2022年8月下旬
里山で沢の源流となっている泉をトレイルカメラで監視していると、真夜中にハクビシン(白鼻芯、白鼻心;Paguma larvata)らしき謎の獣が2回登場しました。 夏毛のホンドテン(Martes melampus melampus)かと初めは思ったのですが、ハクビシンに訂正しておきます。 もし間違っていたら、ご指摘願います。
シーン1:午前2:37
カメラの起動が少し遅れたようです。
ハクビシンが対岸の水路から、草木で覆われた右岸に登るところでした。
水場から居なくなって数秒後に、コウモリ(種名不詳)が奥の森から飛来しました。
今回のコウモリは池に着水することなく、すぐに飛び去りました。
いつもなら、他の野生動物が水場に来るとコウモリの飛来はパタッと無くなります。
空を敏捷に飛び回るコウモリにとって、他の哺乳類が(たとえ肉食獣であっても)脅威になるとは思えないのですが、それなりに警戒しているようです。
暗闇での哨戒活動もエコロケーションで行っているのが我々には想像も出来ません。
それが今回、ハクビシンと入れ替わるようにコウモリがすぐ飛来した点が興味深く思いました。
シーン2:午前3:44
1時間前と同一個体なのか別個体なのか分かりませんが、再びハクビシンが写りました。
池の水が流れ出る水路の出口で腰を屈め、横向きで脱糞しています。
浅瀬の水中に排泄した軟便は、赤外線の暗視映像では白く見えました。
排便の途中でカメラ目線になると、両目が白くギラギラと光ります。
実は同じ水場で昼間にもホンドテンがオシッコに来ていました。
このときは白昼の池畔に突っ立って撮影する私を警戒してそこに排尿したのかと思ったのですけど、夜に無人カメラで撮影すると今度はハクビシンが同じ場所に排便していました。
テンやハクビシンには水場を糞尿の匂いでマーキングする習性があるのでしょうか?
しかし、流水に匂いが長時間残るとは思えません。
哺乳類のフィールドサインに関する本を読むと、テンは糞をサインポストとして縄張り内の目立つ場所に残す習性があるとしか書いてません。 (※追記2参照)
水洗トイレに排泄するということは、逆に自分の糞尿の匂いを残したくないことになります。
その理由を色々と想像してみました。
・他の強い個体の縄張り内でこっそり暮らしてる?
・発情期以外の♀は♂につきまとわれると面倒なので、自分の匂いを残したくない?
・里山の食物連鎖では上位の捕食者なので、縄張り内の獲物に悟られないよう匂いを消している?
登山中に辿り着いた泉や沢の水が澄んでいるとつい飲みたくなりますが、野生動物の糞尿で汚染されていることを知った私は飲む気が失せました。
逆に、テンやハクビシンは飲み水が自分の糞尿で汚染されても気にしないのでしょうか?(衛生観念の欠如)
水場の下流の端に排泄してくれたのが唯一の救いです。
池の水生生物にとっては、水質がきれいすぎるよりも糞尿で適度に富栄養化した方が生物多様性が増すのかもしれません。
「水清ければ魚棲まず」
排便後のハクビシンは一気に跳んで右岸に登ると、前回とほぼ同じく岸辺の斜面を斜行して姿を消しました。
跳躍シーンをまずは1/3倍速のスローモーションでご覧ください。
直後に等倍速でリプレイ。
長い尻尾を鞭のように振ってジャンプする瞬間は、スポーツ用品メーカー「プーマ」のロゴとそっくりです。
ハクビシンが居なくなった後も、浅瀬の水中には新鮮な糞が残っています。
ハクビシンの姿が見えなくなった後に此岸の水面に波紋が広がりました。
ハクビシンが池の岸を回り込んでからブルルっと身震いして濡れた毛皮の水気を切ったか、あるいは崖を登った際に土砂が少し池に落ちたのかもしれません。
【追記】
まさかとは思いますが、もしかしてテンではなくてハクビシン(白鼻芯、白鼻心;Paguma larvata)ですかね? 黒くて細長い尻尾がハクビシンっぽい気がするものの、ハクビシンなら顔の中央にあるはずの白い縦線が見えないので、悩ましいところです。
尻尾がフサフサではなくて細長く見えるのは、水に濡れたせいと考えれば、ホンドテンで良さそうです。
実は興味深いことに、水場から少し離れた林道に設置した別のトレイルカメラにも、同じ日に2回撮れていました。
しかも2回ともに撮影時刻が数分前なので、林道を歩いて水場に向かった同一個体の動向が2台のトレイルカメラに連続して記録されたことになります。
【追記2】
水場の水中に残された糞はすぐに溶けて原形を留めませんから、フィールドワーカーに気づかれにくく、フィールドサインとして記録されてこなかったのでしょう。
トレイルカメラで偶然撮れた排便シーンの証拠映像を見なければ、ハクビシンの糞とは認識できません。