2016/05/08

ムモンホソアシナガバチの古巣と謎の食痕



2015年10月中旬

石灯籠内で営巣するムモンホソアシナガバチの定点観測記録#5


ムモンホソアシナガバチ(Parapolybia indica)のコロニーは解散していました。
結局、この巣はあまり大きくなれませんでした。
創設女王が何らかの原因で早死したのかもしれません。

7日後に再訪し、やはりコロニーが解散していると確信したので、古巣を採集ました。
ナイフで巣柄を切り落とし採集してみると、巣盤の上部が何者かに食い荒らされていました。
野鳥が石灯籠内に侵入して巣盤の上部だけを啄むことは不可能です。

天敵のヒメスズメバチに襲われたのか、それとも寄生蛾の幼虫の食痕かな?
シミ(紙魚)やワラジムシ、ゴキブリ、ナメクジなどの仕業かもしれません。



採集した古巣を密閉容器に入れて保管します。
冬を越しても今のところ寄生蛾の成虫は羽化してきません。

調べたサンプル数が未だ少ないのですけど、同じ地域に生息するPolistes属のアシナガバチに比べてParapolybia属のホソアシナガバチの巣は寄生蛾による攻撃(産卵・食害)を免れている印象があります。
例えば以下の写真は、今年定点観察してきたセグロアシナガバチ?(キアシナガバチ?)の古巣を同じ日に撮った写真です。
ムモンホソアシナガバチの営巣地に近い軒下に巣を作っていたのですが、夏に寄生蛾♀(おそらくマダラトガリホソガの一種Anatrachyntis sp.)に産卵された結果、幼虫に巣材を食い荒らされ育房内は寄生蛾幼虫の糞や糸でひどく汚れています。
育房からアシナガバチ成虫の死骸の脚が覗いて見えるのが不気味ですね。
羽化に失敗したのか、育房に頭を突っ込んで休んでいるまま死んだのでしょう。

巣材の違いによる好き嫌いなのか、在巣のワーカーの対寄生者防衛法に違いがあるのか、そもそもホソアシナガバチ類の生息数が少なく巣を見つけにくいためか、とても不思議です。

シリーズ完。



2016/05/07

杉林の塒で騒がしいカラスの群れ♪(冬の野鳥)



2016年1月中旬
▼前回の記事
高圧線に就塒前集合するカラスの群れ(冬の野鳥)

高圧線から飛び立ったカラスの大群が鎮守の森へ向かったので、私も雪道を歩いて追いかけました。
神社に到着して暗闇に目を凝らして待っていると、遅れてやって来たカラスの群れが杉林の樹冠に着陸する様子がシルエットで辛うじて見えました。
※ 冒頭の塒入りシーンのみ動画編集時の自動色調補正で映像を無理やり明るく加工しています。

午後17:30には群れの塒入りがほぼ完了したようです。
カラスの塒となったスギの大木の下にこっそり行って樹冠を見上げると、普段あまり聞かない奇妙な鳴き声で騒いでいました。
見えない物の例えで「闇夜にカラス」という表現があるように、真っ暗な映像で音声だけの記録です。
音量を上げると私の防寒具が衣擦れする音が耳障りかもしれません。
次第に鳴き声が収まり、寝静まりました。
赤外線の暗視モードに切り替えればよかったのに、私も寒さで頭が回りませんでした。
真っ暗で静かな鎮守の森の雰囲気だけでも最後に暗視映像でお伝えします。(@3:05〜)
空から雪がチラチラと降っていて、林床には雪が積もっています。
当然ながら塒は赤外線投光機の光も届かない高い枝にあるため、カラスの姿は見えません。

映像の撮影時刻は午後17:23〜17:41。
ちなみに、この日の日の入り時刻は午後16:41、月齢は5.1(三日月)。
午後17:39に測定した気温は4.3℃、湿度47%。
照度計も持参したのですけど、撮影に忙しくて手が回らず、あまり測定できませんでした。
そもそも街なかでは夕方から外灯が点灯するので、照度計の値は場所によって異なり、あまり意味がないかもしれません。

ついさっきまでカラスが就塒前集合していた高圧線や鉄塔に引き返してみると、カラスの大群は一羽も居ませんでした。
後日また見に来た時にはなぜかカラスは居なかったので、近所トラブルになって鎮守の森から追い払われたのか、あるいは一時的な集団塒だったのかもしれません。

就塒直後のカラスの鳴き声を声紋解析してみる? 


