2025/07/17

初夏のリンゴ園でシロツメクサの葉を食べるニホンザルの群れ

 

2024年6月中旬・午前11:00頃・晴れ 

山麓でリンゴを栽培する果樹園に野生ニホンザルMacaca fuscata fuscata)の群れが侵入していました。 
なるべく気づかれないようにそっと近づいて観察すると、散開した群れは下草のシロツメクサをムシャムシャと採食していました。 

果樹園では、被覆植物(カバープランツ)や「コンパニオン・プランツ」としてシロツメクサを意図的に播種しているのだそうです。 
マメ科植物ですから、根粒菌による窒素固定を利用した土壌改良や肥沃度向上が期待できます。 



ニホンザルは、草食獣のように頭を下げて口で直接採食するのではなく、必ず手を使ってシロツメクサを口に運んでいます。 
地面に座り手を使って採食することで、目線をあまり下げずに済み(上半身を立てたまま)、危険な捕食者や外敵の接近をいち早く察知することができそうです。 

しかも、ニホンザルはシロツメクサの花は避けて、葉のついた茎だけを選んで次々と手でむしり取って食べていました。 (部位選択的採食)
なんとなく花の方が蜜が含まれていて甘そうなのに、ニホンザルにとっては美味しくないのでしょう。 
あるいは栄養に乏しかったり、消化が悪かったりするのかもしれません。 
猿は両手を交互に使って採食していましたが、まじめに(定量的に)調べれば個体によって利き手(の傾向)がありそうです。 

群れには子連れの母猿も混じっていました。 
当歳仔の子猿(新生児)は、まだ離乳前のようで、シロツメクサをまったく食べませんでした。 
座ってシロツメクサを採食する母猿の背中によじ登ったり飛び降りたりして遊んでいます。 
枝葉の隙間から隠し撮りしている私に気づいた母親♀が子猿を抱き寄せて、左の木陰に逃げ込みました。

果樹園に侵入したニホンザルはヒトに対する警戒心を高めているようで、特に成獣個体は私に気づくとさりげなく死角に隠れてしまいます。 
一方、若い子猿はヒトに対する恐れを知らないのか、原っぱで独り堂々と、シロツメクサの葉を食べ漁っていました。 
クローバーの茎を手でブチッとむしり取るには、結構力を要するようです。 

最後に、ニホンザルの群れが居なくなった後で、リンゴ園の全景をスナップショットのように撮りました。 
雪国のリンゴ園では、冬の間は電気柵が積雪で潰れないように撤去しています。 
この時期(6月中旬)のリンゴ園はまだ電気柵で囲い直していないため、サルは侵入し放題です。 
ちなみに、1週間後に同じリンゴ園を再び訪れたときには、電気柵でしっかり取り囲まれていました。 


今回Perplexity AIを使った調べ物をしていて初めて知ったのですが、シロツメクサは家畜の牧草としてよく使われるのに、その全草にはシアン配糖体(青酸配糖体)という微量の毒が含まれていることがあるそうです。
ただし、シロツメクサの青酸配糖体の含有量は通常は低く、大量に摂取した場合や極端なストレス条件下(霜害、踏圧、過剰な若葉など)でない限り、家畜の健康被害はほとんどないそうです


山中の水溜りに次々と飛来して泥濘から集団吸水する夜行性の蛾【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年6月中旬〜下旬 

シーン1:6/20・午後22:13(@0:00〜) 
水溜りからフクロウが飛び去った後で、山中の湿地帯では夜行性の蛾(種名不詳)が飛び回っています。 
やがて右から飛来した1頭の夜蛾が、水溜りの中洲に着陸しました。 
トレイルカメラが照射する赤外線を反射して、夜蛾の複眼が白く光って見えます。 
 1.5倍に拡大した上でリプレイ。(@0:32〜) 


シーン2:6/20・午後22:39(@0:47〜) 
約25分後、コウモリの飛来で監視カメラが起動しました。(コウモリの映像は割愛。) 
中洲の泥濘に留まったまま休んでいる夜蛾が写っています。 
おそらく口吻を伸ばして泥を舐め、泥水に含まれるミネラル成分を摂取しているのでしょう。 

そこへ右から低空で飛来した別個体の夜蛾が、同じ中洲に着地しました。 
すると先客の個体が驚いて飛び立ち、後から来た個体も釣られて再び飛び立ちました。 
1.5倍に拡大した上でリプレイ。(@1:28〜) 
同種らしき夜蛾が計3頭集まっていました。 


