2020/12/25

止まり木で羽繕いするキジバト(野鳥)

 

2020年7月中旬・午後18:20頃・くもり 

夕方、ヒノキ大木の枯れた梢にキジバトStreptopelia orientalis)が止まってのんびりと羽繕いしていました。 
その行動自体は別に珍しくもありません。
それでもなぜ記録するかというと…

実はこの木は例年だと夏にチゴハヤブサが止まり木としてよく利用しているのですが、この夏はなぜか一度も姿を見かけませんでした。 
キジバトは「鬼のいぬ間に洗濯…ならぬ羽繕い」とばかりに羽根を伸ばしているようです。 
天敵のチゴハヤブサが健在なら、キジバトは恐ろしくてこの木にはとても近づけないはずです。 

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コロナ禍の影響で私も足が遠のいて、定点観察に来る頻度が減ってしまいました。 
そのせいでチゴハヤブサを見逃しただけなら良いのですが、今季は繁殖に失敗したのではないかと心配でなりません。 
「風が吹けば桶屋が儲かる」式の勝手な想像ですけど、コロナ禍→外出自粛→ドバトに餌をやるヒトが減少→地域全体でドバト個体数の減少→チゴハヤブサが狩場を変更→キジバトがのびのび暮らせる、というシナリオかもしれません。
もちろん、新型ウイルス流行の有無に関わらず、鳩への安易な給餌は止めて正解だと思います。

オトコエシの花蜜を吸うツヤハナバチの一種♀

 

2020年9月上旬・午前8:05頃・晴れ 

峠道に沿って咲いたオトコエシの群落でツヤハナバチの一種♀が訪花していました。 
小さな蜂なので、マクロレンズで接写してみましょう。 
黒い(焦げ茶色)口吻を伸縮させながら吸蜜しています。 
後脚のスコパは空荷でした。  
忙しなく動き回るために、頭楯の模様にピントがしっかり合いません。 
『日本産ハナバチ図鑑』の写真と見比べてみると、この個体は腹部に白紋があるので、クロツヤハナバチもエサキツヤハナバチも否定できます。 
キオビツヤハナバチまたはヤマトツヤハナバチで、頭楯の斑紋が退化した個体変異なのかな? 
だとすれば、脚の色から♀と分かります。 
現場は低山の標高421m地点でした。 
山地性のヤマトツヤハナバチと決めつけて良いものか迷います。
蜂を同定するため、撮影直後にビニール袋をすばやく被せて採集したのですが、慌てていたせいで少し潰れてしまいました。 
以下は標本写真(掲載予定) 



2020/12/24

ミドリヒョウモン♂の求愛飛翔と♀の交尾拒否

 

2020年9月上旬・午前9:35頃・晴れ 

山間部の林縁に咲いたオトコエシの花で吸蜜するミドリヒョウモン♀(Argynnis paphia)に対して同種の♂がしつこくつきまとって求愛していました。 
本種の求愛行動は初見です。 
リアルタイムの映像では激しい乱舞にしか見えません。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると、なんとか行動を読み解くことができました。 
ミドリヒョウモンは翅の地色で性別を見分けることができる(性的二型)ので、配偶行動の観察に適しています。  
♂の翅は明るい茶色(オレンジ色?)なのに対して、♀の翅は薄くて名前の通り緑っぽい地色です。 

冒頭で♂は♀の周囲で激しく翅をはためかせてアピールしています。 
翅表の黒い性斑を♀に誇示したり性フェロモンを送ったりしているのでしょう。 
しかし♀は翅を半開きにしたまま腹端をやや上に持ち上げて、交尾拒否姿勢を取っていました。 
♂にしつこく迫られた♀は嫌がって、オトコエシの花から下へ下へと葉の茂みへ落ちるように逃げていきます。  
クズの葉の縁に避難した♀は依然として交尾拒否姿勢のままです。
♂が飛びつこうとすると嫌がる♀は逃げて飛び去り、 ♂はすかさず追いかけます。 
空中で激しい乱舞のような追跡求愛飛翔が繰り広げられましたが、交尾には至らずに別れました。 

古い本ですが、日高敏隆『♂をよぶ色とにおい:チョウが♀を見い出す仕組み』に、ミドリヒョウモン♂の求愛飛翔とそれに続く交尾行動が詳しく図解されていました。
ミドリヒョウモンは夏の終わり頃交尾する。林の空き地のようなところで♀を待っている♂は、♀が現れるとすぐ追いかけてゆき、図のような特徴のある追跡をはじめる。(中略) ♀を見つけたミドリヒョウモンの♂は、特殊な追跡飛翔をはじめる。♀のうしろからその下側に出て、さらに目の前を急上昇するのである。これが♀を強制着陸させる信号となる。(『エソロジカル・エッセイ 無名のものたちの世界I』p92〜93より引用)
最後は♀がしつこい♂を追い払ったようにも見えたのですが、引用した解説を読むと、そうではないようです。 
♂が♀の背後から下を通って追い越す求愛飛翔を繰り返したのに♀が誘いに乗らず、♂は♀を見失った(または諦めた)のでしょう。  

現場は峠道の道端で、スギが植林された山の林縁にクズなどが繁茂するマント群落になっていました。 
まさに本に書いてあった通りの環境です。 
昔は蝶の生態動画を自由に撮れなかったはずなのに、先人の鋭い観察眼と緻密な記録にはつくづく感服します。
もちろん、本の解説を全て鵜呑みにはできません。
頭の片隅では常に疑ってかかることが大切です。

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