2020年3月中旬
早春の里山で落葉灌木の藪をかき分けながら下山中の私が立ち止まっていたら、美声の囀りが大声で(近くから?)聞こえました。
渓流の水音に負けない大声が響き渡ります。
残念ながら、声はすれども姿は見えず。
後半になると鳴き声の主は遠くへ(渓流の方へ?)行ってしまいました。
※ 動画編集時に音声を正規化して音量を上げています。
帰ってから図鑑のCD音源と聴き比べてみると、どうやら日本にいる野鳥の中でも屈指の美声と誉れ高いミソサザイ♂(Troglodytes troglodytes)の囀りだったようです。
wikipediaによると、
早春の2月くらいから囀り始める習性があり、平地や里山などでも2月頃にその美しい囀りを耳にすることができる。小さな体の割には声が大きく、高音の大変に良く響く声で「チリリリリ」とさえずる[6]。
『日本の野鳥さえずり・地鳴き図鑑2014』によれば、
さえずり:高音のとてもよく響く声でチリリリリとさえずる。(p50より引用)
『色と大きさでわかる野鳥観察図鑑』によると、
さえずり:チルルルーツー、ピャピャなど。
よくとおる美しい声でさえずる。(p80より引用)
▼関連記事(7、8年前の撮影)
・ミソサザイの地鳴きを声紋解析してみる(冬の野鳥) (2012年11月下旬)
・ミソサザイの地鳴き♪を声紋解析してみる2【冬の野鳥】 (2013年1月下旬)
・雪解け水の渓流でさえずるミソサザイ♪【早春の野鳥】 (2012年4月中旬 水音に掻き消されてよく聞き取れず)
ミソサザイ♂の囀りを声紋解析してみる
オリジナルのMOV動画ファイルから音声だけをWAVファイルに抽出してから、冒頭の一番はっきり鳴いている部分を切り出し、スペクトログラムを描いてみました。
松田道生『野鳥を録る:野鳥録音の方法と楽しみ方』によると、
さえずりが美しいといわれている鳥の声紋のパターンは、とてもはっきりしています。たとえば、ミソサザイやホオジロのさえずりを見ると、パターンがくっきりと表示されてシャープ、声が澄んでいることを示します。(中略)
また、この2種類の鳥のパターンをよく見ると、高いところの音と低いところの音が複雑に登場して、激しい抑揚をもっていることがわかります。このパターンが入り組んでいるほど、複雑に聞こえます。声紋は、こうして声の複雑さを見ることができます。さらに、ミソサザイの音は幅が狭いのに対し、同じ抑揚があってもホオジロは音の幅が広いことがわかります。これにより、ミソサザイはキンキンしたより金属的な部分が際立ち、ホオジロはミソサザイに比べると比較して(原文ママ)柔らかい音に聞こえることになります。
私は専門家の真似事でスペクトログラムを描いているだけですが、声紋の見方が勉強になりました。
▼関連記事(6年前の撮影)
樹上でさえずる♪ホオジロ♂(野鳥)と声紋解析
2020年3月中旬・午後
里山の麓にちょっと深い水溜りがあり、湧き水で年中涸れることがありません。
水溜りといよりも、小さな池と呼べるかもしれません。
その池の縁におそらくヤマアカガエル(Rana ornativentris)が産んだと思われる卵塊が幾つもありました。
卵塊を順番に見ていくと、胚の発生状況に差がありました。
広大な池ならともかく、こんな小さな水溜りで日当たり具合や水温に差があるとは思えないので、複数の♀が数日ずらして産卵したのでしょう。
早い卵塊は既に真っ黒な幼生(オタマジャクシ)が孵化していて、水中で大量に蠢いています。
卵塊から脱出する瞬間もたまたま撮れました。
別の卵塊に注目すると、ダルマ胚の状態でした。
ダルマ胚より発生が進んで細長い状態の卵塊もありました。(正式名称は?)
来年こそは早春(晩冬)の産卵行動を観察しに来ようと心に決めました。
今年は異常な暖冬でしたが、ヤマアカガエルの繁殖スケジュールは影響を受けたのでしょうか?
