2020/03/19

刈田で落穂拾いするキジバトのペア(野鳥)



2019年10月上旬・午後15:10頃

秋晴れの中、あちこちの田んぼで稲刈りが進行中です。
山村の稲刈りが済んだ田んぼ(刈田)で2羽のキジバトStreptopelia orientalis)が互いに付かず離れず採食していました。
おそらく♀♂つがいなのでしょう。
初めは私を警戒してフリーズしていたものの、やがて警戒を解くと歩きながら落穂を啄み始めました。
ドバトの落ち穂拾いは過去に観察していますが、キジバトでは初見です。


▼関連記事(3年前の撮影)
刈田で落ち穂拾いするカワラバト(野鳥)2羽

刈株の間にクモが張り巡らした遊糸が秋の日差しにキラキラと輝いて、なかなか絵になります(フォトジェニック)。

隣には稲刈りされていない区画の田んぼが広がり、稲穂が黄金色に実っていました。
そちらの方が餌が豊富にあるのに種子食性のキジバトが刈田に留まって慎ましく採食しているのは不思議に思いました。
行儀が良いのは、稲作農家が何か鳥害対策をした結果でしょうか?
それとも単に体格の問題かな?
鳩はスズメよりも体重が重いので稲穂には止まれず、地面から首を伸ばしても稲穂に嘴が届かないのかもしれません。
(※追記参照)

余談ですが、秋になるとソバ畑で実を盗み食いするキジバトもたまに見かけます。
採食シーンを動画で記録したくても、あまりに見事な保護色のせいで見つけられません。

いつも私がソバ畑の横を通りかかると慌てて飛んで逃げるので初めてキジバトの存在に気づく始末です。
撮影するにはソバ畑の近くでブラインドに隠れて待ち伏せするしかなさそうです。

関連記事(4年後の撮影)▶ ソバ畑に集まり熟した実を食べるキジバトの群れ(野鳥)


※【追記】
平野伸明『野鳥記』という写真集p89に「キジバトは、刈られる前に稲を食べようと必死」と題した生態写真が掲載されていました。



キジバト2(野鳥)@刈田+落穂拾い
キジバト2(野鳥)@刈田+落穂採食

2020/03/18

アキノノゲシの果柄に食前トレンチ行動をするホソバセダカモクメ(蛾)の幼虫【10倍速映像】



2019年9月下旬・午後12:06〜13:27・晴れ


▼前年の観察記録
アキノノゲシは傷口から乳液を分泌する
ホソバセダカモクメ(蛾)の幼虫がアキノノゲシの種子を食べる際のトレンチ行動
ホソバセダカモクメ(蛾)幼虫がアキノノゲシの実を食べる作法の謎

昨年発見した面白い食前行動を引き続き観察します。
普段、私の撮影スタイルは行き当たりばったりなのですが、このテーマ(微速度撮影)は昨年から持ち越した宿題です。
秋になるのを待ちかねて河原の土手に生えたアキノノゲシの群落を丹念に見て回り、これを好んで食草とするホソバセダカモクメCucullia fraterna)の幼虫を探し出しました。
何齢か分かりませんが、よく太っています。

現場に三脚を立てて、食事シーンを微速度撮影しました。
10倍速の早回し映像をご覧下さい。
今回は、個体bに注目します。

被写体の周囲で撮影の邪魔になりそうなアキノノゲシの茎を予め切り落としました。
切り口から粘り気のある白い乳液(ラテックス)が滲み出ることを確認しています。
この乳液は、病原菌が傷口から侵入するのを防いだり、草食動物(昆虫)が嫌がる味の化学物質(毒?)を含んだりしていると考えられています。





アキノノゲシの実を食べたいホソバセダカモクメ幼虫はまず、果柄の根元から先端に向かって噛み傷をつけています。
正確には、果柄の表面の皮一枚だけ残して器用に食べています。
(たまに失敗して果柄を噛み切ってしまった場合は、近位に残った果柄だけを食べていました。)



齧って細くした果柄が萎れて(実の重みでしなって)曲がると、幼虫はようやく実に口が届くようになりました。
太い茎にしがみついたまま海老反り姿勢になり、実(子房)を手繰り寄せると美味しそうに食べ始めます。



