2022/06/09

初冬の山道・杉林でタヌキの溜め糞場を探し歩く

 

2021年12月上旬・午前11:50頃・晴れ 

未だ根雪になる前の初冬にスギ林の山道を歩いてホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の溜め糞を探します。 
とは言ったものの、本当は過去に見つけた溜め糞場LのGPS座標を頼りに現場へ向かいました。 
その道中を動画を撮りながら歩いてみます。 
スギ林と射光の組み合わせが絵になりますね。 
林床のところどころにうっすらと積もった雪は溶けつつあります。 
山道で迷わないように、目印のピンクリボンが所々にぶら下げられています。 
山道の横に生えていた杉の木が根こそぎ倒れているのは台風のせいでしょうか?

実は撮影に気を取られた私はうっかり溜め糞場Lに気づかず通り過ぎてしまい、引き返してからTake2を撮り直しました。 
里山の斜面をトラバースする細い山道の途中に大量の糞塊が残されていました。 
糞をうっかり踏んづけてしまわないように、山歩きの際は下をよく見て歩きましょう。
最近降った雨や雪の水分を吸って、糞の形はすっかり崩れています。 
雪が降って気温が低くなると、ベッコウバエなどの昆虫も糞には全く来なくなります。 

この時期のタヌキの糞には大量の柿の種子が未消化のまま混じっています。 
カキノキの熟した果実(熟柿)を食べる際に大きな平べったい種子も丸呑みしているのです。
食後のタヌキはわざわざ遠くの決められた溜め糞場まで来て排泄する訳ですから、カキノキの種子散布を助けていることになります。
春になれば柿の種から実生が芽生えることでしょう。
溜め糞場の土壌は植物にとって栄養豊富ですけど、この場所は常緑の杉林なので林床は日照不足となり、カキノキの生育は期待できそうにありません。

タヌキの糞というと「とにかく臭い!」「独特のタヌキ臭」などと本によく書かれているのですが、私の経験ではそこまで臭いと感じたことがありません。 (私の嗅覚に問題があるのかと心配になります。) 
ヒトの残飯に依存した不健康な食生活を送る都会のタヌキの糞が臭いのではないか?と秘かに疑っています。 
当地のタヌキの糞があまり臭くないのは、いつも良い物(自然の恵み)をバランス良く食べているからではないか?と贔屓目に思ってしまいます。 
肉食のメニューが多くなれば糞の匂いはきつくなるのかもしれません。
この仮説を真面目に検証するのなら、糞の内容物を徹底的に調べてタヌキの食性(メニュー)を調査しないといけません。
あるいは微生物など分解者の活動が当地では特に活発なのかな?(気温の低い冬も臭くないのはなぜ?)

本当はこのタヌキの溜め糞場Lにもトレイルカメラを設置して監視したいところです。
しかし、この山道は登山客の往来が結構多いので、カメラを盗られるなどのトラブルが心配で諦めました。 

今回撮った動画の通りにタヌキが歩いて溜め糞場に通っているとは限りません。 
そもそも杉林にタヌキの餌は少ないはずですから、雑木林や沢に向かう途中にスギ林を通り抜けているだけだと考えられます。 
また、夜行性のタヌキは必ずしもヒトが作った山道に忠実に沿って歩いているとは限りません。 
歩きやすい山道の途中から外れて斜面を自由に歩き回るかもしれません。 
もっと雪が積もれば足跡を追跡することで、タヌキの巡回ルートを調べることができそうです。 

2022/06/08

雪国の川で白波の立つ瀬を下るカルガモ(冬の野鳥)

 

2022年1月中旬・午後13:50頃・くもり 

街なかを流れる川の傾斜が少し急になっている区画が、白波の立つ瀬になっています。 
人工的な瀬を作るために、そこだけ川底に岩が敷き詰められコンクリートで固められています。 
雪国の住民が川に捨てた雪の塊が川面を次々に流れて行きます。 

