2024/11/23

ニホンアナグマの越冬用営巣地で年始に相互毛繕いするホンドタヌキのペア【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2023年12月下旬〜2024年1月上旬 


シーン0:12/27・午後14:17・くもり・気温15℃(@0:00〜) 
平地の落葉した二次林で越冬するニホンアナグマMeles anakuma)の巣穴を自動撮影カメラで見張っています。 
年末年始のホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の登場シーンをまとめました。 


シーン1:12/27・午後22:31・気温-2℃(@0:03〜) 
年末の晩にタヌキが単独で現れたものの、アナグマの巣穴には近寄らずに左へ立ち去りました。 
雪面は凍結(クラスト)しているようです。 


シーン2:1/2・午前5:05・気温-5℃(@0:14〜)日の出時刻は午前6:52。 
新年の未明に監視カメラが起動すると、暖冬でセット(アナグマの営巣地)の雪解けが進んでいました。 
夜明け前の雪面は凍結しています。 
左から来たタヌキaがアナグマの巣口Lを点検してから、カメラを見上げました。 
次に別個体のタヌキbが隣の巣穴Rからのんびり出てきたので驚きました! 
てっきりアナグマが巣内で越冬していると思っていたのですけど、不在なのでしょうか? 
冬のアナグマは眠そうでぼんやりしていますし、タヌキとの同居を寛容に許容しているのかもしれません。(同じ穴のむじな
もっとありそうな別の可能性として例えば、画面の手前(下)から来たタヌキbがアナグマの巣穴Rに入って点検するシーンを撮り損ねただけかもしれません。 
タヌキbは巣口Rで身震いしてタヌキaと合流すると、その場に座り込んで仲睦まじく相互毛繕いを始めました。 
きっと♀♂ペアなのでしょう。

実は2分後にもトレイルカメラが起動したのですが、何も写っていませんでした。(映像は割愛)
タヌキのペアが手前の死角に立ち去った直後のようです。


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。



痛々しく3本足で跛行するニホンザル♀の木登り能力

 

2023年12月中旬・午後15:05頃・くもり 

山麓の用水路に沿って2頭の野生ニホンザル♀♂(Macaca fuscata fuscata)が遊動してきました。 
発情した成獣♂が先行していますが、後続の若い♀個体に注目して下さい。 
鼻筋が白く通っていることから、「鼻白」と呼ぶことにします。 
先行する♂が谷に架けられた水路橋の手摺を渡っている間、鼻白♀は対岸で待機しています。 

しばらくすると、後続の鼻白♀も水路橋の手摺を伝い歩きし始めました。 
その足取りが明らかに異常です。 
どうやら右後足を負傷しているようで、痛む足の裏を着地しないようにかばって、他の3本足だけを使ってヒョコヒョコと跛行しています。 
初めはてっきり、ノイバラの棘などを足の裏でうっかり踏んでしまい、化膿した傷口が痛むのかと想像しました。 
しかし途中で立ち止まったときによく見ると、右後足の甲が赤黒く変色していました。 
逆側の健常な左足の色(あるいは健常個体♂の足の甲の色)と見比べてみて下さい。 
右足首を捻挫したのかもしれません。 
一体いつどこで右後足を負傷したのでしょうか? 
冒頭の登場シーンを見返すと、鼻白♀は水路沿いを正常に四足歩行をしていました。 
水路橋のたもとで怪我したのなら、悲鳴を上げたはずです。
足の裏に何か棘が刺さって痛むのなら、患部を気にして手当てするはずなのに、座ってるだけでした。 
どうやら痛みを我慢しながら水路橋まで4足歩行して来たようです。 

橋の手摺を伝ってどんどん近づいてきた鼻白♀は、谷の此岸で突っ立っている私を迂回するために、手摺から横の落葉高木(樹種不明)の枝へと身軽に飛び移りました。 
3本足でも見事な跳躍力です。 
そのままスルスルと木を下りました。 
木登り能力を注意深く見ると、樹上では痛みをこらえて4本足を使っていました。 
下向きになる木下り中は、後足にあまり負担がかからないのでしょう。 
野生のニホンザルで手足を怪我した個体をときどき見かけるのですが、木登り能力を確認できたのはこれが初めてです。 

地上に降りると、鼻白♀は負傷した右後足をかばって再び3本足で痛々しくヒョコヒョコと跛行し始めました。 
ときどき小声で哀れっぽく鳴いたのは、鼻白♀の鳴き声だと思います。 
(鼻白んで私とすれ違うときの不安や緊張の現れか?) 
その後も、遊動する群れの仲間と一緒にねぐらのスギ林に向かって休み休み跛行して行きます。 

