2025/01/14

ニホンアナグマが冬眠する巣穴にこっそり潜り込んで一休みするホンドタヌキ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年2月上旬 

根雪の積もった平地の二次林でニホンアナグマMeles anakuma)が冬眠している営巣地(セット)を自動撮影カメラで見張っています。 
近所のホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が通ってくる様子をまとめました。 


シーン1:2/6・午前0:30・降雪・気温-2℃(@0:00〜) 
ボタ雪が激しく降りしきる深夜に単独行動のタヌキaが左からやって来ました。 
雪が積もっても開口しているアナグマの巣口Rにタヌキaは頭を突っ込んで、しばらく中の様子を伺っています。 
驚いたことに、タヌキaはそのまま狭い巣口Rをくぐり抜けて奥に押し入りました。 
主であるアナグマは巣内でぐっすり冬眠中らしく、怒って侵入者を追い払うことはありませんでした。 
これでまさしく「同じ穴のむじな」状態になりました。 
このまま一晩一緒に過ごすのでしょうか? 
地下に堀り巡らされた巣穴の構造がどうなっているのか全く分かりませんが、もしかすると複数の居住区に分かれていて、越冬期間も空き部屋があるのかもしれません。

タヌキa





シーン2:2/6・午前0:49・降雪(@0:40〜) 
18分後にタヌキaは同じ巣穴Rから外に出てきて左に戻っていきました。 
監視カメラの起動が遅れて出巣Rの瞬間を撮り損ねたのですが、雪面に残るタヌキの足跡を映像の境目で見比べると、新たな別個体が右から登場したのではないことが読み取れます。 
家主のアナグマが怒ってタヌキaを追いかけることもありませんでした。


シーン3:2/6・午後23:18・気温-4℃(@0:56〜) 
明るい日中は誰もセットに現れず、深夜になると雪は降り止んでいました。 
林床の雪面がボコボコなのは、落葉樹上から落雪したのでしょう。 
右から単独でやって来たタヌキbが、開口したアナグマの巣口Rを見つめ、ゆっくり頭を突っ込みました。 
その後に入巣Rしたかどうか残念ながら見届けられず、1分間の録画時間が終わりました。 

尻尾の黒班を比べると、前夜に来た「穴があったら入りたい」タヌキaとは別個体でした。 
アナグマの巣内で一休みしてから22時間半前に出巣Rした別個体タヌキaの残り香を気にしていたのかもしれません。 

タヌキb



シーン4:2/7・午後19:10・降雪・気温0℃(@1:56〜) 
翌日の晩は再び雪が降っていました。 
巣穴R内で一晩アナグマと同居したタヌキbが巣穴Rから左外に出てきた直後のように初めは見えました。 
しかし湿った新雪に残る足跡を注意深く読み解くと、この個体cは画面の手前から来て右から回り込んで巣口Rの手前を左に通り過ぎていただけと分かりました。 
トレイルカメラのセンサーが反応しにくいルートで登場したのです。 
しかも尻尾の黒班を見ると、タヌキbとは明らかに別個体で、タヌキa=cかもしれません。 
タヌキaはアナグマのもう一つ別な巣口Lの匂いを嗅いでから、最後は手前に立ち去りました。 

タヌキc=a?




※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


【考察】 
ホンドタヌキの尻尾に現れる黒斑を頼りに個体識別を試みると、2晩に複数個体(2頭?)が代わる代わるニホンアナグマの越冬用営巣地にやって来ていました。 
冬眠中のアナグマが巣内で寝静まっているのを確認できたのか、タヌキは大胆にもアナグマの巣穴に潜り込みました。 
ただしアナグマを追い出して完全に巣穴を乗っ取るつもりはなく、ときどき一時的な避難所(休憩所、シェルター)として間借りさせてもらうだけのようです。 
雪が激しく降る夜だったので、餌を探し歩く途中でアナグマの巣穴に立ち寄って休憩したのでしょう。

巣穴の中に何か餌があるのでしょうか?
巣内の様子を見ることはできないので、推測するしかありません。

アナグマは脂肪蓄積型の冬眠動物ですから、野ネズミのように巣穴の中に餌を貯食したりしません。
アナグマの巣穴に居候している野ネズミを侵入タヌキが捕食したり、その貯食物を盗み食いすることはあり得るかもしれません。

まさか、冬眠中で無抵抗のアナグマを侵入タヌキが隙あらば捕食しているのでしょうか?
想像するだけでも、かなりのホラーです。
しかし、18分の滞在後に巣外に出てきたタヌキの体は血に染まっていませんでした。
もしタヌキがアナグマの捕食者ならば、普段からアナグマはタヌキに対してもっと敵対的に接するはずです。
「同じ穴の狢」のような慣用句が昔からあるということは、タヌキはアナグマを獲物として捕食するよりも、穴掘り職人として利用(片利共生)する方が進化的に得策なのでしょう。
日本の食肉類:生態系の頂点に立つ哺乳類』という専門書の第8章:金子弥生「ニホンアナグマ」によると、そもそも冬眠中のアナグマは無抵抗ではないらしい。
穴ごもりは長期間1ヶ所の巣穴で動かずにほとんど眠って過ごす点においては冬眠と似ているが、体温低下が見られず、危険がある場合はすぐに動き出すことができる。(p183より引用)

アナグマの巣穴の中で集団越冬する虫をタヌキは捕食していたのかもしれません。
実際、秋にはカマドウマと思われる穴居性の昆虫を目当てに夜な夜なタヌキを始めとする野生動物が捕食に通っていました。
巣穴の主であるアナグマや野ネズミも、巣内で虫を見つけ次第、捕食しているはずです。
したがって、巣穴の中で集団越冬する虫がいたとしても、既にほとんどが捕食され尽くしたのではないかと思われます。


