2012年8月下旬
尾根道横の広場(裸地)にオオシロフクモバチ♀(Episyron arrogans)が林縁から獲物を曳いて来ました。
狩った獲物はジョロウグモ♀のようです。
麻酔したクモの歩脚の根元を咥え、後ろ向きに歩いて運ぶと、予め掘りかけた巣坑へ辿り着きました。
巣口はイネ科の草の横に開口していました。
蜂はこの草を目印として記憶しているような印象。
蜂は巣坑に前から入り、中から後方に土を掻き出します。
巣口の後ろに捨てた土砂がスロープをなしています。
ようやく独房が完成すると、クモを搬入します。
獲物は後部から巣内に引き込みました。
ジョロウグモの長い歩脚が完全に巣坑内に消えるまでしばらくかかりました。
つづく産卵シーンはカメラの操作ミスで撮り損ねてしまいました。
貯食および産卵を済ませると巣坑の閉鎖を始めます。
巣穴に後ろ向きで入った蜂が、巣口手前のスロープから土砂を中に脚で掻き入れます。
整地のため腹端を高速で激しく上下させて埋め固めます。
高速埋め固めをハイスピード動画に撮ろうとしたのですが、上手くいきませんでした。
スロープの土砂を使い切り、別の穴を掘り始めました。
その土砂を後方に掻き出し、巣坑の埋め戻しに使います。
徘徊しながら営巣地周辺を念入りに整地します。
ぱっと見ではどこに巣穴があったのか分からなくなりました。
偽装工作を終えた蜂は不意に飛び立つと、もう戻って来ませんでした。
営巣完了です。
この営巣地で特筆すべきは、蜂を悩ませるアリや寄生ハエなどの天敵・寄生者の姿を一切見なかったことです。
そのおかげで蜂も落ち着いてスムーズに貯食することができました。
営巣地の選定がいかに重要か分かります。
巣坑の発掘と貯食物の採集
今回は直ちに巣穴を発掘することにしました。
まず巣口の横に溝を掘ってから、巣坑に向かって少しずつ掘り進めます。
小石だらけの固い地質で苦労しました。
独房の深さは地下約2cmと意外に浅い所にありました。
地中の石に阻まれて、蜂もそれ以上深く掘れなかったのでしょうか。
冬季は大雪に埋もれるはずなのに、凍土になってもオオシロフクモバチの前蛹は凍死せずに越冬できるのか心配になりました。
(てっきり越冬世代のための巣かと思ったのですが、もしかすると今年中にぎりぎり羽化する世代の巣かもしれません。)
貯食物は先ほど独房に搬入したばかりのジョロウグモ♀一匹だけでした。
クモは完全に麻痺しており、腹部下面に白く細長い蜂の卵(長径2.5mm)が付着していました。
オオシロフクモバチ♀は造網性のクモであれば獲物を選り好みしないらしい。
前回の観察ではサツマノミダマシ♀を獲物としていました。
採集したジョロウグモ♀をミニタッパ容器に入れて持ち帰りました。
帰宅後、容器から取り出す際にうっかり蜂の卵がこぼれ落ちてしまいました。
卵に粘着性が無く、ころころと転がります。
水で湿らせた絵筆でなんとか卵を拾い上げたものの、今度はクモの体表にうまく付着してくれません。
初めての作業に手こずり、ようやくクモの腹部腹面に戻したときには大切な卵が潰れてしまいました…無念。
冷静に考えれば、卵から幼虫が孵化するのを待ってから獲物の体に移してあげればよかったですね。
蜂の子を飼育して発育過程を観察したかったのに残念でした。
今回の教訓としては、小さな飼育容器をフィールドに持ち歩くべきですね。
採集現場で貯食物を直接、飼育容器に入れれば無駄な手間が省けたはずです。
それでもオオシロフクモバチ♀の営巣行動は狩りを除いて全て見届けることができたのは2012年の大きな収穫です。
蜂が巣坑内に獲物を引き込む |
営巣完了後に巣穴を発掘 |
獲物のクモは独房内で仰向けに置かれていた。 |
発掘・採集直後 |
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