2021年12月上旬・午後12:15頃・晴れ
山麓に少し積もった雪の上で赤トンボの群れが点々と休んでいました。
初冬に雪が降ってもしばらくは生き残っているのです。
よく晴れているので、ザラメ雪の上で日光浴しているのでしょう。
根雪になる前の残雪から草がパッチ状に露出しているのに、赤トンボがわざわざ冷たい雪の上で休むのはなぜでしょう?
雪面からの反射も利用して体温を効率的に温めているのかな?(雪焼け)
雪上で翅を深く下げて休んでいる際も頭部をグリグリと動かして上空を油断なく見張っています。
雪面からときどき自発的に飛び立つものの、低空で短い距離を弱々しく飛ぶだけで、日向の雪面に止まり直します。
着陸直後の顔を正面から見ると口をモグモグさせているので、空中で何か小さな虫を捕食したのかもしれません。
アキアカネ(Sympetrum frequens)の♂が多く集まっているようなので、交尾相手の♀が飛来するのを待ち伏せしているのでしょうか?
なぜか雪面への着地に失敗して、仰向けにひっくり返ったまま暴れている個体をよく見かけました。
トンボは仰向けにひっくり返ると足が地面に届かないので、羽ばたく反動で起き上がるしかありません。
手助けしてやらなくても、やがて自力で起き上がりました。
雪面から飛び立つ瞬間を狙って、240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@2:25〜)
低温でも飛翔筋はなんとか正常に羽ばたいて飛べるのに、足がかじかんで上手く着地できないのかな?
飛び立ちよりもむしろ雪面への着陸シーンをハイスピード動画に撮りたいところですが、どこに着地するか予想できないのでは無理です。
寿命が近い老化とか低温障害の症状(低体温症)と考えられますが、実際にどれぐらい寒いのでしょう?
撮影後に気温や雪面の温度を測って記録したフィールドノートを紛失してしまいました。
晴れた日にザラメ雪の表面はトンボの複眼にはどう見えているのでしょうか?
光を乱反射して、雪面までの遠近感が分からなくなって着地に失敗するのかもしれません。
ある種のシャコやトンボにいたっては、数十種類のオプシンを持っているものがいます。彼らにはいったいどんな色が見えているのでしょうか。われわれには想像もつかないような極彩色の世界を見ているかもしれません。(松尾亮太『考えるナメクジ ―人間をしのぐ驚異の脳機能』p57より引用)
きちんと数えた訳ではありませんが、ここで生き残っているアキアカネは♂ばかりで♀が少ない印象です。(圧倒的な嫁不足)
着地に失敗した♀が雪面で暴れていても、周囲の♂が飛びかかって交尾を挑まないのは不思議です。
雪面に止まった1匹の♀個体を手掴みで易々と捕獲することができました。
胸部側面の黒条の先端が尖っているので、アキアカネ♀としっかり同定することが出来ました。
以下の写真は全てアキアカネ♀。