2021年8月下旬・午後14:25頃・晴れ
里山の尾根道に残されたホンドタヌキ(Nyctereutes viverrinus)の溜め糞を観察していたら、糞塊の近くで見慣れないアブが思わせぶりに居座っていました。
溜め糞でよく見かけるベッコウバエではなく、初見の種類です。
帰宅してから調べてみると、どうやらミズアブ科のキイロコウカアブ(Ptecticus aurifer)らしい。
溜め糞そのものには一度も着陸せず、近くの木の葉に止まります。
飛び立ってもすぐに同じ葉または近くの別な木の葉に舞い戻りました。
止まる植物の種類にこだわりは無いようです。
溜め糞に集まる昆虫を狙う捕食性のアブなのか、あるいは♂が縄張りを張って♀を待ち伏せしているのだろうと予想しました。
キイロコウカアブは湿地や便池 でよく見られるらしいので、♀はおそらくタヌキの溜め糞に産卵しに来るのでしょう。
腹部に横縞模様があるらしいのですが、止まっているときは翅を閉じているため隠れて見えません。
飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:35〜)
羽ばたいた際に、腹部背面の黒い横縞模様がしっかり見えました!
ラストシーンでは離陸直後に急速左旋回しています。
コウカアブの仲間は複眼の形状では性別を見分けられないのかな?
行動から、この個体は♀を待ち伏せする♂と言い切って大丈夫でしょうか。
残念ながら交尾シーンは見ていません。
キイロコウカアブについてネット検索していたら、面白そうな論文を見つけました。
櫻庭知帆, 小林秀司, and 髙﨑浩幸. "キイロコウカアブはニホンアナグマを対象とした自動撮影カメラの設置適地を教えてくれる." Naturalistae 20 (2016): 57-60.
巣穴周辺の定期的な観察から,キイロコウカアブがアナグマの新鮮な糞のにおいに反応し,巣穴の入口付近や溜め糞に,オスが繁殖縄張りを形成することがわかった. すなわち,「入口周辺にキイロコウカアブが飛び回る巣穴は、高確率でアナグマが利用中である」と判断できる.付近にトレイルカメラを設置することによって,キイロコウカアブの成虫期には効率的なアナグマの調査が可能となる.(和文要約より引用)アナグマだけでなく、どうやらタヌキの溜め糞にもキイロコウカアブ♂が縄張りを形成するようです。
私も実際にこの溜め糞に狙いを定めてトレイルカメラを設置したところ、見事にタヌキの脱糞シーンを動画で記録することに成功しました。
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