瀬の手前で浮いていたカルガモAnas zonorhyncha)が上流側に向きを変えました。 
どうやら水深は浅く、足が川底に付いて立てるようです。 
瀬の状態をじっくり偵察して侵入ポイントを見極めると、意を決したように瀬に突入しました。 
雪解け水が白く泡立つ瀬をカルガモが下って行きます。 
映像をよく見直すと、川下りというよりも、激流の勢いに押されながらほとんど脚を使って駆け下りていました。 
流れが穏やかになるとカルガモが浮かぶぐらいの水深になりました。 
つかの間の急流下りを成し遂げたカルガモは得意げに(?)尾羽根を左右に振り振りしてから、川面をスイスイと下流へ泳ぎ去りました。 

鴨のこんな行動は初見です。 
カヌーの川下りを連想しました。
川岸に立つ私を警戒して移動しただけというよりも、ついでに瀬でちょっとしたスリルを楽しんでいるような気もします(一種の川遊び?) 
実は撮影直前に私が堤防路を歩いて近づくと、別個体のカルガモは警戒して下流へ飛び立ち、短い瀬の部分を飛び越えて橋の下へ着水しました。(映像なし) 
取り残された個体が瀬を下ったのです。
カルガモが選択する逃避行動にも個性が出るようです。

【追記】
春になって現場を再訪すると、この人工的な瀬はアユなどの川魚が遡上できるような魚道になっていることが分かりました。
川幅を区切って階段状になっていたり、コンクリートのスロープになっていたり、岩を敷き詰めた区画があったりと、バリエーションに富んでいます。
今回のカルガモは、スロープに岩を敷き詰めた左岸寄りの区画を下っていました。







2022/06/07

鉄柵の上を一列で渡り歩く雪国のニホンザル

 

2022年1月上旬・午前10:40頃・晴れ

前回の記事:▶ 雪深いリンゴ園で遊ぶ野生ニホンザルの群れ

山麓を流れる用水路の両岸にはヒトの落下事故を防ぐために鉄柵が設置されています。 
柵のてっぺんは鉄パイプの手摺になっていて、そこを野生ニホンザルMacaca fuscata fuscata)の群れが一列縦隊で続々と遊動していました。 
二足歩行のヒトは細い平均台の上を渡るのに訓練が必要ですが、身軽で四足歩行のニホンザルにとっては朝飯前です。 
脚の毛皮が雪まみれということは、雪原をラッセルして来たばかりと思われます。 
深雪の中をラッセルして遊動するよりも、高所に露出した手摺の上を渡り歩く方が体力の消耗も少なくて楽ちんなのでしょう。 
しかし真冬に金属製の手摺(鉄棒)に手足をペタペタ付けて歩くのは、体温が奪われていかにも冷たそうです。 

この冬に生まれたばかりの赤ん坊は、母猿の腹にしっかり抱きつくか(抱っこ)、母猿の腰に乗るか(おんぶ)して運ばれて行きます。 
それよりも成長した(乳離れした)若い子ザルは単独で自由に歩きます。 

手摺の途中で座り込んで一休みする個体もいます。 
細い一本道(一本橋)なので、前が塞がれると後続の個体は困ってしまいますが、鉄柵を少し降りて追い越そうとしていました。 

手摺に座り、熟したリンゴの果実を丸ごと食べている母親がいました。 
おそらく近くのリンゴ園で雪の下から落果を掘り出してきたのでしょう。 
後続の個体に急かされ、食べかけのリンゴを口に咥えたまま手摺の上を歩き始めました。 

アルビノ(白化変異?)の若い個体が単独で手摺の上を渡り歩いていました。 

首輪を装着した個体(♀?成獣)も1頭通りかかりました。 
首輪の黒い小箱にはGPSや追跡用の電波発信器が入っているのでしょう。 

最後に登場した個体は天の邪鬼のようで、用水路の対岸にある鉄柵の手摺をなぜか逆行していました。 
手摺の奥の雪面に降りる際、股間に白い睾丸が見えたので若い♂と判明。 

野生ニホンザルは個性豊かな集団で、見ていて飽きません。

※ 遠くで鳴く猿の声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。






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