2018年10月中旬・午後16:09〜16:23(日の入り時刻は17:02)
農道沿いに生えたススキの群落でコガネグモダマシ(Larinia argiopiformis)が日課の垂直円網を張り始めました。
本種の造網過程の一部始終を動画に記録するのは長年の課題でした。
造網後半の動画は何度か撮っているのですけど、枠糸および縦糸を張る前半の過程は、いつも見逃したり撮り損ねたりしていました。
秋のフィールドで造網を始めたコガネグモダマシを見つけた私が慌てて三脚を準備している間に、あっという間に造網が進行してしまうのです。
過去の反省から三脚を使わず、手持ちカメラのまま動画を撮ることにしました。
この日は幸いよく晴れて無風で、絶好の撮影日和でした。
ところで馬場友希、谷川明男『クモ ハンドブック』を紐解いてコガネグモダマシを調べてみると、
夜、草の間に垂直円網を張る。(p61より引用)と書いてあります。
しかし、少なくとも私のフィールドでは、夜ではなくまだ明るい夕刻になると一斉に造網しています。
枯れたススキの穂と茎を利用して、垂直円網の枠糸をまず張ります。
この個体は触肢がやや膨らんでいるので、おそらく♂でしょう。
次は、後に円網の中心となる
縦糸を引きながら懸垂下降すると、近くのクズの葉に糸の下端を固定しました。
すぐに縦糸を登り返します。
網全体の張力のバランスを取りながら縦糸を張るので、クモが放射状の縦糸を追加する順番は不規則(に見えます)。
円網の背後はクズやセイタカアワダチソウ、ヨモギなどが生い茂った道端の草むらです。
カメラをAFモードのままにすると、動画撮影中にピントが合わなくなりがちです。
そこで途中からMF固定焦点に切り替えて
クモの動きに合わせて私が前後に少し動けばピントを微調節できるはずなのですが、実際にはなかなか難しいです。
縦糸を張り終えたクモは、続いて足場糸を張り始めました。(@6:14〜)
中央の
外側の枠糸に達すると、今度は粘着性の横糸を張り始めます。(@8:10〜)
時計回り(右回り)の螺旋状に横糸を密に張っていきます。
横糸を張りながら同時に、不要になった足場糸を切っているはずなのですが、この映像では糸がよく見えませんね。
最後の横糸張りに最も時間がかかります。
やがて私の背後の遠くから線路の踏切が鳴り始め、嫌な予感がします。
せっかくここまでは造網作業が順調だったのに、邪魔が入りました。
線路を列車がガタンゴトン♪と轟音を立てて通過すると、コガネグモダマシ♂は造網を中断し、網から自発的に転がり落ちてしてしまいました。
クモは振動に極めて敏感ですから、通過列車の騒音に驚いて咄嗟に緊急避難したのでしょう。
草むらに逃げたクモを見失ってしまいました。
しかし、この場所で毎日夕方の同じ時間帯に造網しているのであれば、列車が毎日定時に横を通ることを学習しても良さそうなものです。
列車は結局のところクモに対して脅威ではない(天敵ではない)のですから、騒音も無視すれば良いでしょう。
狼少年の人騒がせな偽警報のように、馴れは生じないのかな?
騒音や振動がどうしても耐え難いのであれば、造網開始時刻を前後にずらしたり造網場所を遠くに移動しても良いはずです。
※ 太陽の順光を浴びたクモの糸と網を強調するために、動画編集時にコントラストをかなり上げています。
その副作用で、クモの体色が白飛びしてしまっています。
つづく→