2025/01/02

警戒して動かないタシギと根比べ(冬の野鳥)

 

2024年1月上旬・午後12:00頃・晴れ 

里山の斜面にヤマアカガエルの繁殖池があります。 
久しぶりに様子を見に来たら、私が雪をザクザク踏みしめる音に驚いた1羽の鳥が池畔から飛んで逃げ出しました。 
少し飛んだだけで、奥の緩斜面に着陸して動きを止めました。 
今季は異常な暖冬で積雪が少なく、まるで早春のような景色です。 
池の水面は結氷しておらず、枯れ草に覆われた斜面のあちこちに残雪が見えます。 
謎の鳥にズームインしてみると、その正体は嘴の長いシギの仲間で、タシギGallinago gallinago gallinago)という種類でした。 
シギ類の中でも私が初めて見る鳥なので、とても興奮しました。 
最近本で読んだばかりのタマシギかと期待したのですが、別種でした。 

【アフィリエイト】


ちなみに以前私が観察したのは、ヤマシギでした。 


地味な模様のタシギが枯れ草の上にしゃがみ込んで静止すると、見事な保護色(カモフラージュ)になっています。 
雌雄同色らしいので、性別を見分けられません。 
撮り初めは長い嘴の全体がしっかり濡れていたので、どうやら私が来るまで近くの湿地帯で採食していたようです。 
鼻水も光って見えます。 
初めは完全にフリーズしている訳ではなく、身を屈めながら横目で私の様子を油断なく伺い、わずかに身動きしていました。 
飛んで逃げるべきか、じっと静止して私をやり過ごすべきか、タシギの葛藤が垣間見えます。 

一方私は、タシギが痺れを切らして飛び立つか、警戒を解いて再び採食してくれるかと期待して、我慢比べの長撮りになりました。 
しかしタシギは警戒心がとても強く、その後はひたすらフリーズしているだけでした。 
もし嘴を開いてくれたら、有名な騙し絵「ウサギとアヒル」にそっくりでした。 
フリーズ状態のタシギは瞬きするだけで退屈なので、10倍速の早回し映像でお届けします。 
三脚を使わずに撮影を始めてしまったので、早回しにすると手ブレがひどいのは仕方がありません。 
フリーズの途中でタシギはときどき首を少しかしげて、斜めを見上げました。 
上空に飛来したカラス?を警戒したのかもしれません。 

私もその場でほとんど動かずに20分以上も粘ったのですが、カメラを構える腕の筋肉が限界を迎えました。 
ついに根負けした私が撮影を止めて歩き始めた途端に、タシギは飛び去ってしまいました。 
上空を旋回してから山林の方へ飛び去りました。 
タシギの鳴き声は聞き取れませんでした。 
飛び立つ瞬間に鳴いた気がするのですが(警戒声?)、その瞬間を動画に撮り損ねたのが残念です。 
タシギの飛翔シーンを1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 

静かな山中で長撮りしている間にカカポ♪という謎の鳴き声も聞こえたのですけど、別種の鳥の鳴き声なのか、それともタシギの番(つがい)のパートナーが近くで鳴いたのか、不明です。 
ネットで調べても、そんな鳴き声を発する鳥は日本に居ない、と言われてしまいました。 

凍結した雪面にかなり大きな鳥の足跡が残されていました。
ただし、タシギの足跡とは限りません。 

その後しばらく(数時間)雪山を散策してから同じ地点に戻ってきても、タシギとは再会できませんでした。 


『やまがた野鳥図鑑』でタシギについて調べると、
 長く真っすぐなくちばし、枯れ草色の複雑な模様。旅鳥、または冬鳥としてやってくる。  (中略)河川や水田など湿地に生息するが、警戒心が強く、すぐに草の根元などに隠れてしまう。枯れ草色の複雑な模様の体は、辺りに溶け込み、ちょっと目を離せば見失ってしまう。見事な保護色だ。  朝夕に活発に動き回り、長いくちばしを土中に差し込んで上下に動かし、ミミズや昆虫などを食べる。くちばしは感度抜群。何と土の中でも先端が開くようになっていて、うまく獲物を捕らえる。湿地から「ジェッ」としわがれ声の鳥が飛び立ったら、それは間違いなくタシギだ。 (p151より引用)

タシギは夜行性らしいので、トレイルカメラで採食行動を録画してみるのも面白そうです。 
しかし、ここはどうしても監視カメラを設置しにくい場所なので、諦めざるを得ませんでした。
 
実は2023年の夏から秋にかけて、雑草が生い茂るただの草地だった池畔の地形が一変しました。
おそらくニホンイノシシSus scrofa leucomystax)の仕業だろうと睨んでいるのですが、広範囲に雑草が根こそぎ掘り返され、掘り跡に山の湧き水が流入して湿地帯(草地)になったのです。
ヒトは長靴を履かないと通れない泥濘の草地と化しました。
イノシシが採食行動によって環境を改変したことで、タシギにとって絶好の餌場となったようです。 
私の推理が正しければ、イノシシは里山の生態系エンジニアの役割を果たしていると言えそうです。
タシギなんて地味な鳥を見れたからと言って喜ぶ物好きは私ぐらいですから、歩きにくくて見苦しい地形になったという理由で、地元の人が(良かれと思って)ブルドーザーで整地し直すのではないかと心配です。 
地球温暖化や開発のせいで生物多様性が急激に減少している昨今、日本で特に保全しないといけないのは、草地と湿地の環境です。
最近の田んぼは収穫後に水を抜いてしまう乾田なので、田シギは住めなくなっているのでしょう。




0 件のコメント:

コメントを投稿

ランダムに記事を読む