2012/07/30

ムツモンオトシブミの揺籃が出来るまで【微速度撮影】



ムツモンオトシブミの揺籃と飼育1


2012年6月上旬

ムツモンオトシブミ♀(Apoderus (Leptapoderus) praecellens)がクロバナヒキオコシの葉で挟裁型の揺籃を作る様子を微速度撮影してみました。
5秒間隔のインターバル撮影を行い、早回しの映像を作成しました。
同一個体の♀で作業の一部始終を見届けることは叶いませんでしたが、延べ2日間かけて撮った断片的な映像素材を再構成して、なんとか一つのストーリーに完結しました。
主演女優は計2匹のダブルキャスト。
天候が急変したり、ムツモンオトシブミ♀がなぜか揺籃作りを中絶したりと、大変でした。(苦労話の詳細は割愛。)
撮影は野外ではなく完全に飼育下で行った方が楽なのかもしれません。

観察の結果、ムツモンオトシブミの挟裁型揺籃は以下の工程で作られるようです。
  1. ♀が葉表を徘徊し始める。揺籃に適した葉かどうか確認(※)。
  2. ♀が葉柄を左右両側から噛み始める。葉表に乗り頭は茎に向ける。みるみる葉が垂れていく。最後は葉の重みで(+♀の体重で)一気に折れ曲がる。
  3. 葉の主脈に向かって両側から内側に折り畳む。
  4. 萎れた葉の先から巻き上げる。
  5. 途中で産卵。(未確認)
  6. 最後の一巻きは全体がほどけないように折り返す。
  7. 葉柄を噛み切って完成した揺籃を落とす。(落とし文を葉に残す場合もある)

※ 『オトシブミ観察事典』p10によると、同じく挟裁型の揺籃を作るヒゲナガオトシブミでは葉を切り始める前に点検して歩く道筋(軌跡)が決まっているそうです。測量して歩き、葉を切る位置などを決めているらしい。


♀が揺籃を作っている間に♂が飛来して交尾したりライバル♂から♀をガードしたりというような行動は見られませんでした。


折り紙職人の仕事ぶりを実際に観察してみると、各工程がいちいち理に叶っていて無駄が無く、本当に感動します。
「一寸の虫にも五分の魂」と言いますが、ムツモンオトシブミ♀の体長はわずか8mmほどで、一寸にも足りません。
これほど精緻な一連の本能行動が昆虫の微小脳で一体どのようにプログラムされているのか、解明できれば素晴らしいですね。

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昆虫―驚異の微小脳 (中公新書)


近年ロボット工学の発達が目覚ましいですけど、これだけ小さい完全自律型の落とし文作製ロボットを実現するにはあと何年かかるでしょうか?
揺籃作りの行動がどのように進化してきたのか、という問題も興味深いです。
太古の昔の落とし文が奇跡的に丸ごと琥珀に閉じ込められて化石として残っていたりしないのかしらん?


完成した揺籃を下の草叢から探し出して採集しました。
風で落ちたのではなく、♀自ら葉柄を噛み切っていました。
周囲のクロバナヒキオコシ群落を探すと、同じ形状の揺籃で葉から切り落とされずに残された落とし文も見つかりました。
計3個採集し、持ち帰って飼育開始。

つづく

【追記】
8月下旬、この植物群落で咲いた花を確認すると、その正体はオドリコソウではなく、同じシソ科でもクロバナヒキオコシと判明しましたので訂正します。


【追記2】
Eテレでカルト的な人気を誇る番組『植物に学ぶ生存戦略』の第9回で興味深い話が取り上げられていました。
揺籃を作るムツモンオトシブミと寄主植物との間で熾烈な進化競争が繰り広げられていることを知りました。

(詳しいPDF版はこちら
Higuchi, Yumiko, and Atsushi Kawakita. "Leaf shape deters plant processing by an herbivorous weevil." Nature Plants 5.9 (2019): 959-964.  (原著論文)
ハクサンカメバヒキオコシという植物はクロバナヒキオコシと同じくシソ科ヤマハッカ属で、本来ムツモンオトシブミ幼虫の食草となり得るのですが、葉の切れ込みを深くしています。
その結果、ムツモンオトシブミ♀は揺籃を作る前に葉を調べる行動で混乱し、揺籃作りに適してないと忌避するのだそうです。

凄いエキサイティングで面白い研究なのですが、私のフィールドでは残念ながらハクサンカメバヒキオコシは自生していないので、自分では追試できません。
それよりも切れ込みの深くないカメバヒキオコシが自生しています。
とりあえずムツモンオトシブミがカメバヒキオコシの葉で揺籃を作るかどうか、観察してみたくなりました。
カメバヒキオコシの葉の先端部に「亀の尻尾」状の突起?があるのも、何か意味がありそうです。

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第8章 葉の形による被食回避:葉を巻く甲虫オトシブミが利用しにくい葉の形








2012/07/29

野生ニホンザルの母子(授乳など)



2012年6月上旬

野生ニホンザルMacaca fuscata)の群れが徐々に遊動する跡を付いて歩きながら撮り続けた中から、母子の映像をまとめてみました。
可愛らしい子猿の映像が満載です。
授乳行動を初めて観察できました。
個体識別できていませんが、もしかすると同じ母子が何度も登場しているかもしれません。


Scene 1
崖の上からこちらを見下ろしている。
子猿を胸に抱き授乳中らしい。
隣で小猿が独りで遊んでいる。

Scene 2
潅木のたもとで子猿を胸に抱えた母猿。
子猿が枝を齧ろうとしている。
細い枝葉に興味を示して手を伸ばすものの、未だ乳離れしていないのか葉を採食せず。

Scene 3
林縁の地上に座っていた母子。草葉の陰でよく見えないが、子猿を足元で遊ばせている。
育児疲れか、母猿の欠伸。
別個体が手前に出現。

Scene 4
道端のガードレールに腰かけている母子。冬季に積もった豪雪の重みでひしゃげてしまっています。
母猿の胸に抱かれ動き回る小猿が可愛らしい。
自ら右乳首を口に含みました。
母猿の乳首は血色の良いピンク色で長いです。
母猿は片時も子猿を手元から離しませんが、その間に何か頬袋に溜め込んだ食物をもぐもぐと咀嚼しています。


Scene 5
母猿は路上に座り、足元で小猿を遊ばせている。草の茎(または枯れ枝)を食している。
脚で体を掻くと小猿がじゃれついてきた。
母子の目の前を別個体が左へ横断。








マドガ♀♂(蛾)の飛び立ちハイスピード動画




2012年6月上旬


草むらに止まる小さく可憐なマドガThyris usitataが飛び立つ様子をハイスピード動画(220 fps)に撮ってみました。
同一個体を見失うまで追いかけて何度も続けて撮影しました。


【追記】
登場する個体はほとんどが♀ですが、腹端にヘア・ペンシルを持つ♂も混じっていますね。

2005年8月撮影


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