2024/06/27

ニホンアナグマの古い巣穴付近を飛び回るキイロコウカアブ

 

2023年9月下旬・午後14:35頃・くもり 

ニホンアナグマMeles anakuma)の家族が転出した後も旧営巣地(セット)にトレイルカメラを設置して、しつこく監視しています。 
越冬のための巣穴として使うのか、秋になるとアナグマ♀がときどき戻ってきては古い巣穴を掘り返して整備しています。 

カメラの電池を交換するために現地入りすると、いつものように巣穴の入口付近をハエやアブの仲間(双翅目)がブンブン飛び回っていました。 
あまり気に留めてなかったのですが、興味深い文献を読みました。
櫻庭知帆; 小林秀司; 髙﨑浩幸. キイロコウカアブはニホンアナグマを対象とした自動撮影カメラの設置適地を教えてくれる. Naturalistae, 2016, 20: 57-60. 
A golden soldierfly, Ptecticus aurifer, hints suitable locations for automatic trail camera targeting Japanese badger (英語タイトル)
巣穴周辺の定期的な観察から,キイロコウカアブがアナグマの新鮮な糞のにおいに反応し,巣穴の入口付近や溜め糞に,オスが繁殖縄張りを形成することがわかった. すなわち,「入口周辺にキイロコウカアブが飛び回る巣穴は、高確率でアナグマが利用中である」と判断できる.付近にトレイルカメラを設置することによって,キイロコウカアブの成虫期には効率的なアナグマの調査が可能となる.(和文要約より引用)

アナグマの巣口R付近を飛び回る双翅目を同定するためにストロボを焚いて飛翔中の写真を何枚か撮ってみたら、確かにキイロコウカアブPtecticus aurifer)でした。 
巣口Rの横の細根に着陸して休む写真も撮れました。 

動画撮影に切り替えると、飛翔中のキイロコウカアブはアナグマの巣穴の奥に少し入ることもありましたが、中に着陸することはありませんでした。 
※ 鬱蒼とした二次林の中は昼間でもかなり薄暗いので、動画編集時に自動色調補正を施しています。 


キイロコウカアブの性別をどうやって見分けるのか私は知りません(他のハエやアブと同じく複眼の形状で性別判定して良いのか?)。
♂が縄張りを張って産卵のために集まってくる♀を待ち伏せしているのだそうです。 
ここまでは文献の通りでした。 

私がもっと早い時期に気づいていれば、ニホンアナグマの営巣地でもっと多数のキイロコウカアブが飛び回るシーンが撮れたかもしれません。 
アナグマ一家が巣穴に住んでいる時期(繁殖期)の方が転出後よりも集まってくるキイロコウカアブの数が多かったかどうか、記憶が定かではありません。 
私の嗅覚では、アナグマの営巣地が臭いと感じたことは全くありません。
キイロコウカアブが来ていれば、アナグマが暮らす現役の巣穴であることの指標になるかどうか、という点については個人的に保留にしておきます。 
(転出後の空き巣にもキイロコウカアブが誘引されていたからです。)

アナグマ関連の本を読むと、巣穴の横に溜め糞をすると書いてあることがあります。 
しかし私はそのような事例を一度もフィールドで見つけたことがなく、アナグマ専用の溜め糞場は営巣地からかなり離れた地点にあります。 
それから私の経験では、キイロコウカアブはアナグマの営巣地や溜め糞だけで見つかるのではなく、タヌキ専用の溜め糞場にも集まります。 

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巣口に止まって休むキイロコウカアブ
最近掘り返された巣口Lにアクセストレンチが形成されていた。
アナグマ営巣地の全景
2つの巣穴を別角度からも撮影

2024/06/26

旧営巣地に戻ってきて古い巣穴を掘り直す秋のニホンアナグマ♀:その2【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年10月上旬・午前3:45〜5:00頃・日の出時刻は午前5:35 

二次林の旧営巣地に単独で戻ってきたニホンアナグマ♀(Meles anakuma)が匂いを嗅ぎながら巣穴Rに入り、外に出てこなくなりました。 
左右の目の大きさが非対称(右目<左目)なので、ここで出産・育児した♀のようです。 

約15分後、アナグマ♀が巣口Rの拡張工事を始めました。 
頭から入巣Rすると、前脚で土砂を後方に掻き出しながら、巣穴Rから後退りして外に出てきます。 
その結果、トレイルカメラの方向にアクセストレンチが形成されます。 
かなり奥まで巣坑を掘り進めているようで、なかなか外に出てこなくなりました。

春の繁殖期には♀は育児に専念し、穴掘りの重労働はヘルパー♂に任せるという分業が成立していました。 
今回も穴を掘る個体の後ろ姿の股間に睾丸が見えたらヘルパー♂と分かるのですが、素人目には睾丸の有無がはっきりしません。
(無いと思うのですが、素人が「無い」と自信を持って言い切るのは難しいのです。) 
珍しく♀(右目<左目)が穴掘りしているとみなして、当面は話を進めます。 

