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2022年9月中旬〜下旬・夜
里山のスギ林道にある溜め糞場sを監視するトレイルカメラに写ったホンドタヌキ (Nyctereutes viverrinus )の記録です。 ここではタヌキは完全に夜行性で、昼間は全く登場しません。
最近知ったのですが、イヌは脱糞時に南北方向を向くという研究結果が出たそうです。
参考記事:
・Hart, V., Nováková, P., Malkemper, E.P. et al. Dogs are sensitive to small variations of the Earth’s magnetic field. Front Zool 10, 80 (2013). https://doi.org/10.1186/1742-9994-10-80
同じイヌ科であるタヌキはどうでしょうか?
イヌと違ってタヌキは溜め糞をする習性があります。
撮影現場は右から左へと緩やかな上り坂になっていて、左が北です。
シーン1:9/14・午前00:43・気温21℃
いつもの溜め糞場よりも左の位置で、カメラを見上げながらタヌキが排便していました。
便秘気味なのか、いつもより時間がかかっているようです。
その後はトレイルカメラを避けるように、手前の死角に消えました。
「垂れ尾」か「フサ尾」かどうか不明です。
脱糞時の頭の向きは西でした。
シーン2:9/15・午後18:09・気温21℃ (@0:31〜)
林道を右から歩いて来た「垂れ尾」のタヌキがトレイルカメラの起動に気づいて立ち止まり、カメラ目線になっています。
やがて警戒を解くと、いつもの溜め糞場で北東を向いて排便しました。
排便時は垂れた尾をピンと斜め上に伸ばしています。
用を足しながらも振り返ってカメラを気にしました。
やや硬目の立派な一本糞に続いて軟便をボトボトと排泄しました。
そのまま左に立ち去りました。
シーン3:9/15・午後18:13・気温23℃ (@1:09〜)
4分後に別個体の「垂れ尾」が右から登場しました。
溜め糞場sに残された新鮮な糞に気づくと、匂いを嗅いでから跨がり、自らも細い軟便を排泄しました。
脱糞時の頭の向きは北でした。
「垂れ尾」も複数いることがこれで明らかになりました。
個体識別に使える軽度な奇形ではないかと思っていたのに、雲行きが怪しくなりました。
性差なのか、群れ内での順位を反映しているのでしょうか?
(負け犬が尾を下げるようになる?)
左に立ち去った後でクゥーン♪と甲高い鳴き声が聞こえたのは、先行する仲間と合流したのかもしれません。
シーン4:9/17・午後18:40・気温22℃ (@1:41〜)
「フサ尾」が林道を右から歩いて来ました。
フサフサした尾に「ひっつき虫」が付着しています。
いつものように自分たちタヌキの溜め糞の上に追加するのではなく、前夜のアナグマが残した糞 のすぐ横で対抗するように排泄しました。 脱糞時の頭の向きは北。
やや硬めの糞をコロンと出してから、立派な一本糞をモリモリと出しました。
そのまま左へ立ち去ります。
シーン5:9/18・午前1:45・気温20℃ (@2:16〜)
「フサ尾」が右から登場。
タヌキおよびアナグマの溜め糞場sで匂いを嗅いだだけで左へ通り過ぎました。
シーン6:9/18・午後20:02・気温24℃ (@2:37〜)
「垂れ尾」が珍しく左から登場しました。
溜め糞の匂いチェックもせずに迂回しながら右へ立ち去りました。
シーン7:9/20・午前3:50・気温26℃ (@2:56〜)
対面に見えるスギ大木の下でタヌキが立ち止まり、幹の根元の匂いを嗅いでいます。
前日に誰かさん(ヒト)が立ち小便した匂いに反応しているようです。
スギ落ち葉に鼻面を突っ込んで匂いを嗅いでいます。
林道上をぐるっとひと回りしてから、溜め糞場の匂いチェックもしないで左に立ち去りました。
毛皮のあちこちに「ひっつき虫」が付着していました。
シーン8:9/22・午前1:04・気温11℃ (@3:28〜)
気温が一気に冷え込みました。
レンズ手前の至近距離でザトウムシ?の細長い歩脚が動いています。
林道を右から歩いて来た「垂れ尾」のタヌキが溜め糞場sの周囲でスギ落ち葉の匂いを頻りに嗅ぎ回っています。
今回も、溜め糞場で排便せずに左へ立ち去りました。
…と思いきや、画面の下から溜め糞場sに戻って来ました。
何か警戒しているようですが、残念ながら排便の有無を見届ける前に録画終了してしまいました。
この個体も藪の中を通ってきたようで、全身の毛皮に「ひっつき虫」が付着していました。
タヌキは「ひっつき虫」型の植物の種子散布を助けていることになります。
後でタヌキは「ひっつき虫」を取り除いたり食べたりするのでしょうか?
私は未だタヌキの毛繕いを実際に見たことがありません。
シーン9:9/22・午後18:10・気温16℃ (@4:22〜)
林道を右から歩いて来た「垂れ尾」が、溜め糞場sを素通りしました。
シーン10:9/23・午後21:24・気温19℃ (@4:32〜)
土砂降りの雨が激しく降っています。
鬱蒼と生い茂るスギ林の林床までこれほど激しい雨が落ちてくるということは、よほどの豪雨です。
林道を珍しく左から来たタヌキがスギ大木の傍らを小走りで通り過ぎました。
今回も溜め糞場sに興味を示しませんでした。
「垂れ尾」か「フサ尾」か不明です。
※ 雨天のシーンのみ動画編集時に自動色調補正を施しています。
さて、排便時の頭の向きをまとめると、西、北東、北、北でした。
未だデータが少ないものの、確かに南北方向を向いて脱糞する傾向がありそうです。
これまで撮れたタヌキの脱糞動画をすべて集計すれば、面白いかもしれません。
ただし、この手の実験は平坦で開けた場所(オープンスペース)でやるべきです。
現場は林道が南北方向に走っており、タヌキは地磁気を感じるまでもなく、その地形通り進行方向のまま排便することが多いのは当然でしょう。
タヌキがわざわざバランスの悪い不自然な体勢で排便するはずはありませんから、坂道(斜面)にある溜め糞場では自ずと向く方角が制限されてきます。
また、この溜め糞場はニホンアナグマと共有しているため、縄張り争いという干渉もあるかもしれません。
どうもタヌキはトレイルカメラの存在に気づいて(嫌がって)いる節があり、もしかすると排便方向に影響を与えている可能性もありそうです。
タヌキの溜め糞場をトレイルカメラで監視する際に、設置アングルが重要です。
排便姿勢に対して横あるいは後ろから撮らないと肝心の脱糞シーンが映らないからです。
もし本当にタヌキもイヌと同じく南北方向を向いて排便することが多いのであれば、とりあえずトレイルカメラは東西方向から狙えば良さそうという指針になって便利です。
後半になると、なぜかタヌキが溜め糞場で排便してくれなくなりました。
トレイルカメラの存在をタヌキが嫌がって、別の場所に溜め糞場を変えたのではないか?という気がしてきました。
それとも、同じ溜め糞場sを共有するアナグマとの匂い付け合戦(縄張り争い?)に決着が付いたのでしょうか?