堤防の石段に動物の白骨死体が散乱していました。
ここは結構頻繁に通っていたのに、迂闊にもそれまで見過ごしていたようです。
頭骨に立派な犬歯が見えるので肉食獣だと思います。
考えられるのはタヌキ、イヌ、ネコなどですが‡、どなたか写真鑑定できる方がいらっしゃいましたらご一報下さい。
無臭できれいに白骨化していたので採集することに。
欠損しているパーツも多く、残されていたのは上顎、下顎、背骨、肋骨などのようです。
百円ショップで買ったフィギュアケースに保管・展示しています。
※今日のブログネタは珍しく動画なし。
【追記】
熊谷さとし『フィールドワーカーのための動物おもしろ基礎知識』p180に「日本の里山で見られる動物の歯式表」が掲載されていました。
頭骨の両顎の状態が完全であれば歯式を調べることで絞り込むことが出来そうです。
‡【追記2】
その後、この近くで野生のアナグマとハクビシン、イタチ(またはテン)も目撃しました。
【追記3】
ようやく重い腰を上げて、今回の頭骨標本で歯式を検討してみました。
歯式に不慣れな私は、まず前臼歯と後臼歯の見分け方があやふやでした。
熊谷さとし『フィールドワーカーのための動物おもしろ基礎知識』によると、
頭骨を持って、上下のあごをかる〜く噛み合わせてみる。頬歯 の中に上下の歯が重なるところがあるはずだ。(中略)上あごは重なった歯を含めて犬歯の直後までが前臼歯(P)、下あごは重なった歯を含めて後ろが後臼歯(M)なのだ!ただし、この法則は上下のあごがそろっていなければ使えないし、草食動物の歯だと突然わからなくなる。 (p169より引用)
頬歯とは前臼歯(小臼歯)と後臼歯(大臼歯)を合わせたもので、肉食獣の頬歯は「裂肉歯」という特別な称号が与えられている。
これをふまえると、歯式は
3・1・3・0 = 28 となりました。(1)
3・1・2・1
上顎の小さな大臼歯に対応する歯槽が開いていたので、M1が脱落・紛失した可能性があります。
もしも私の素人解釈が正しければ、歯式は
3・1・3・1 = 30 となります。(2)
3・1・2・1
3・1・2(3)・1 = 28〜30
3・1・2・1
括弧内の数字は同種内の個体変異。(同書p180:日本の里山で見られる動物の歯式表)
頭骨標本の歯式が(1)だとすれば、それに該当するものが掲載されていなかったので、永久歯が生え揃っていない乳歯の幼獣ということになり、歯式による同定は絶望的らしい。
川口敏『哺乳類のかたち ~種を識別する掟と鍵~』によれば
乳歯と永久歯を比べると、種の分類にはやっぱり永久歯が有効だ。というのも、一般に生き物というのは、成長が進むにつれて種固有の特徴が顕著になるからだ。種も分類するにはなるべく成体がよい。歯を見るにも大人の歯である永久歯がよい。一方、幼体では種の違いがあまり見られない。近縁な動物の幼体はどれも似たような形をしていて、見分けがつかないので、種を同定するには役立たない。歯にしても幼体の歯である乳歯は役立たない可能性が高い (p23より引用)
しかし、最も似ていたのはネコの歯式でした。
猫の歯と歯式図を詳細に解説したサイトを参照すると、
永久歯の歯式は
3・1・3・1 = 30
3・1・2・1
乳歯の歯式は
3・1・3・0 = 26
3・1・2・0
もしかすると、ネコ(の幼獣)だったのかもしれません。
この記事のタイトルを初め当てずっぽうで「タヌキ?の白骨死体」としていたのですが、「イエネコ?の白骨死体」と改めます。
頑張って調べたおかげで、歯式による同定法の有用性を思い知りました。
まさに、哺乳類は歯が命!
『イヌのいいぶん ネコのいいわけ:イヌとネコにともだちになってもらう本』p77によると、ネコが早食いで丸のみするのは、すり潰す歯が無いからだそうです。
頑張って調べたおかげで、歯式による同定法の有用性を思い知りました。
まさに、哺乳類は歯が命!
『イヌのいいぶん ネコのいいわけ:イヌとネコにともだちになってもらう本』p77によると、ネコが早食いで丸のみするのは、すり潰す歯が無いからだそうです。
30本ある歯はぜんぶ、かみきるための歯。