2021/10/15

獣糞で吸い戻し中のキバネセセリ♂の翅に寄生蜂が産卵?!

前回の記事:タヌキの溜め糞にオシッコをかけて吸い戻しをするキバネセセリ♂
2021年7月中旬・午後15:30頃・晴れ 

山道に残されたホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の溜め糞で吸い戻しを繰り返すキバネセセリ♂(Bibasis aqulina chrysaeglia)の動画を撮っていたら、興味深い瞬間がたまたま撮れていました。 
メタリックに輝く微小の蜂(種名不詳)が飛来して、キバネセセリ♂の閉じた左前翅の裏面にぶつかってきたのです。 
なんとも思わせぶりな行動をまずは1/10倍速のスローモーションでご覧ください。 
直後に等倍速でリプレイ。 
これは偶然のうっかり衝突事故ではありません。 
なぜなら、ぶつかる直前に蜂はキバネセセリの翅の手前でホバリング(停空飛行)して狙いを定めていたからです。 
蜂はチョウの左前翅の裏面にほんの一瞬着陸しただけで、すぐに飛び去りました。 

寄生蜂♀が寄主に産卵したのではないかと私は疑いました。 
しかし勉強不足の私は、チョウの成虫に寄生する蜂を知りません。(見たことも聞いたこともありません。) 
成虫の寿命が長い種類のチョウに産卵しないと、寄生蜂は次世代を残せないでしょう。
また、寄生蜂がチョウに産卵するのなら、寄主の胴体に産卵しそうなものです。 
寄主の翅の表面に産卵したら、よほど強力な接着剤で卵を固定しない限り、激しく羽ばたく際に振り落とされてしまうでしょう。 
卵から孵化した寄生蜂の幼虫は自力で這って寄主の翅裏から移動し、栄養豊富な胴体に食いつくのかな? 
あるいは寄生蜂♀は一瞬の早業で産卵管を寄主に突き刺して翅の組織の内部に卵を産みつけたのかもしれません。(体内寄生)
いくら目を凝らして映像を見直しても、蜂が飛び去った後のキバネセセリ♂の翅の表面に微小な卵は見つけられませんでした。(鱗粉のサイズよりも小さいのであれば、肉眼で見るのは不可能です。)

果たしてこんな奇妙な寄生蜂がいるのかどうか、何か情報をお持ちの方がいらっしゃいましたらお知らせ下さい。 
動画撮影中の私は現場でこの出来事に全く気づかなかったので、残念ながら問題のキバネセセリ♂を採集・飼育できていません。 

次の一手としては、山中でキバネセセリを大量に採集して室内飼育し、寄生蜂が羽化してくるかどうか調べるのが正攻法でしょう。
想像しただけでも大変そうで気が遠くなりますけど、だからこそ今まで誰も調べなかったのかもしれません。
そもそも私はフィールドでキバネセセリを滅多に見かけません。

それともやっぱり、ただの偶然の衝突事故ですかね? 


【追記】
1月後に標高は違うものの同じ里山で別な溜め糞でも見かけました。
このときはキバネセセリとは無関係で、獣糞に(又は獣糞内のハエの卵や幼虫?)産卵しているようでした。
関連記事 ▶ タヌキの溜め糞に来た謎の微小な寄生蜂?【名前を教えて】



【追記2】 

翌年、タヌキの溜め糞を注意深く見て回ると、メタリックに輝く微小のハエを見つけました。

翅紋を誇示しながら林床で身繕いするハネフリバエ科Euxesta属の一種

ハネフリバエ科Euxesta属の一種がタヌキの糞を舐め、肉食性ハネカクシ類から逃げ回る

ただし、体型が違うので別種かもしれません。

この記事の映像に写っているのも、蜂ではなくハエの可能性が高そうです。



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