2016年6月上旬
山麓の農村部の民家の花壇に咲いたキリンソウの群落で、オオマルハナバチにベイツ型擬態したハナアブが訪花していました。
花粉や花蜜を舐めています。
手元にある図鑑『札幌の昆虫』p214-215でマルハナバチに擬態するハナアブの仲間を調べてみると、素人目にはトゲミケハラブトハナアブ♀(Mallota tricolor)が一番似ています。
一方、「ハナアブの世界」サイトに掲載された標本写真を見比べると、マツムラハラブトハナアブ♀(Mallota rubripes)が一番似ている気がします。
今回は採集できなかったので標本はありませんが、もし間違っていたらご指摘願います。
ハラブトハナアブ属の一種(Mallota sp.)としておいた方が無難でしょうか。
▼関連記事(4年後の撮影)
今回のハナアブは大型ですから、確かに優れたベーツ擬態になっています。
アブの仲間で擬態のうまさを網羅的に比較した研究では、アブの体サイズが小さいほど擬態が不完全になっていく傾向が見出されました。天敵はどちらかというと体の大きなアブを狙います。体が大きい分だけエサとしての栄養分が多く含まれているからです。そのため、体の大きなアブはできるだけ蜂に姿を似せて天敵からの攻撃を未然に回避する必要があります。一方で、体の小さなアブはそもそも天敵からの攻撃をそれほど受けないので、ハチに似せていく方向に働く圧力がそこまで強く生じません。天敵にしてみれば、エサの候補となりにくい小さい種類はアブであろうがハチであろうがどちらでも構わないため、そもそも識別しようとしないのです。この研究は、天敵からの圧力が弱い種類ほど不完全な擬態が維持されやすいことを示唆しています。 (p218より引用)