2018/01/22

コンクリート壁に集まるオオナミザトウムシ?の群れ 【その3】



2016年10月下旬・午後15:27〜15:57
▼前回の記事
コンクリート壁に集まるオオナミザトウムシ?の群れ 【その2】


コンクリート壁面に3匹で集合していた、おそらくオオナミザトウムシNelima genufusca)と思われる第2群のうち1匹(小型の♂?d)が群れを離脱して移動を始めました。
右側の第2および第4歩脚が根元から欠損した個体です。(-R2,4)

壁面をいったん右に移動してから下に向かい、地面に到達すると砂利の上で静止。
その間、コンクリート壁面では2匹efが静止したまま居残っています。


e,f


もしこの集合が配偶行動なら、ライバル♂に対して劣位の♂が諦めて♀から離れたのか?と解釈するのですが、ザトウムシのことをよく知らない私にはなんだかよく分かりません。
そもそも、♀を巡って♂同士の争いがあったようには見えませんでした。

少し目を離した隙に、いつのまにか♂?d-R2,4が壁面に戻っていました。
幸い、カラーペンなどでマーキングを施さなくても歩脚の欠損具合から個体識別が可能です。
地上から高さ80cmのところにあるコンクリートの庇に逆さまにぶら下がった体勢で縦溝を乗り越えました。
一休みしてから、更に壁面を右へ右へと移動を続けます。
立ち止まっているときも長い歩脚で辺りを探っています。

しばらくすると、いつの間にかコンクリート壁を登り切り、上の資材置き場を歩き回っていました。
雪囲い用に保管された丸太の上を徘徊し、木造家屋の板壁を登り始めました。

一匹狼の個体♂?d-R2,4がこの後どこに行ったのか、残念ながら見届けていません。
集団越冬に適した場所を探しているのだとしたら、軒下の隙間などを調べたのかもしれません。

それにしても、恐ろしく長い歩脚による滑らかな走破能力は見ていて惚れ惚れしますね。
複数の歩脚が同時に欠損しても支障なく歩行(移動運動)を続けられる冗長性が素晴らしいです。
次世代の惑星探査ロボットは、車輪やキャタピラを移動手段とするのではなく、ザトウムシ型の八足歩行ロボットにしてはどうでしょう?

つづく→その4




【追記】
今回注目した個体は、特に長い第2歩脚の右側を根元から欠損しているのに支障なく歩行運動できたことが興味深いです。
昆虫で言えば、触角の片方を失った状態です。

ザトウムシは昆虫のように触角をもっておらず、歩行器官である歩脚、特に前から2番目の一対を触覚センサとして用いることでその行動を可能にしているとされている。」
門脇廉; 野原拓也; 菊地吉郎. 221 ザトウムシのセンサとしての歩脚 (OS3-3: 生物遊泳・飛翔とバイオミメティクス (3), OS3: 生物遊泳・飛翔とバイオミメティクス). In: バイオエンジニアリング講演会講演論文集 2007.20. 一般社団法人 日本機械学会, 2008. p. 279-280.

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