2021/05/27

雪山に隠れ走り去る冬毛のニホンノウサギ(フィールドサイン:足跡、食痕、糞)

 

2021年3月上旬・午後12:55頃・晴れ 

雪の積もった里山をスノーシュー(西洋かんじき)を履いて歩き回ると、近くに隠れていたニホンノウサギ(亜種トウホクノウサギ;Lepus brachyurus angustidens)が急に走って逃げ出すことがときどきあります。 
ノウサギの逃走シーンを動画で記録しようと慌ててカメラを構えて起動してもいつも間に合わず、悔しい思いをしてきました。 
GoProのようなアクションカメラを身体に装着して、雪中行軍中の主観映像を常に撮り続けるしかないかも?、と思っていました。
(しかしアクションカメラでは臨機応変に被写体へズームできません。)
新たに撮影機材を買えるようになるまで、手持ちのカメラでなんとか頑張ってみます。 
カメラのバッテリーを節約するために、普段は3〜5分間何も操作しなければスリープまたは電源をオフにするよう設定しています。
今回はその設定を切ってカメラを常時起動させておきました。 
野生動物と突然に遭遇しても、レンズキャップを外して録画開始ボタンを押すだけで、すぐに動画が撮れるはずです。 
作戦通りに上手く行ったので、この動画は我ながら嬉しい作品になりました。 

私が雪で覆われた林道を登って行くと、前方をノウサギが脱兎の如く走り去りました。 
山林の斜面を駆け上がって逃げる途中でニホンノウサギはなぜか立ち止まりました。 
木の根元の雪が溶けて穴が開いている横の雪面に座ってじっとしています。 
冬毛の保護色によっぽど自信があるようです。 
横目でこちらを油断なく見ています。 
毛皮は完全な純白ではなく、長い耳の先端だけがワンポイントで黒いのがおしゃれですね。 
耳が思ったよりも長くないのは、寒冷地への適応なのでしょうか? 

痺れを切らした私が動画を撮りながら歩いて近寄ろうとした途端に、ノウサギは雪山を駆け抜けて逃げました。 
華麗な逃走シーンを1/5倍速のスローモーションでリプレイ。


【追記】
高橋喜平『ノウサギの生態』によれば、
・古来、ウサギが走っている絵を見ると、長い耳を風になびかせるようにねせてえがかれているが、事実は耳をピンとたてて走るのが基本の姿なのである。 (p51より引用)
・ノウサギは走るとき耳をたてて、ラッパのように前方にむけて走るのが基本の姿である(中略)。必要に応じて、そのラッパを四方にまわしながら走っている。(中略)ただし、木立やブッシュのなかでは耳をねせることが多く、これは明らかに耳を保護するためのようであった。このほかに、斜面を馳けおりるときやはり耳をねせることが多い。 (p66より引用)

この鋭い指摘を読んで、まさに目から鱗が落ちました。

今回のスロー映像を見直してみると、確かに逃走時のニホンノウサギは耳を立てたままで、大きな空気抵抗に逆らって走っていました。

 


動画の後半は(@2:00〜)、同じ日の午前中に見かけたニホンノウサギのフィールドサインです。 
山麓のリンゴ園の雪面に丸くてコロコロしたウサギの糞が多数散乱していました。 
溜め糞のように1か所に固まっているのではなくバラバラなのは、動き回りながら排便したのか、それとも脱糞後に風が吹いて雪面を転がったのですかね? 
クラストした雪面にうっすらと新雪が積もっています。 
辺りを探すと、糞の近くの雪面にウサギの足跡も見つかりました。 
リンゴの木の下に短い小枝が何本か雪面に落ちていて、その切り口が斜めにスパッと切られていました。 
おそらくノウサギが鋭い門歯でかじり取った食痕だと思います。 
つまり、短い落枝はノウサギの食べ残しでした。
それから小便跡かと思ってズームインしたのですが、枝の雪が溶けて滴り落ちた水に木肌の色が付いていただけのようです。 
昔観察したノウサギの小便跡は、血のような濃いオレンジ色でした。
▼関連記事(9年前の撮影) 
雪面に残るニホンノウサギのフィールドサイン(足跡、糞、尿)

 

2021/05/26

川岸から入水、脱糞後に飛び去るダイサギ(冬の野鳥)

 