実を完食すると、残った果柄も噛み傷の部位まで食べ尽します。
こうした一連の食前行動は乳液対策のトレンチ行動ではないか?というのが私の個人的な仮説です。

トレンチとは「塹壕(溝)を掘る」と言う意味です。
果柄の噛み傷を付けた部位で乳液をせき止めて、それより遠位の食害部位には分泌されないようにする、という幼虫の賢い作戦です。
実際に、食害している実(子房)から白い乳液は滲んでいません。
幼虫のトレンチ行動中に果柄の傷口から乳液が滲んでいるかどうか、次回は接写してみましょう。


▼関連記事
クロウリハムシの食前トレンチ行動と脱糞【10倍速映像】

トレンチ行動以外の別な解釈も考えられます。
単に細い果柄を傷つけて折り曲げ、先端の実を口元に手繰り寄せるための行動かもしれません。 
もしそうなら、太い茎にしがみついたまま実に口が届くときは、わざわざ果柄を先に齧ったりしないでしょう。(予想1)
体重が軽い若齢幼虫は細い果柄も登れますから、果柄を予め齧らなくても直ちに実を食べることが可能なはずです。(予想2)

ただし、これら2つの仮説は必ずしも排他的な二者択一ではないかもしれません。(一石二鳥の行動)

不思議なのは、長時間観察してもホソバセダカモクメ幼虫が食草アキノノゲシの葉に全く口を付けないことです。
幼虫が居座る茎の下に広がる葉にも食痕が見当たりませんでした。

葉よりも実の方が栄養価が高いので、優先的に実を食べるようになったのしょうか?
幼虫はアキノノゲシの茎そのものが好物で食べているのでしょうか?
伸び上がって果柄の先端に実が無いことを確認したのに残った果柄(茎の切り口)を食害したことがありました。
若齢でも葉を食べないのか、実がついていない時期(夏)は何を食べているのか、気になります。
飼育下でアキノノゲシの実を与えず、葉のみを与えたら嫌々ながらも食べてくれるかな?
葉を食べるときも乳液対策のトレンチ行動をするでしょうか?


▼関連記事(9年前の7月に撮影)
オニノゲシの葉を食すホソバセダカモクメ(蛾)幼虫

幼虫はときどき茎にしがみついたまま、食休みします。
このとき身繕いで口元(に付着した乳液?)を胸脚で拭っているように見えましたが、接写しないと確かなことは言えません。
再び食欲が戻るとホソバセダカモクメ幼虫は隣の分枝に移動し、次のトレンチ行動を始めます。

食事しながらときどき腹端を持ち上げ、脱糞しています。
映像から脱糞の間隔が分かったのは3回で(11分、19分、19.5分)、平均すると16.5分間隔で排便していました。
私がイモムシ類を飼育すると室内ではだいたい30分間隔で脱糞するのですが、野外だと消化器の代謝も体調も良さそうです。

よく晴れて日差しが強いので、長撮りするとカメラの過熱が心配です。
日傘の代わりに私自身が三脚の横に立ち続け、カメラ本体に影を作ってやりました。
野外での撮影は風が吹く度に被写体が揺れるのが悩ましい問題です。
風揺れが嫌なら室内の飼育下で微速度撮影するしかありません。
しかし食草のアキノノゲシを採取して花瓶に活けると、乳管に蓄えられた乳液が茎の切り口から水中に流れ出てしまいそうです。
仕方がないので、思い切ってフィールドでの微速度撮影を決行したのです。
動画編集時に手ブレ補正処理を施すと風揺れが少し改善しました。
実はこの時期、飼育にも挑戦してみたのですが、採集したホソバセダカモクメ若齢幼虫が原因不明の病気(残留農薬?)で次々に死んでしまいました。
ネット検索で調べてみると、ホソバセダカモクメの幼虫はレタスLactuca sativa)の害虫として知られているようです。
本腰を入れて飼育観察するのなら、予め鉢植えにアキノノゲシ(Lactuca indica)や近縁のレタスの種子を蒔いて無農薬で栽培すれば食草を安定供給できそうです。


つづく→



ニラの花蜜を吸うナミハナアブ♂



2019年10月上旬・午後12:12・晴れ

郊外の住宅地の道端に咲いたニラの群落でナミハナアブ♂(Eristalis tenax)が訪花していました。
散形花序を歩き回りながら、口吻を伸縮させて花蜜や花粉を舐めています。
顔正面の黒色中条が幅広いことを確認できました。


ナミハナアブ♂@ニラ訪花吸蜜
ナミハナアブ♂@ニラ訪花吸蜜

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