監視カメラの起動が遅れたようで、アナグマ♀が出巣Rした瞬間を撮り損ねてしまいました。(@1:55〜) 
右奥の二次林にノソノソと入って行く後ろ姿が写っているだけです。 
林縁で立ち止まって身震いしてからセット(営巣地)に戻って来ました。 
勝手な想像ですが、もしかすると放尿(マーキング)したかもしれません。 

顔を正面から見たときに右目が左目よりも小さかったことから、やはり♀(右目<左目)でした。 
巣穴Rの穴掘り作業を再開しました。 

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。 


【追記】 
この営巣地で長年繁殖している♀は、早くも冬ごもりに備えて、旧営巣地の改修工事をしているようです。 
前回(14日前)には巣穴Lを、今回は巣穴Rを重点的に掘り直しました。 

幼獣の姿がありませんが、もう子別れしたのでしょうか? 
この時期(秋)に、♀とヘルパー♂(1歳仔)の関係がどうなっているのか、気になります。 
♀の子育てが一段落すると、ヘルパー♂はお払い箱になって追い出されてしまうのかもしれません。 
次世代のヘルパー♂が当歳仔の幼獣(4頭の兄弟姉妹)の中からどうやって選ばれるのでしょうか? 

リフォームしたからと言って、♀がそのまま巣穴Rに住み着く訳ではなく、またしばらく不在となります。 
一時的に使うシェルターに格下げされたのかもしれません。 
アナグマは縄張り内のあちこちに複数の巣穴を持っているはずですが、私はまだ別宅を突き止められていません。 
アナグマにGPSを装着して調べれば分かるはずですけど、罠をしかけたり麻酔銃を撃ったりするのは素人には無理なミッションです。 


クロツグミ♂の落ち葉めくりと縄張り争い@アナグマの旧営巣地【野鳥:トレイルカメラ】

 



2023年9月下旬〜10月中旬 

ニホンアナグマMeles anakuma)家族が転出した後の旧営巣地(セット)がある二次林に、秋になると真っ黒な鳥クロツグミ♂(Turdus cardis)が採食に通って来るようになりました。 


シーン0:9/25・午後14:04および14:32(@0:00〜) 
 明るい時間帯にたまたまフルカラーで撮れた現場の様子です。 
新旧2台の自動センサーカメラで隣接する2つの古い巣穴LR見張っています。 
巣材(寝床)として落ち葉を掻き集めるアナグマが居なくなったので、二次林の林床には多数の落ち葉が散乱したままになっています。 


シーン1:9/30・午前6:28(@0:08〜) 
小雨が降る早朝にクロツグミ♂と思われる黒い小鳥aが広場に現れました。 
落ち葉をめくって虫を探しています。 
 そこへ左から別個体のクロツグミ♂bがホッピングでやって来ました。 
相手aの存在に気づくと、bがいきなり襲いかかり、狩場を巡る縄張り争いが勃発しました!!
2羽は対峙して羽ばたきながら交互に地上から少し飛び上がります。 
喧嘩にどうやって決着がついたのか分かりませんが、互いに少し離れました。 
右に行った個体は羽繕いし、左の個体はピョンピョン跳んで二次林内に入りました。 

この間、闘争の鳴き声は雨音にかき消されて(?)聞き取れませんでした。 
キョキョキョキョ♪(またはチュンチュン♪)という鳴き声がかすかに聞こえますが、画面内の2羽が発しているのかどうか不明です。 
(周囲にいる野次馬の鳥の鳴き声かもしれません。) 
日本の野鳥さえずり・地鳴き図鑑』p51でクロツグミの鳴き声について調べると、 地鳴きは「キョキョキョ、チーなどと鳴く」と書いてありました。 


シーン2:10/10・午前6:54(@1:10〜) 
早朝の林内を小鳥が素早く飛び、林床を走り回って採食しています。 
真っ黒なクロツグミ♂が左から飛来し、アナグマの巣口Rの真上に伸びた細いマルバゴマギ灌木に止まりました。 
止まり木から地上に飛び降りると、巣口Rで落ち葉めくりを始めました。 


シーン3:10/11・午後17:05・気温15℃(@2:04〜)日の入り時刻は午後17:11。 
日没直前の薄暮に真っ黒なクロツグミ♂が落ち葉を嘴で弾き飛ばすようにめくりながら、アナグマの巣口Lにどんどん近づいています。 
後半はまるでトレイルカメラに気づいて警戒したかのように、物陰に隠れながらも落ち葉めくりを続けています。 
初めは2羽が一緒に来ていたのに、もう1羽は画角の右外に出てしまいました。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正(モノクロ化)を施しています。 
※ 鳴き声が聞き取れるように、音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


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