地上および樹上での跛行を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@2:54〜)

2024/11/22

雪山でニホンカモシカが塒入りしてから立ち去るまで【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年12月下旬・午後15:39〜19:04・日の入り時刻は午後16:30 


シーン1:12/28・午後15:39・気温0℃(@0:00〜) 
雪山でスギの木の下に見つけたニホンカモシカCapricornis crispus)のねぐらをトレイルカメラで監視していると、夕方にカモシカが戻ってきました。 
角がほっそりしているということは、若い個体のようです。 
性別がどうしても見分けられませんでした。 

塒の周囲を歩き回った私の足跡にはあまり気にしていないようで一安心。 
カモシカはまず、塒の横に立つスギの幹の匂いを嗅ぎました。 
そこで縄張り宣言の匂い付け(眼下腺マーキング)をよくすることが後に判明しました。(映像公開予定) 
次に塒の踏み固められた雪面の匂いを嗅ぐと、身震いしました。 
左後脚の蹄を使って体の痒い部位(首の辺り? 耳の後ろ?)を器用に掻きました。
前足、後足の順に膝を折ると、塒の雪面にゆっくり座りました。 
右(斜面の谷側)を向いた体勢で、反芻を始めました。 
最後に咀嚼物を再び飲み込みました。 


シーン2:12/28・午後16:50・気温0℃(@2:00〜)日の入り時刻は午後16:30 
1時間10分後にカモシカが塒から立ち上がったときには、辺りは真っ暗になっていました。 
舌をペロペロ出し入れしながらカメラの方を向いていますが、監視カメラの存在にはまだ気づいていないのか、あるいは気にしていないようです。 

右前足を一歩前に出すと、甲や蹄の根元を舌で舐め始めました。 
ただの毛繕いというよりも、冷たい雪面で長時間座っていて足が痺れたのかもしれません。(凍傷やしもやけ予防の行動?) 
欠伸をしたのですが、吐いた息は白く見えませんでした。 

塒で180度方向転換すると、逆向きで座り直しました。 
今度は斜面の山側を向いて(顔はスギの幹の方を向けて)座りました。 
カメラに対して背を向けたので、気づかれる心配はなくなりました。 
座位のまま、首を曲げて右脇腹?を舐めています。 


シーン3:12/28・午後17:55・気温0℃(@4:00〜) 
約1時間寝た後にカモシカが立ち上がりました。 
カモシカが舌をペロペロと出し入れする舌舐めずりの行動が何の意味があるのか、いつも不思議に思います。(※ 追記参照) 

立ったままで反芻を開始。 
トレイルカメラの方を凝視していたのが目線を外して、斜面の谷側を眺めています。 


シーン4:12/28・午後17:58・気温(@6:00〜) 
やがてカモシカは塒の雪面に座り直しました。 
今度は右向きに戻り、斜面の谷側を向いています。 

暗闇でもずっと目を開いたままで反芻を続けています。 
夜の塒に座っていても、寝ないで覚醒状態のときがあると分かりました。 


シーン5:12/28・午後17:55・気温0℃(@8:00〜) 
1時間後に目を覚ましたカモシカが、塒で立ち上がりました。 
舌をペロペロ出し入れしてから、カメラ目線になりました。 
遂に移動を始めました。 
右へゆっくり歩き出し、雪山の緩斜面を谷側へ下りて行きます。 
縄張りをパトロールしながら採食に出かけたのでしょう。 

向かった先に溜め糞場sr2があるので、尿意(便意)を催して排泄に出かけたのかもしれません。 
長時間居座っていても、カモシカはねぐらでは決して排泄しませんでした。 

この日の夜は塒に戻って来ませんでした。
風もなく雪も降らず穏やかな天気で、気温は0℃のまま安定していました。 


【考察】
ねぐら入りしたニホンカモシカの行動を撮影するのが悲願だったので、ついに成就して感無量です。 
私の撮影スタイルは行きあたりばったりのことが多いのですが、このテーマは何年もかけて段階を踏んで準備して、狙って撮れたので達成感があります。 

トレイルカメラで2分間の動画を撮る設定にしましたが、瞼を閉じて寝る瞬間が撮れてない以上、睡眠のための塒とは言えないかもしれません。 
あくまでも、「座位休息しながら反芻するためのお気に入りの場所」かもしれません。 
しかし、トレイルカメラが動体検知できない休息時間が1時間×3回もあったことから、とりあえず塒で寝ていたことにします。

