2021年10月下旬・午前11:30頃・くもり
山腹の池の畔を私が歩くと、岸辺の植生に潜んでいたクモが驚いて逃走開始。
水面を走って逃げて行き、波紋が広がります。
クモが水面で立てる波紋に反応してカメムシ目(半翅目)の捕食者(アメンボやマツモムシなど)がやって来て対決するかと期待したのですが、残念ながら何も居ませんでした。
水生昆虫が居なくなったのは、もしかしてこのクモが食べ尽くしてしまったのでしょうか?
コモリグモ科の仲間とはすぐに分かったものの、そこから先が私には大変です(見分けるのが苦手)。
目撃時期と生息環境からはキクヅキコモリグモかと思いきや、外見(腹背の斑紋)からはウヅキコモリグモ(Pardosa astrigera)と判明しました。
私がじっとしていると、池の中央まで逃げたウヅキコモリグモは向きを変えて岸辺の草(スゲ?)まで戻って来ました。
私が面白がって岸辺を歩き回ると、次々にクモが水面を走って逃げ回ります。
話には聞いていたものの、実際に見るのはこれが初めてでした。
水面で静止したときにズームインしてよく見ると、歩脚の先端(跗節)で水面に立っています。
風が吹くとそのまま漂流します。
アメンボのように表面張力を利用して水に浮いているのでしょう。
界面活性剤(洗剤)を使った実験をしてみたくなりました。
ウヅキコモリグモの水面歩行を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@1:20〜)
アメンボの洗練された動き(滑走)とは明らかに違い、ピョンピョンと無駄な(?)上下動しながら水面を掻いて進んでいます。
腹部を上下動するのでギャロップのように見えます。
水面でもしおり糸をあちこちに付けながら歩こうとしているのかな?
(さすがに水面にしおり糸は付着しない気がします。)
跗節の先端にある3本爪で水面を掻くだけで進めるのでしょうか?
足は比較的たくましい。後ろ足が長いものが多い。足の爪は3本で、造網性のクモの系列であることを示している。(wikipedia:コモリグモより)
少し長い第4脚の役割は主に水面で踏ん張って浮かぶだけで、主に第1脚で水面を掻いて進んでいるようです。
陸上歩行とは異なり、左右の歩脚を同時に動かさないと真っ直ぐ前進できないのでしょう。
つまり、陸上での歩行法をそのまま水面でやってもうまく進めないので、水陸両用のクモは歩行法を切り替える必要があるのです。
240fpsのハイスピード動画でも水面歩行の足並みを撮るべきでしたね。
コモリグモの陸上歩行を改めてスローモーションで記録して、水上歩行と見比べないといけません。
複数個体を撮影。
触肢が膨らんだ♂も含まれていました。
未採集なので外雌器は確認していません。
新海栄一、緒方清人『クモ (田んぼの生きものたち)』によると、
・コモリグモは水陸両用なので、一年中、田んぼとその周辺で暮らしています。
・コモリグモやハシリグモの仲間は田んぼの水面を、アメンボのように素早く走り回っています。(中略)彼らの脚にはたくさんの毛が生えています。そのため、水と接している面積が大きくなり、水面に浮くことができるのです。
・(ウヅキコモリグモは)脚にたくさんの毛が生えているので、水に浮き水面を走り回ることができる。乾いた田んぼに多い。 (p9より引用)
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