2022年10月下旬・午前11:20頃・晴れ
私が里山の山道を登っていると、横の笹薮でオオスズメバチ(Vespa mandarinia japonica)がブンブン飛び回っていました。
林道上の砂利に着陸した個体にズームインすると、触角の長い雄蜂♂でした。
激しく腹式呼吸をしながら日光浴しています。
右に向きを変えてから飛び立ちました。
離陸の瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@0:38〜0:50)
秋晴れで日差しが強いので、飛び去る影も美しく写っていました。
多数のオオスズメバチが忙しなく飛び回るので、どこに注目してズームインすべきか目移りしてしまいます。
どうやら林道脇にぎっしり生い茂った笹薮の下にオオスズメバチの地中巣がありそうな気がします。
何者か(ツキノワグマやハチクマなど)に巣を襲われた後で、コロニー全体が興奮しているのでしょうか?
だとしたら危険なので、一刻も早くこの場を離れるべきです。
ちなみに、この山道は最近きれいに整備され、道の両脇から伸びていた邪魔な灌木が伐採されていました。
群飛の様子を1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると(@1:20〜)、営巣地に出入りする外役ワーカー♀の動きには見えませんでした。
どうやら雄蜂♂が笹藪の方を向いて、交尾相手の新女王が出てくるのを待機しているようです。
笹藪の横の林道に着陸しかけた♂が上空を飛ぶ別個体の動きに反応して急発進し、慌てて追尾していました。
スズメバチの交尾は早い者勝ちですから、焦った♂同士の誤認求愛と追いかけっこによって群飛が発生しているのはないかと思います。
ただし、飛び回っている個体が全て♂かどうか映像では見極められませんでした。
オオスズメバチ♂の群飛(探雌飛翔)をハイスピード動画でも記録したかったのですが、1匹がこちらに向かって飛んできたので、恐れをなして慌ててその場を離脱しました。
本当に雄蜂♂だけなら刺される心配は無用ですが、オオスズメバチ♀には痛い目にあっているので用心するに越したことはありません。
もう少し粘ったら、オオスズメバチの交尾が観察できたかもしれません。
営巣地と思しき笹藪からもう少し離れて安全な距離から撮影したくても、林道の幅が狭いので無理でした。
※ 蜂の重低音の羽音が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。
オオスズメバチの配偶行動の研究で学位を取った小野正人『スズメバチの科学』によると、
地中に営巣し地表に開口した巣門周辺で認められる本種(オオスズメバチ:しぐま註)の配偶行動は(1)巣門から外へ発散されている揮発性の集合フェロモンによる野外雄蜂♂の多数誘引と、(2)その巣から離巣しカースト特異的な性フェロモンを分泌している新女王蜂と被誘引雄蜂♂との交尾という2段階で成り立っている (p111より引用)
今回私が観察したのは、まさに(1) の段階ではないかと思います。
私の鼻では現場でフェロモンの匂いを全く嗅ぎ取れませんでした(無臭)。
・特に 注目されるのは、集合フェロモンが働き蜂からも分泌されている点である。(同書p111より引用)
・集合フェロモンにより巣の周りに雄蜂♂を集めて堂々と交尾を行う戦略は同所性の他5種には認められない。
・実際に雄蜂♂の交尾行動を解発する機能をもつ新女王蜂に特異的な性フェロモンに関しては同属内で種間交差活性があることも明らかにされている。すなわち、雄蜂♂と新女王蜂の異種間の掛け合わせ実験において、すべての組合せで雄蜂♂は異種の新女王蜂にさえも交尾行動を起こす(同書p112より引用)
対スズメバチ専用の高価な防護服を持っていない私が笹薮にズカズカと踏み込んで調べるのは自殺行為です。
コロニーが解散する初冬になったら(根雪が積もる前に)現場を再訪して、笹藪の奥にオオスズメバチの巣の有無を調べるつもりでした。
ところが、携帯していたGPSがこの日に限ってなぜか不調で、位置情報を正確に記録してくれませんでした。
できればオオスズメバチの巣を発掘調査したかったのに、残念ながら二度と行けなくなりました。(幻の営巣地)
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