塒に座って寝ていたカモシカは定期的に(1時間毎)立ち上がって座る向きを変えていることが分かりました。 
(寝返りを打つことはありません。)
冷えきった脚を伸ばして血行を良くするためでしょう。 
寝起きのカモシカの体温が実際にどれぐらいなのか、サーモグラフィカメラで撮影・測定したら面白そうです。 
枯れ草などフワフワの断熱材(寝床)を敷いたりしないで冷たい雪面に直接座って寝るのはいかにも寒そうですし、お腹が冷えて反芻・消化にも影響しそうです。 
しかし、体毛や脂肪のおかげで意外と寒さを感じないのかもしれません。 

酒井仙吉『哺乳類誕生 乳の獲得と進化の謎 』と題した本(ブルーバックス)を読んで勉強になったのは、
哺乳類で効率的に進化した動物が偶蹄目で、かれらは草食性で反芻する特徴がある。(中略) 割れた蹄(偶蹄)であったことで山岳、砂漠、積雪地帯に進出できた。(中略)ニホンカモシカなどは山岳地帯に棲息し雪の上で眠る。(中略)なぜ寒さに強いかといえば、微生物が第一胃で草を分解するとき発生する熱を利用でき、非反芻動物と全く異なる発熱機構を有しているからである。 (p164-165より引用)

体内の発酵熱を利用しているとは驚きました。
反芻する草食動物よりも、キツネなど肉食性の強い動物の方が、雪山で暮らすのは大変そうです。




【追記】
ニホンカモシカの舌出し行動について。
まさかヘビの舌舐めずりのように、舌を使って空気中の匂い物質を鋤鼻器に送り込むための行動なのでしょうか?
ニホンカモシカにも解剖学的に鋤鼻器があり、フレーメン反応などに関わるそうです。
しかし、AI(Gemini1.5)に相談してみると、次の回答を得ました。
ニホンカモシカが舌をペロペロと出す行動は、ヘビのそれとは異なり、鋤鼻器に空気中の匂いを送り込むために行われているとは考えられていません。

なぜそう考えられるのか?

鋤鼻器の構造: ニホンカモシカの鋤鼻器は、ヘビのように口の中に大きく開口しているわけではなく、鼻腔の奥に位置しています。そのため、舌で直接鋤鼻器に空気を送り込むことは構造的に難しいと考えられます。
行動観察: ニホンカモシカの舌出し行動を観察しても、ヘビのように舌を細かく振動させたり、先端を鼻先に近づけたりするような行動は確認されていません。
納得しかけたのですが、下線部についてダブルチェックしてもソースが見つからなかったので、要注意です。(AIの回答ではありがち)
さらにGeminiはニホンカモシカの舌出し行動の目的について、諸説を挙げてくれたのですけど、今回の状況で当てはまりそうなものがほとんどありません。
その中でストレス反応説が気になりました。
もしかすると、赤外線による暗視映像撮影でもカモシカはトレイルカメラの存在に薄々気づいていて、不安の現れが舌出し行動なのかもしれません。
野生動物に全くストレスを与えずに観察したり隠し撮りすることは不可能ですが(観測問題)、監視カメラをもう少し塒から離れた位置に設置し直した方が良いかもしれません。




【追記2】
1985年に出版された羽田健三 監修『ニホンカモシカの生活』という本は単著ではなく、信州カモシカ生態研究グループが分担して様々なテーマについて執筆した本です。
『夜の行動』や『多雪下のカモシカ』と題した章が特に私の興味を引くのですが、トレイルカメラや暗視カメラという文明の利器が発明される前の時代に愚直な直接観察や人海戦術によってこれだけ解明できたということに驚嘆します。
その昔は、あの著名な動物写真家の宮崎学氏であっても「カモシカは夜間には活動しない」と考えていた時代があったそうで、意外でした。
カモシカが昼夜行性であると調査で明らかにするのも一苦労したそうです。
積雪2mという豪雪地帯の雪山でサーチライトと双眼鏡を使って徹夜の直接観察を行った記録は壮絶です。
野生動物を観察する上でトレイルカメラの発明(安価な販売)は本当に革命的で、私のような個人でも易々と撮影ができるようになったのは、つくづくありがたいことです。
雪山登山に必要なさまざまな装備(スノーシューなど)の発明や技術革新も含めて、「巨人の肩に乗る」を実感しています。



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