2012/12/02

ジガバチの営巣:獲物を狙うアリとの死闘(その1)



2012年8月下旬

いつものヤマジガバチ営巣地(尾根道の裸地@標高〜600m)で定点観察していると、狩りに成功したジガバチ♀が獲物を抱え意気揚々と帰ってきました。
毒針で狩られた獲物は褐色型のヨトウムシのようで、前回観察した獲物と同種と思われます(ヤガ科のキリガ亜科やヨトウガ亜科の幼虫?)。
ジガバチ♀は自分の体長よりも大きな獲物の頭部を前に向け腹合わせに跨り、芋虫の胸部辺りを咥え、地面を歩いて前進して運びます。※
狩りに出かける前に一時閉鎖した巣坑を探して裸地をうろうろと徘徊します。
ようやく探し当てると、獲物を近くの地面に置いたまま、戸締りを解除し始めました。

斜坑の閉塞石として小石の他に小枝なども詰め込んでありました。
これらを一つずつ取り出すと、わざわざ少し離れた場所まで歩いて捨てに行きます。
たまに飛んで捨てにいくこともありました。
作業の合間に獲物の状況を確認に戻ります。

ジガバチの天敵である寄生ハエ(シロオビギンガクヤドリニクバエ?♀)が登場し、獲物に止まりました。
獲物の点検に戻った蜂が、ハエとアリを追い払いました。
アリに襲われた芋虫は麻酔の効いていない腹端を弱々しく動かします。

蜂はジージー♪鳴きながらアリを追い立てるものの、次々にアリが現れ埒があきません。
堪りかねたように蜂が獲物を咥えて移動を始めました。
巣口から遠ざかるように逃げて行く蜂を2匹の寄生ハエ♀がピョンピョン飛び跳ねながら追いすがります。
蜂は辺りをぐるりと一周すると巣穴に戻りました。
巣坑に入って中を点検します。
その間、寄生ハエは獲物の上で待機。
遂に一匹のアリが芋虫を咥えて引っ張り始めました。

怒った蜂がすごい剣幕で追い払おうとしても、小さなアリは敏捷に逃げ惑い、しかも援軍が続々に現れるので手に負えません。
ジガバチは再び獲物を咥えて逃げ出しました。
運搬中に力んだときもジージー♪鳴いています。
いくら逃避行を繰り返してもアリの攻撃が止まず、寄生ハエ♀も振り切ることが出来ません。
巣口に戻ったところでアリを撃退するのに忙しく、巣坑を掘る暇もなくなりました。

敗色濃厚ですが、もし自分がジガバチ♀なら、このしつこい天敵にどう対処するだろう?と考えます。
ほとぼりが冷めるまでどこかに隠れてやり過ごすのでしょうか?
しかし弱肉強食の自然界に完全な正解や必勝法というものは存在しないのだと実感します。
以前ジガバチが巣穴を試掘するときからアリに邪魔されていたので、ここを営巣地に選定したのがそもそも致命的な間違いなのでしょう。

関連記事→「ジガバチ♀の穴掘りを邪魔するアリ

つづく→その2





獲物を抱えて逃げるジガバチを寄生ハエがぴったり追跡
【追記】
※ ジガバチは自分の重さの1〜8倍の鱗翅目の幼虫を運べるらしい。(『日本動物大百科10昆虫Ⅲ』p44より)

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