『ネオン街に眠る鳥たち―夜鳥生態学入門』という隠れた名著(バイブル)で復習してみました。

・カラスは夜間、塒にしている木の下に人が侵入するのを極端に警戒する習性がある。(p79より)
・カラスの塒は一分の例外を除いて、照明もない、人も入らない、真っ暗な環境の中にある。月も出ない闇夜に黒い鳥影をみつけるのは至難の業だ。(p82より)
・集団塒をとるカラス、ムクドリなどでは、冬季に塒が大型化し、一カ所に集中する傾向が強い(p145より)


『Birder 2012年8月号 特集:鳥たちの夜の世界』p36-37 中村純夫「カラスはねぐらで何をしているのか?」より引用。
(夜の塒で)カラスたちは割とおとなしくしており、若い♂のカラスたちも周囲の「目」をはばかってか、♀にちょっかいを出したりはしない。周囲から攻撃されるためなのかどうか、興味深い点である。



【追記】

彼ら(ハシブトガラス)の生活が、ねぐらである森に影響を与えていることが分かってきた。彼らは森林でおびただしい数のフンをする。
(中略)ハシブトガラスは、町中で生ごみを食べて森林でフンをすることで、日本の森が今まで経験したことのなかった栄養、肥料を与えているのだ。
ハシブトガラスの生ごみという肥料の投入によって森は大きく変化しているかもしれないのだ。
(直江将司『わたしの森林研究―鳥のタネまき​に注目して』p107より引用)

私にとってこれはなかなか新鮮な考え方でした。


【追記2】
藤岡正博、中村和雄『鳥害の防ぎ方』によると、
 夕方、カラスはねぐらに使っている林に戻って来ます。そこで、休んでいる間に、カラスは食べたもののうち消化されなかったものを吐き出します(吐き出された未消化物の固まりをペリットといっています)。(p64〜66より引用)

カラスの集団塒の林床でペリットを拾い集めて内容物を調べてみるのも面白そうです。

2016/05/06

羽化直後のノシメマダラメイガ(蛾)



2015年10月下旬

ノシメマダラメイガの飼育記録#29

生のニンニクだけを餌にしてノシメマダラメイガ(Plodia interpunctella)が育つか?という実験をしていました。
諦めかけて放置していたら、容器内で遂に羽化したばかりの成虫を1頭見つけました。

繭から抜け出した直後らしく、体液を翅脈に送り込んで翅伸展している途中(後半)でした。
慌てて動画と写真で記録します。
翅がすっかり伸び切ると、その翅を立てて乾かします。
ノシメマダラメイガが翅を閉じている(立てている)姿勢はこれまで一度も見たことがないので、とても珍しく思いました。
male wing gland?
成虫の口吻は退化していますが、口元でときどき開閉しているのは下唇鬚?でしょうか。
腹端を少し持ち上げていて、コーリング姿勢に似ているかもしれません。
しばらくすると閉じた翅を再び広げたのですけど、その瞬間は見逃しました。
羽化に気づいたのが外出の間際だったので、撮影に全然集中できませんでした。
記録として中途半端ですけど、ゼロよりましなので。(完全版が撮れたら差し替えます。)
次に機会があれば羽化の一部始終を微速度撮影でじっくり記録したいものです。

桑原保正『性フェロモン:オスを誘惑する物質の秘密』によると、「ノシメマダラメイガは午後にだらだらと羽化する」らしい。(p148より引用)



さて、この結果からノシメマダラメイガはニンニクだけを食べて卵から成虫まで育つことが分かりました。
大量の産卵数に比べて生存率は極めて低いです。
幼虫が栄養失調で共食いしたかもしれません。(未確認)
一つ不思議なのは、密閉容器内でこれまで全くノシメマダラメイガの交尾行動を観察していないことです。
もしかすると、ニンニク臭が性フェロモンの働きを撹乱する作用が有るのかな?と思ったりしました。

つづく→#30:巣内で休眠越冬するノシメマダラメイガ(蛾)老熟幼虫



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