2019年8月下旬・午前10:45頃・晴れ
河川敷の一角に苔の大群落が広がっていて、そこでノシメトンボ♀♂(Sympetrum infuscatum)の連結ペアが多数集まり、低く飛びながら産卵していました。
前日の晩に久しぶりの雨が降ったのに、河川敷に水溜まりはできていませんでした。
連日の酷暑で、よほど地面が乾いていたのでしょう。
私は苔について勉強不足なのですが、ノシメトンボが卵を産んでいたのはスギゴケですかね?
もし間違っていたらご指摘願います。
ふわふわしたコケの表面に触れてみたら、それほど湿り気を感じませんでした。
この日の天気は秋晴れで(秋の空)、風も適度に吹いて過ごしやすい撮影日和でした。
240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@1:10〜)
スローモーションを見て分かったのですが、♀が腹端で苔の表面を打つ産卵法ではありませんでした。
空中で♀が腹端から白い卵をパラパラと放出していました。
ノシメトンボの産卵法は、連結打空産卵です。
打空産卵:Non-contact flying oviposition
例:ナツアカネ
生殖弁による産卵のなかには空中で腹端を振るだけで産卵する「打空産卵」も行われています。その多くは水面上ではなく、岸近くの草原や湿原の上で行う産卵です。卵はやがて雨で流されて徐々に水中に達して孵化します。(『トンボのすべて』p85より引用)
ノシメトンボの産卵法について保育社『原色日本昆虫生態図鑑IIトンボ編』(1969年)という50年前の古い図鑑で調べると、
一般的には開放的な水面に♂♀が連なって産卵するが、時として池畔の雑草の上などにも、水面ですると同じように尾端を打って産卵行動をすることが観察されている。(p185より引用)
最新のトンボ図鑑では打空産卵が定説になっています。
誰がいつ真相に気づいたのか? どうやって定説を覆し学会を説得したのか? という科学史に私は興味があります。
産卵中に決定的瞬間の証拠写真が偶然撮れたのですかね?
1枚の写真だけでは白い点のような卵が空中に写っていても、にわかには信じてもらえない気がします。
その点、素人でもハイスピード動画が手軽に撮れるようになった現代では一目瞭然で、説得力がまるで違います。(百聞は一見に如かず)
それとも、ノシメトンボ♀の産卵弁の構造を解剖学的に検討すれば打水産卵ではなく打空産卵と正しく推測できるのでしょうか?
過去に私がノシメトンボの産卵を観察したのは全て田んぼの稲穂の上でした。
秋の田んぼは水が抜かれていて、まるで湿地のようです。
本種は水のある場所には産卵しないとのことで、納得しました。
▼関連記事
・ノシメトンボの連結打空産卵 (5年前の撮影@田んぼの稲穂の上)
・ノシメトンボ♀♂の交尾と連結打空産卵 (3年前の撮影@田んぼの稲穂の上)
つづく→連結打空産卵中にほとんど羽ばたかないノシメトンボ♀の事例【ハイスピード動画】
【追記】
一年後に同じ河川敷の少し離れた別の場所で、ノシメトンボが変わった産卵法をしていました。
50年以上前の古い図鑑『原色日本昆虫生態図鑑IIトンボ編』(1969年)の記述が間違っていないことが分かりました。
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