2021年3月上旬・午後15:10頃・晴れ 

川岸の雪が溶けて枯れ草が露出した部分にダイサギArdea alba)が単独で佇んでいました。 
ちょうど用水路が川の本流に合流する地点で2本足で立ち、川面を見つめています。 
ときどき長い首を伸ばして遠くを見張ったりしています。 
此岸にはネコヤナギの蕾が見えますね。 
風でダイサギ頭部の冠羽が逆立ったり胸元の羽毛がなびいたりする様子から、風は川の下流(画面左)から上流(画面右)に向かって吹いていることが分かります。 
軽く欠伸をすると、ダイサギはおもむろに歩いて川に入水しました。 
そのまま浅瀬でしばらく下流を向いたまま佇んでいます。 
川の中で足を少し屈めながら白い液状便を大量に排泄しました。 
体重を軽くした直後に風上の下流に向かって飛び去りました。 
横の堤防路を歩行者が通りかかったので、ダイサギは警戒して飛び去ったのでしょう。

1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると、強風下での離陸シーンがちょっと面白かったです。
言葉にするのは難しいのですが、ダイサギは岸辺から力強く羽ばたきながらまず横っ飛びで川の中央部まで飛ぶと、強い逆風に流されそうになりながらも体勢を整え、川の上を低空で下流へ向かって飛び去りました。 
風上に向かって飛び出すことで翼の揚力を稼いでいるのです。

 

雪山を逃げる疥癬症のホンドギツネ

 

2021年3月上旬・午後12:15および14:45・晴れ 

スノーシューを履いた私が里山を散策していると、スギの木陰に潜んでいた野生動物が私の接近に気づいて逃げ出しました。 
立ち止まってこちらを振り返っている姿にズームインしてみると、ホンドギツネVulpes vulpes japonica)でした。 
やはりこの雪山にはキツネが生息していたのです。
▼関連記事(6週間前の撮影) 
ホンドギツネが雪山に残したフィールドサイン(足跡いろいろ・糞・小便跡など)
手前にある灌木のせいで肝心のキツネにピントが合っていませんが(前ピン)、この個体は全身の毛並みが悪く、特に尻尾はほぼ無毛で針金のようです。 
どうやら疥癬(ヒゼンダニの寄生による皮膚感染症)に罹患しているようです。
あまりの痒さに自分で患部を掻き毟って毛が抜けてしまうのだそうです。 

キツネは身震いしてから雪道を走り去りました。 
雪面に残る新しい足跡を辿って追跡してみましょう。 
「アニマルトラッキング」の本に書いてあったように、キツネの足跡は確かに一直線状でした。
(深雪では2本線で足跡が残るのか、というのが目下、私の知りたい疑問です。) 

少し進むと、キツネが立ち止まって排尿した跡が雪面に残っていました。 
ザラメ雪がキツネの黄色い尿で溶けています。 
縄張り内を匂い付けでマーキングしているのでしょう。 
小便跡に鼻を近づけて嗅いだ訳ではありませんが、通り過ぎても私は特に何も匂い(キツネ臭)を感じませんでした。 

疥癬キツネの足跡を追って、深い谷を右に見下ろしながら雪山の斜面を慎重にトラバースして行きます。 
しばらくすると、キツネの足跡を見失ってしまいました。 
春が近づき最近は新雪が積もりません。 
晩冬の雪質だと、どうしてもアニマルトラッキングが難しくなります。 

雪山を散策した私が2.5時間後にキツネ遭遇現場に逆方向から戻って来ると、同じスギの木からまたもやキツネが飛び出しました。 
尻尾がガリガリで毛並みが悪いので、往路で見た同一個体で間違いないでしょう。 
疥癬ホンドギツネは今度は山側へ走り去りました。 
疲れていた私は、再びキツネの足跡をトラッキングし直す余力はありませんでした。 

キツネが執着していた杉の木に近づいてみると、その根元付近だけ雪が溶けて地面が露出していました。 
近くにキツネの巣穴があるのか?と思って周囲を探し回ってみたものの、見つかりませんでした。 
ホンドギツネの繁殖期は冬(12月から2月)なのだそうです。 
この個体が独身かどうか分かりませんが、つがいのパートナーや生まれた幼獣も感染させてしまう厄介な病気です。

実は、現場から少し下った山麓の集落で疥癬症に罹患した野生タヌキを目撃したことがあります。
▼関連記事(5年前の撮影) 
雪国で疥癬タヌキの散歩を追跡すると…【前編】 
雪国で疥癬タヌキの散歩を追跡すると…【後編】
こんなド田舎で飼い犬をわざわざ運動させに来る施設が近くにあるので(冬季閉鎖)、飼い犬にも野生のイヌ科動物(キツネ、タヌキ)にも互いにヒゼンダニが感染するリスクがありそうです。 

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