2012/04/28

タケカレハ幼虫に寄生したヤドリバエ科の一種

タケカレハの飼育記録

2012年1月上旬

飼っていた二匹のタケカレハEuthrix albomaculata directa幼虫のうちで体長の小さな方の個体bで、背中に白い米粒のような瘤が見つかりました。
腫瘍なのか、あるいは何者かに体内寄生されているのかと案じていると…。






2012年3月下旬
11月下旬に採集して以来、幼虫bは2回脱皮してから成長がぱったり止まりました。
脱皮前の眠でもないのに食欲が落ち、日に日に活動も鈍くなりました。







久しぶりに飼育容器の様子を見ると、止まり木から力なく垂れ下がったまま死んでいました。
死後数日が経過していたようで全身が黒ずんでいました。
予想通り内部寄生されていたようで、容器の底には捕食寄生者ヤドリバエ科のものと思われる囲蛹が3個転がっていました。
体内で育ったヤドリバエの幼虫(蛆)が寄主(タケカレハ幼虫)のクチクラを食い破って脱出したようです。
自然界では地中に潜って蛹化するのだろうか?
囲蛹だけを密閉容器に隔離して更に様子を見ていると…。


2012年4月上旬・室温16℃

囲蛹を発見してから11日後の朝、気づくとヤドリバエの成虫が一匹羽化していました。
残念ながら囲蛹を抜けだし翅を伸ばす様子は見逃してしまいました。


3個の囲蛹のうち1個から成虫が羽化。中央の囲蛹は蛹化異常。



左翅の翅脈






顔。左右の複眼の間が大きく離れていることから♀

側面

口吻を伸ばして床を舐める





羽化当日および翌日のヤドリバエ成虫♀を接写した動画です。



身繕いしたり容器の壁面を舐めたりしています。

残る一個の囲蛹からはなぜか未だに羽化して来ません。
変態に失敗したのだろうか?

(シリーズ完)


【追記】
いつもお世話になっている「一寸のハエにも五分の大和魂」掲示板にて問い合わせたところ、以下の回答を頂きました。


Shima(2006) A Host-Parasite Catalog of Tachinidae (Diptera) of Japanによれば,タケカレハEuthrix albomaculataを寄主とするヤドリバエは次の3種が報告されています.

Blepharipa sericariae カイコノウジバエ近縁種
Exorista japonica ブランコヤドリバエ
Pseudoperichaeta nigrolineata ハマキヤドリバエ

ここから消去法で行くと,
・apical scutellar bristlesが寝ているようなので,Pseudoperichaeta属ではない.
・fronsが突出していないので,Exorista属ではない.
と2属が消えます.

実際には,日本産ヤドリバエ科は800種ほどいるそうなので,先の寄主目録に記録されていないものも多数あると思います.

同定のために必要なアングルについては,下記のURLにあるヤドリバエ科の属の検索の図を見て頂ければ解るように,あらゆる角度からの精査が必要となり,写真による同定というのは現実的ではありません.
ヤドリバエの専門家であれば,写真から属レベルまでは絞り込めると思います(^_^;)

なお,上記URLの北米の属の検索キーは260番までですが,日本の場合549番まであります.


複眼と(ヤドリバエ科の)雌雄の関係については,オスでも複眼が離れている属があるので一概には区別出来ません.(当然,メスの方がより複眼間の幅が広くなります)
ヤドリバエの場合,殆どの属でオスでも多少なりとも複眼が離れています.
写真のヤドリバエの場合,かなり離れているのでメスと思われます.






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