シーン2:6/22・午後21:27(@1:58〜) 
コウモリが飛び去った後で、1頭の夜蛾が右から低空で飛来し、水溜りの岸の泥濘に着陸しました。 
1.5倍に拡大した上でリプレイ。(@2:13〜)


【考察】
昼行性なら、集団吸水行動をする鱗翅目(チョウ・ガの仲間)は珍しくありません。 
水場で吸水している仲間を飛びながら視覚的に見つけると、近くに舞い降りて飲み会に参加します。 
ミネラル成分が濃い地点を味見しながら自力で探す手間が省け、水場で捕食者に襲われるリスクも下がるのでしょう。 
同じ地点で吸水およびミネラル摂取する個体数が連鎖反応でどんどん増えて、集団吸水の群れが形成されます。 

その一方で、夜行性の蛾では水場で仲間を視覚的に見つけるのは難しいはずです。 
集団吸水の群れが夜も形成されるとしたら、個々で探索行動をした結果たまたま同じ地点に集まってしまう場合か、仲間を嗅覚で誘引する集合フェロモン(性フェロモン?)を放出しているのでしょう。 

謎解きする上で次の一手としては、この水溜りに集まって吸水・ミネラル摂取する夜蛾の種類を同定したいものです。
そのためにはどうしても現場で夜蛾を採集するか、ストロボを焚いて同定用の写真を高画質でしっかり撮る必要があります。
しかし現場入りして夜通し水場を見張るのは大変そうですし、プロジェクトの主要目的である野生動物や野鳥が私を怖がって水場に来なくなってしまうのでは本末転倒です。
無人カメラで闇雲にインターバル撮影するとしたら、フラッシュを光らせる電池の消耗が激しそうです。

2025/07/16

アナグマの旧営巣地で昼寝の後に角を研ぐニホンカモシカ【トレイルカメラ】

 


2024年6月中旬・午後14:40頃・晴れ・気温30℃ 

昼下がりにニホンアナグマの旧営巣地(セット)で巣口Rの横に座ったまま30分以上も休んでから、ようやくニホンカモシカCapricornis crispus)が立ち上がりました。
脚を伸ばすストレッチ運動をしています。 

この個体は空咳をしていたので体調が悪いのかと心配でしたが、30分間という座位休息の時間は、カモシカにしては別にそれほど長い訳ではありません。

オニグルミの手前に生えたマルバゴマキ(別名マルバゴマギ、ヒロハゴマキ、オオバゴマキ)の細い灌木に角をゴシゴシと擦りつけて研ぎ始めました。 
これも縄張り宣言のマーキング行動なのでしょう。 
トレイルカメラで撮れたのは初めてです。



その後は満足そうにペロペロと舌舐めずりしています。 
カモシカは向きを変えると、平地の二次林で獣道を通って左に立ち去りました。 


【考察】
ゴマキの仲間には名前の通り、ゴマ(胡麻)のような香ばしい芳香があります。
今のところ、ニホンカモシカはマルバゴマキの葉を食べることは一度もありません。
しかし、眼下腺の分泌物をマルバゴマキの枝に擦りつけて匂い付けしたり、角を研いで(幹に擦り傷を付けて)マーキングしたりするので、もしかするとカモシカはマルバゴマキの芳香が好きなのかな?と思いました。

Perplexity AIにカモシカの角研ぎ行動について疑問を投げかけてみました。

ニホンカモシカの角研ぎ行動について、現時点で明確な結論は出ていませんが、観察や研究から次のようなことが分かっています。

角を鋭く研いでいるのか?
「武器として使用するために先端を尖らせる」といった説もありますが、実際の角研ぎの場面を見ると、先端よりも根元の方を木にこすりつけていることが多いと報告されています。老獣では根元部分が角研ぎによってえぐれていることも観察されています。したがって、「角の先端を鋭く研ぐ」ことが主目的とは言い難いです。

マーキングが目的ではないのか?
角研ぎの後で眼下腺から液を出して縄張りを主張するマーキング行動が見られることから、角研ぎ自体がマーキングの一環である可能性が高いと考えられています。

角が痒いときに掻いている可能性は?
カモシカの角は、骨の芯をケラチンの鞘が覆う構造で、角自体には神経や感覚器はありません。したがって、完成した角が「痒くなる」ことは基本的にありません。

 

まとめると、ニホンカモシカの角研ぎは「角を鋭く研ぐ」ことが主目的ではなく、むしろマーキングや社会的アピールの意味合いが強いと考えられています。また、痒みを取るための行動である可能性は低いです。


ランダムに記事を読む