食することが多い。(wikipediaより引用)
 比較的暗い林の林床で大好物のミミズや虫を捕っている。この時、屈伸運動をするように上下に尾を振る仕草をする。(『やまがた野鳥図鑑』p44より引用)

今回の動画を見直しても、尾羽根を動かしていませんでした。 



つづく→晩秋の朝、スギ林道に出没したトラツグミ【野鳥:トレイルカメラ】

獲物を巣穴に運び込むモンスズメバチ♀

 



2022年6月中旬・午後17:45頃・晴れ(日の入り時刻は午後19:05) 

モンスズメバチVespa crabro)の巣穴を見つけてから2日後の夕方に、定点観察に来ました。 
採寸代わりに巣口の横に1円玉(直径20mm)を並べて置きました。

カメラの起動が間に合いそうになかったので、焦った私は営巣地に飛来した蜂を足で軽く追い払ってから、再び戻ってくるのを待ちました。 
巣穴を見下ろすように撮ると、帰巣した蜂が何を持ち帰ったのか見えにくいのが問題です。 
横から狙うべきでしたね。 
帰巣シーンを1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると(@0:42〜)、初回のワーカー♀は黄緑色の肉団子を巣穴に搬入していました。 
モンスズメバチと言えばセミを(専門に?)狩るというのが図鑑でも定説になっています。 
しかし私はモンスズメバチが獲物を狩る様子を未だ見たことがありません。
撮影時は初夏で、セミの鳴き声を周囲で未だ聞いていません。 
したがって、今回餌食になったのはセミ以外のおそらくイモムシ類(鱗翅目の幼虫)と思われます。 
狩蜂の中でもスズメバチとアシナガバチは狩った獲物をその場で解体して肉団子を巣に持ち帰ります。 
帰巣した蜂から肉団子をたとえ取り上げたとしても、獲物の原形を留めていませんから、素人が正確に同定するのは難しいでしょう。 

6分後、2匹目のワーカー♀が帰巣しました。 
飛来した蜂はかなり迷子になってからようやく巣穴に入りました。 
営巣地に私がカメラを持って突っ立っているせいか、または巣口の横にピカピカ光る見慣れない1円玉が置かれているせいでしょう。
ブタナの群落で少し離れた別の茎の周りを飛び回ったり、巣口の左から右から何度もアプローチをやり直してから、ようやく無事に入巣しました。 
(もっとズームアウトしないと、飛来した蜂が迷っている様子は撮れません。)

関連記事(2日前の撮影)▶ 巣穴に帰る途中で少し迷うモンスズメバチ♀

今回は帰巣した蜂が抱えていた空輸便の荷物をしっかり見極められませんでした。 
獲物の肉団子ではなく、巣材のパルプかもしれません。 
DNAバーコーディングの手法が普及すれば、肉団子から獲物の正体を突き止めることができるはずです。 
巣材の樹種も同定できそうです。 


【後日談】 
この河川敷は定期的に草刈りしているので、作業員にモンスズメバチの巣穴が見つかって駆除されてしまうのは時間の問題だと思っていました。 
案の定、このコロニーの活動を観察できたのは、この日が最後になりました。 
撮影したいテーマが未だ色々とあったのに、残念無念。 
(夜行性のシーンおよび雨天時の様子を観察できなかったのが心残りです。) 
少し無理をしてでも、撮影できるときに集中的に観察・撮影しておくべきでした。 
難しいのは、私が長時間立ち止まって地面の一点をじっと見つめていると、通りすがりの人に怪しまれて(興味を持たれて)蜂の巣の存在がばれてしまうことです。 
最近は蜂恐怖症のヒトが増えてますから、ヒステリックに反応して駆除業者に通報されてしまったら最期です。 
この日私は長居せずに、あえて短時間の撮影をしただけで立ち去りました。 
人通りの無い時間帯を選んで定点観察に来ないといけません。
目立たない無人カメラを巣口の横に設置したいところですが、トレイルカメラは変温動物の活動には反応してくれません。 

営巣地の周辺の草がきれいに刈られ、巣穴に出入りするモンスズメバチが完全に居なくなったものの、地面を掘り返して地中の蜂の巣を完全に破壊した形跡はありませんでした。 
したがって、駆除業者は巣口から中に殺虫剤を噴霧しただけのようです。 
しかし、駆除されたと思ったのは私の被害妄想かもしれません。 
モンスズメバチはコロニーが繁栄して営巣地が狭くなると新天地に巣を引っ越すことが知られています。 
もっと安全な(人目につかない)場所へ自発的に引っ越しただけなら良いのですが、モンスズメバチの世界も住宅難が深刻です。 
治水事業のために河畔林が次々に伐採されてしまい、樹洞のある大木(老木)はほとんど残っていないからです。 

危険なスズメバチを保護すべきだという主張はなかなか理解してもらえません。
決して可哀想だからという情緒論ではありません。
スズメバチは日本の生態系で上位に位置する捕食性昆虫と理解することがまず必要です。 
営巣後期にスズメバチの巣を丸一日観察すると、莫大な量の獲物を巣に搬入することに驚かされます。 
したがって、「怖いから」という理由でスズメバチの巣を見つけ次第駆除して根絶やしにしてしまうと、生態系のバランスが乱れて下位の昆虫が不自然に増えてしまうことになります。 
害虫駆除業者や殺虫剤のメーカーにとっては生態系が乱れて害虫が増えれば増えるほど、経済的に利益が増えます(儲かる)から万々歳なのでしょう。 
「害虫が大発生するのは全て地球温暖化のせいだ」ということにしておけば生態系破壊の責任を逃れられます。
近視眼的な市場原理に任せておくと、誰も歯止めをかけようとしません。 
都市化の進行で自然とのつながりが希薄になった結果、世界中で虫嫌いの潔癖症は年々エスカレートするばかりです。
蜂の巣駆除は必要悪というのが私の認識で、なるべく最小限に留めて欲しいのです。 
スズメバチの巣を無闇矢鱈に駆除して絶滅させるのを止めて欲しい、というのが私のささやかな主張です。 
蜂の巣の存在を告知する注意書きをして、立入禁止のロープを張り巡らせたら、後は1シーズン放っておけば良い場合もあるのに、駆除業者の尻馬に乗ってスズメバチの危険性を(良かれと思って)過剰に煽るマスコミも問題です。 
正しい知識があれば、スズメバチを無闇に恐れる必要はありません。
営巣地を迂回して通れば、スズメバチに攻撃されることはありません。 
基本的にスズメバチは忙しくて、ヒトの存在など眼中に無いのです。 
 「朝顔に釣瓶取られてもらい水」のような心の余裕(慈悲の心)をもつ日本人が少しでも増えてくれることを祈ります。 
うっかりスズメバチと出会ってしまったときの正しい対処法を子供に教えるのも大切です。

都会も含めて日本の自然界にスズメバチが何種類も住んでいるのは当然で、これからも居てもらわないと困ります。 
我々ヒトはなんとか折り合いを付けて(正しい知識を身につけて)スズメバチと共存するしかありません。 
言い出しっぺの私がまず蜂の巣の存在を告知する注意書きを設置すべきかもしれません。
しかし、どうせ駆除業者に通報されるだけ(藪蛇)だろうという諦念があり、撮影観察を優先してしまいます…。
もしも不幸な刺傷事故が起きた場合、蜂の巣の危険性を予見していたのに周知しなかったのは無責任だと怒られるのでしょう。
一体どうすれば良いのか、スズメバチ愛好者(絶滅危惧種)の悩みは尽きません。


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