2012年1月中旬
スノーシューで雪山を歩くと雪面に様々な動物の足跡やフィールドサインを見ることができます。
なかでも一番多く目にするのがニホンノウサギ(Lepus brachyurus)の足跡。
大きな後ろ足の跡が必ず前足より前方に揃って付くので、進行方向が読み取れます。
この足跡は雑木林の奥へ向かっていました。
ときどき丸い糞も残されています。
これを見るといつも日の丸弁当を連想してしまいます。
このように一粒だけ残されているのは走りながら排泄した糞です。
立ち止まって一ヶ所にまとめて何個もポロポロと排便することもあります。
雪山を脱兎のごとく走るニホンノウサギの実物はまだ一度しか目撃したことがありません(一瞬だけ)。
保護色の冬毛でじっと隠れているときはとても見つけられず、走り出すとカメラを構える暇もなく林に姿を消しました。
夏は一度も見たことがありません。
姿は見れなくても雪面を縦横無尽に駆け回る足跡を見ると、身近な里山でこれほどニホンノウサギの生息数が多いのかと驚かされます。
動画にはありませんが、同じ日に別の場所でノウサギの足跡を辿ると唐突に濃いオレンジ色に雪が溶けている所がありました。
どうやら立ち止まって小便をした跡のようです。
体調の悪い個体が排泄した血尿なのかと少しギョッとしましたが、ノウサギの尿は普段からこのような色なのでしょうか。
写真で記録する前に「何これ血痕!?」とオレンジに染まった雪を一掘りして現場を乱してしまいました…。
上:足跡、左下:糞、右下:小便跡 |
どうも私のカメラはお任せ設定で雪景色を撮ると白飛びしてしまい、雪面の微妙な陰影や凹凸、肝心の足跡があまり良く映ってくれません。
前に使っていたカメラには専用の雪景色モードがあって重宝していたのですが…。
偏光フィルターを買ってレンズに装着しないといけないのかと悩み、snowmeltさんのブログ「北のフィールドノート」でお尋ねしたところ、マニュアル設定で露出を補正する方法を教えてもらいました。
【追記】
『ウサギがはねてきた道』p240によると、
野ウサギを雪の上で追跡していると、橙色の分泌物が雪ににじんでいるのが、しばしば見つかる(ユキウサギ、ノウサギ、ヤブノウサギ)。日本の猟師は、これを「赤ション」(赤い小便)と呼んでいる。冬季にしかみられないことから、♀が発情したしるしとされる。 赤ションは、鼠蹊部の腺から分泌される物質で、かびくさいにおいがある。この腺は、ヤブノウサギでは雌雄にあるが、♀の方が大きく、繁殖期にさらに発達する。広大な行動圏を単独で動きまわる♀は、においと色の信号によって、異性を引き寄せ、近づく交尾日を赤ションで伝えている可能性は高い。
つまり、赤ションは♀が♂を引きつけるマーキングなのだそうだ。(『フィールドワーカーのための動物おもしろ基礎知識』p195より)
『ニホンザルの生態:豪雪の白山に野生を問う』p80によると、
猿の泊まり場で翌日、雪が赤みを帯びた橙色に染まっている直径20〜30cmの円が、たいていの場合、5つ前後かたまってあるのは、大人の(ニホンザル)♀の月経血の混ざった尿ではないかと思われる。ウサギの尿はこれと同じような赤っぽい色をしているが、赤みの帯び方がサルよりも弱く、慣れれば見分けるのは簡単である。『Winter Field Guide SNOW FOREST 冬の森へ』p68によれば、
早春、繁殖期になると、♀はオレンジ色の分泌物を雪上に残します。このにおいは、数百メートル先の♂をも興奮させるといいます。
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