2014年5月下旬
里山の山道を歩いていると、飛んで来た異形の虫が葉の上に着陸しました。
変な虫だと思ったのは、2匹のハエが尾繋がりの状態で連結飛行していたからでした。
このハエ(ではなくてアブ、下記参照)は互いに逆を向いた姿勢で交尾しています。
連結したまま葉上を歩き回ります。
ハエの交尾といえば♂が♀の背後からマウントする体位だと思い込んでいたので、反向型交尾のハエを初めて見て衝撃を受けました。
(ケバエの仲間やシオヤアブの交尾では互いに逆向きに連結します。)
何らかの理由でマウントが外れて(♀に振り落とされて?)変な体位になったにしては、腹端が捻れている様子もありません。
これが本種の自然な体位なのでしょう。
マウント型で交尾する種類と反向型交尾する種類は交尾器の形状がきっと違うはずですよね。
とてもカラフルなお似合いのカップルで、頭部の色が性的二型です。
下の個体は複眼が発達しており♂と分かります。
上の♀は頭部が赤く、小さな複眼は薄青色。
翅は根本が褐色である他はうっすらと黒色です。
撮影中にお邪魔虫のクロアリが近づき、カップルは連結したまま飛んで逃げてしまいました。
採集できず残念…。
いつもお世話になっている「一寸のハエにも五分の大和魂・改」掲示板に投稿して問い合わせたところ、アノニモミイアさんより以下の回答を頂きました。
画像の双翅類はいわゆるハエ(環縫類)ではなく,アブの仲間です。シギアブ科のArthroceras rubrifrons Nagatomi, 1966 に相当する種です。なお,Arthroceras japonicum Nagatomi, 1954 という種が記載されています。A. rubrifronsはjaponicumとは色彩上の相違だけで,多分japonicum の亜種程度のものと思います(原公表(原記載)でもその可能性が示されています)。今回の画像からすると,雌の頭部が赤橙色ですので,rubrifrons に相当するものです。A. rubrifrons は東京から記載された種で,おそらく本州北部では♀の頭部がこのような赤橙色になるのでしょう。現在,rubrifronsをjaponicumの亜種にした取扱はないと思いますので,画像のシギアブは現行の分類ではArthroceras rubrifrons Nagatomiでいいでしょう。
和名は多分ないかと思います。もしつけるとすれば,ズアカフシツノシギアブというところでしょうか。Arthrocerasはarthro=節,ceras=触角(角)の合成語ですし,ruburifronsはrubri=赤色,frons=前額 です。
Arthroceras属の入るシギアブ科は成虫の形態から判断するとムシヒキアブよりかなり原始的なアブでして,当然のことながら雌雄は頭部を反対に向けて交尾をします。
本種についてさらに知りたい場合は,確かネット上で公開されている,Pacific Insects のvol. 8, no. 1, pp. 43-60 を参照すれば,Nagatomi, A., 1966. The Arthroceras of the world (Diptera: Rhagionidae) という論文が見れます。綺麗な(自画自賛?)着色図もあります。
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