▼関連記事(同じ日に山麓の水溜りで撮影)
早春の砂防堰堤の水中にヤマアカガエルの卵塊
2020年3月上旬・午後17:39〜18:04・(日の入り時刻は午後17:34)
▼前回の記事
夕暮れのモミ樹冠で羽繕いするダイサギ(冬の野鳥)
日没後にダイサギ(Ardea alba)が次々に飛来して塒入りが始まりました。
上空を旋回してから、池畔のヒマラヤスギ並木の横枝にフワリと着地します。
全く鳴き声を発すること無く、静かで優雅な塒入りでした。
私が今まで見てきたカラスやムクドリ、スズメ、ハクセキレイ、カワウなどの騒々しい集団就塒とは大違いです。
群れが陣形を作って飛来するのではなく、ダイサギは1羽ずつ塒に飛来したので、集団就塒とは呼べないかもしれません。
肉食性(魚食性)のダイサギは広い縄張りを必要としますから、日中は川や池などの水辺でほとんど単独生活を送っています。
今回の個体群を見る限り、ダイサギは他の野鳥と異なり、就塒前集合しないで直接塒入りするようです。
しかし、別の場所で以前見たダイサギは、川で就塒前集合してからカワウと一緒に河畔林に塒入りしていました。
就塒前集合の有無はケースバイケースなのでしょう。
ヒマラヤスギ巨木の林は鳥が止まる場所がたくさんありますから、たかだか10羽のダイサギが集まっても混み合わず余裕があります。
塒内でダイサギ同士で場所取りの小競り合いがほとんど起きなかったのは、そのためでしょう。
軽い威嚇や小競り合いがあっても、鳴き声は聞き取れませんでした。
▼関連記事(2年前の11月に撮影)
河畔林の集団塒でダイサギ同士が小競り合い(野鳥)
結局この日ヒマラヤスギ林に塒入りしたダイサギは、計10羽ぐらいでした。
一旦止まった枝から別の枝に飛び移ることが多いので、撮影に集中しているとなかなかカウントと両立できません。
例えば近くのモミ高木に着陸しかけた個体は、仲間が居ないことに気づくと再びアプローチをやり直し、集団塒に合流しました。
隣の個体との距離が近すぎると先客に威嚇され、追い払われてしまいます。
池の対岸から撮影している私を警戒して、死角となる枝へ飛んで移動している印象も受けました。
ヒマラヤスギ樹上で落ち着くと、ダイサギは各々が羽繕いしています。
ここでもカワウとダイサギの混群が塒入りするかと期待したのですが、少なくとも1羽のカワウが日没直後、私に驚いて池から逃げてしまいました。
(もし私が邪魔しなければ、カワウもダイサギと同じヒマラヤスギ樹上に塒入りしたかもしれません。)
※ 動画編集時に彩度を少し上げました。
暗視カメラの赤外線がとても届かない距離なので、自然光(および外灯)による明るさが撮影可能限界になるまで愛機FZ85の手持ち夜景モードで動画撮影しました。
日が暮れると気温が急激に下がりました。
午後17:33 12.0℃、湿度31%
午後17:45 7.1℃、42%
午後18:04 4.3℃、57%


翌朝の離塒も撮影すべきでしたね。
野鳥が夜なぜ群れで集まって眠るのかという疑問に対する仮説がいくつか提唱されています。
柴田佳秀『うち、カラスいるんだけど来る? カラスの生態完全読本』によると、
エサ場の情報センター説はカラスではまだ確かめられていませんが、サギでは実証されています。(p44より引用)
今回は逆光のアングルで空を横切る電線も目障りでした。
順光の逆側からダイサギの塒入りを撮り直そうと9日後の3月中旬に現場を再訪しました。
ところが、日が暮れてもなぜかダイサギは1羽も現れませんでした。
集団塒の場所を変えてしまったのでしょうか?
9日前の私の撮影行為がダイサギ達を警戒させてしまったのかもしれない…という一抹の懸念があります。
ブラインドを張って隠し撮りしたくても、設置場所が確保できないのです。
それとも、鷺山の糞害を恐れる誰かに追い払われたのかな?
定点観察の間隔が9日も空いてしまったのが悔やまれます。
楽観的に考えると、春になってダイサギは渡去したのかもしれません。
↑【おまけの動画】
午後17:57~17:59(日の入り時刻は午後17:32)
2日前の晩に現場を偶然通りかかり、白鷺の集団塒を初めて見つけたときの証拠映像です。
塒入りが完了した後でした。
池畔に聳え立つヒマラヤスギ並木の集団塒で、6羽のダイサギが思い思いに羽繕いしています。
ブログ限定で公開しておきます。
※ 動画編集時に強制的に明るさを上げました。
暗がりでも純白の白鷺の姿が辛うじて樹上に見えます。
暗視カメラの赤外線がとても届かない距離なので、愛機FZ85の手持ち夜景モードで動画撮影しました。