アカタテハの飼育記録:2022年#4
2022年8月下旬・午後16:00頃・室温24℃
アカタテハ(Vanessa indica)の幼虫による巣作りには、明確な「完成状態」はありません。 造巣がある程度進むと、食餌と同時並行かつ臨機応変に行われます。
マクロレンズを装着して造巣行動の一部を接写してみました。
終齢幼虫が白い絹糸を吐いて食草クサコアカソの赤い葉柄の間に何本も張り巡らせています。 糸の張力で周囲の葉や穂先を引き寄せ、巣材として綴り合わせるのです。
絹糸を見やすいように、背景を黒にするべきでしたね。
やがて、赤い葉柄の下面を齧り始めました。(@0:30〜)
茎に切れ目を入れて、巣材として加工しやすく(折り曲げやすく)しているのです。
この工作をしないと、巣材の茎や葉柄を曲げようとしても、それに逆らう茎の弾性に糸の張力が負けて切れてしまいます。
穂先についた実を食べる前のトレンチ行動も兼ねていると考えられます。
茎に大きく傷を付け、防御物質の流入を防いでから、ゆっくり食餌するのです。
しかし、アカタテハ幼虫が齧っているクサコアカソ茎の傷口から防御物質を含む汁は滲み出していませんでした。
植物の種類によっては、白い乳液(ラテックス)などが傷口から分泌されます。
折れ曲がった果穂の先に糸を付けて、周囲の葉などと一緒に巻き込んで隠れ家を作ります。
【参考文献】
井出純哉「アカタテハの巣作り行動」@環境Eco選書『チョウの行動生態学』の第3章p39〜50