2012/01/17

ニホンリスが森を走る



2011年12月中旬

杉林の斜面をチョロチョロ動く小動物を発見。
急いでカメラを構えズームしてみるとニホンリスSciurus lisでした。
杉の木の根元に静止していたリスが幹を登り始めました。
…と思いきや、すぐに下りて斜面を駆け上がりました。
あっと言う間に藪へ姿を消しました。
現場では割りとじっくり見れたという体感でしたが、映像を見直すと一瞬の出会いですね。
嬉しくて時の流れが少し遅く感じたという奴です。

ここは2010年夏に樹上でニホンリスを目撃した地点から少し登った場所です。
いつか営巣行動を観察してみたいものです。



2012/01/16

ウスバフユシャクの一種♀を見つけた!(無翅の冬尺蛾)



2011年12月中旬・気温10℃

山中の建物で白壁に止まっている冬尺蛾♀を発見。
日当たりの良い西面で、地上150cmの位置でした。
完全な無翅型を見つけたのは初めて。
翅の痕跡すら残っていません。
腹端に毛束があり、夕刻になると♂を誘う性フェロモンを放出する(コーリング)そうです。

虫我像掲示板にて質問したところ、ウスバフユシャクの一種Inurois sp.)♀で産卵前の個体とご教示頂きました。
有翅♂と交尾中の現場を押さえないと、♀を同定するのは難しいようです。
「産卵前は縦長でもこもこしてますが産卵後はお腹がへこみ、全体が丸くなります」とのこと。

軽く触れたら壁を登り始めました。
壁面がツルツルしていていかにも登り難そう。
案の定、動画撮影中に滑落。
地面で姿を見失ってしまいました。

冬尺蛾の交尾を未だ見たことが無いのですけど、一般に暗くなってから行われるらしい。
近くで見つけた冬尺蛾♂(同種なのか不明)と一緒に捕獲して求愛交尾行動を観察できないかと思案していたので残念。
この♀だけでも採集できれば、飼育下で産卵行動を観察できたかもしれません。


いずれにせよ、この白壁に止まったままでは仮に♂と交尾出来ても食草と異なる無機質な壁面に産卵することになり、孵化した幼虫が困ることになります。


【参考文献】(掲示板で教えてもらった冬尺蛾の総説)
「冬に出現する尺蛾 : 新・フユシャク類の採集」
やどりが (152), 2-28, 1993-02-25
全文PDFが無料ダウンロードできます。)



2012/01/15

野生ニホンカモシカの反芻行動



2011年12月上旬・気温9℃
野生ニホンカモシカを追う:後編

映像冒頭でカモシカが立ち止まってこちらに尻を向け、立木に顔を擦り付けています。
縄張り宣言の眼下腺マーキングと思われます。
こちらに向き直り鼻孔を広げて風の匂いを嗅いでいます。
(このとき鼻水が垂れました。)
少し歩くと腰を下ろして地面に座り込みました(座位休息)。
横目で油断無くこちらの様子を窺っています。

座ったまま、先程食べた食事の反芻を始めました。
手前の潅木が邪魔で肝心の口元が初めはよく見えません。
下草を採食していた可能性もあります。

もぐもぐ顎を動かしつつ、ときどき耳を動かしたり首を振ったりして、顔に五月蝿くたかる虫を追い払っています。
近くの林道を下から車が徐行して登って来ました(@動画7:35)。
その間、カモシカは反芻を止め車の音に耳をそばだてました。
ここは林道から死角になっています。
静けさが戻るとカモシカはリラックスして眠そうに反芻を再開。

観察し易い撮影アングルを求めて少しだけ接近しました。
カモシカは座ったまま顔だけこちらに向けています。
やがて警戒が解けると横向きで反芻を続けます。
瞼が重くなり目がトロンとして眠そうです。
うたた寝しているのかもしれません。

約30分間の反芻行動の末に、カモシカがゆっくりと立ち上がりました。
首を曲げて右脇腹を舐めています(掻いている?)。
ゆっくり堂々と藪の奥に歩き去りました。


夢中で長々と動画を撮りましたが至福の時間でした。
野生動物がこれほど警戒を解いてくれたことに驚きです。
(野鳥観察よりずっと楽だと感じました。)
カモシカは好奇心が強い動物と言われています。
付かず離れず静かに追跡する私の姿がカモシカから常に丸見えだったことが逆に安心感を与えていたのかもしれません。

これ以上は深追いせず、観察を終了しました。
荷物を背負ったまま足場の悪い急斜面を追跡し、手持ちカメラで長時間(昼過ぎに発見してから丸一時間)息を殺して撮り続けたので、腕や腰の筋肉がヘトヘトです。
カメラの手ブレ補正もなぜか誤作動を始める始末。
私の集中力も限界でした。
せめて一脚を持参していれば少しは楽だったかも。
特別天然記念物の野生ニホンカモシカと濃密な時間を過ごせた幸運に感謝して、満ち足りた気分で下山しました。
今思うと、カモシカが座っていた場所まで行って糞や角研ぎ、マーキングなどの痕跡を探してみても面白かったかもしれません。


カモシカの反芻行動を実際に見たのは初めて。
『科学のアルバム:ニホンカモシカ』p45によると、
腹がいっぱいになったカモシカは、見晴らしの良い大きな岩や倒木の上に登って、食べたものを反芻します。カモシカは、ウシと同じように胃が四つの部分に別れており、食べたものを反芻するのです。反芻は、食べたものの量と質にもよりますが、二時間から、それ以上かけてします。
(下線部は今回の観察と異なる点。)


三部作シリーズ完。




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