路上に落ちた草の実を食べ歩くキジバト(野鳥)

 

2023年10月上旬・午後12:40頃・晴れ 

郊外の農村部でキジバトStreptopelia orientalis)が単独で路上採食していました。 
アスファルトで舗装された路上を歩きながら、あちこち啄んでいます。 
キジバトは種子食性ですから、路上に散乱した草の実(種子)を丹念に1粒ずつ拾い食いしているのでしょう。 
ハト類は種子捕食者(植物にとっては天敵)ですが、舗装路に落ちた草の実はどうせ乾燥して発芽できずに死んでしまうはずです。 
ちなみに、キジバトの歩行はホッピングではなくウォーキングです。 

黒い甲虫?(種名不詳)が右から左へ車道を横断して近くを通り過ぎたのに、キジバトは見過ごして捕食しませんでした。
(@0:42〜)

道の両側には雑草が生い茂っています。 
キジバトは道端で重点的に採食し始めました。 
やはり、道端の雑草からこぼれ落ちる草の種を食べているようです。 
まるで落ち穂拾いのようです。 

映像をよく見ると、道端の原っぱには黄金色の穂をつけたキンエノコロとピンク色の実をつけたイヌタデの群落がなんとか見分けられました。 

興味深いことに、キジバトはキンエノコロやイヌタデなどの穂を直接啄んで実を食べることは一度もありませんでした。 
穂に残っている実は未熟で栄養価も低いのでしょう。 
また、鳥が穂をつついても揺れて上手く採食できないはずです。
キジバトは草を足で倒伏させて押さえつける採食法を知らないのかな?


キジバトが路上に留まり、草地に入って採食しない理由も考えてみました。 
土の地面よりも舗装路の方が落ちた草の実を見つけやすいのかもしれません。 
また、見通しの良い路上で採食した方が安全です。 
雑草がぼうぼうに生い茂る原っぱで採食すると、ネコなどの捕食者(天敵)が潜んでいる可能性があるからです。 
仲間と一緒に群れで採食していれば、警戒行動も分担することができますが、今回のキジバトは単独行動でした。

本当は動画を撮影した直後に現場検証して、キジバトの採食メニューとなる道端の雑草や路上に散乱する草の実を全てしっかり同定すべきでした。
実はこのとき私は、奥に居たニホンザルの群れも同時に観察していました。 
猿たちと私の間にキジバトが居たのです。 
この後私は、ニホンザルの撮影を優先しました。 
関連記事(同所同日の撮影)▶ 路上でクリの落果を拾い食いするニホンザルの群れ 
左右の田畑には、ニホンザルなどの野生動物の侵入を防ぐための電気柵が見えます。
私がニホンザルの群れに少しずつ近づくと、間に挟まれたキジバトはどんどん奥に歩いて私から遠ざかり、最後は飛んで逃げました。 


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2025/01/13

疥癬で毛が抜けたホンドギツネがニホンアナグマの越冬用巣穴を覗いて回る【トレイルカメラ】

 



2024年2月上旬・午後12:40頃・気温11℃ 

根雪が積もった平地の二次林でニホンアナグマMeles anakuma)が越冬する営巣地(セット)をトレイルカメラで見張っていると、白昼堂々ホンドギツネVulpes vulpes japonica)が登場しました。 

この時期のキツネはふさふさの冬毛をまとっているはずなのに、この個体は毛並みが黒っぽく、ボサボサでやや汚らしい印象でした。 
特に、尻尾の毛量が貧弱です。 
素人目には尻尾の骨が曲がっているような気もするのですけど、どうでしょうか? 
全身の毛が濡れている訳でもなさそうですし、おそらく疥癬という皮膚感染症にかかっていると思われます。 
ヒゼンダニSarcoptes scabiei)が体外寄生した結果、痒くて掻き毟り、毛が抜けていくのだそうです。 
恒温の野生動物にとって、厳寒期に毛が抜ける疥癬症は死活問題です。 
この個体は果たして雪国の冬を無事に越せるのかどうか、心配です。
半年前の夏にここで見かけた個体「細尾」の症状が進行したのかな? 

関連記事(3、半年前の撮影)▶  


アナグマの巣口は2つとも開口しているのですが、疥癬キツネはまず巣口Lを覗き込んで匂いを嗅いでいました。 
次は巣口Rへ向かうと、そこでも匂いを嗅いだだけでした。 
巣内には侵入しようとせずに、右奥の二次林へとに立ち去りました。 
もしも疥癬キツネがアナグマの巣穴に押し入ったら、中で冬眠するニホンアナグマにもヒゼンダニが移り、疥癬の感染が拡大しかねません。

塚田英晴『野生動物学者が教えるキツネのせかい』によると、
キツネが、皮膚の中にひそむダニによって引き起こされる疥癬という病気にかかっていた場合、キツネが寝場所としたところなどに飼い犬や飼い猫が接触することで、この皮膚病に感染してしまう
・しっぽがゴボウのようにとがり、全身の毛が抜けた、お化けのような姿のキツネ
・疥癬がひどくなったキツネは死んでしまいます。


【関連文献】
曽根啓子; 西村祐輝; 野呂達哉. 名古屋市内で疥癬症によって死亡したと思われるアカギツネ. なごやの生物多様性, 2020, 7: 89-92. (全文PDFが無料ダウンロード可)


つづく→ 


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