2022年10月中旬・午後21:20頃
雑木林の斜面を駆け上がると、カラマツの根元(右下)で立ち止まり、辺りの様子をうかがっています。
再び斜面を駆け上がって姿を消しました。
短い登場シーンを1/3倍速のスローモーションでリプレイ。(@0:09〜)
※ スローパートは動画編集時に自動色調補正を施して明るく加工しています。
この夏にテンを目撃した山中の水場から直線距離で数十mしか離れてませんから、監視カメラに写ったことは不思議ではありません。
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テンは雑食性とされていますが、食べる果実は堅果ではなく液果のようです。
したがって、今回のホンドテンもドングリ(ミズナラの堅果)を置いた給餌場の匂いには反応しませんでした。
おそらく50分前に通った野ネズミの残り香を嗅ぎ取ったのでしょう。
食性は雑食性で、動物質のものはネズミやリス、鳥、爬虫類、両生類、昆虫類、ムカデなど。植物質のものはヤマグワやマタタビ、サクラ、ヤマブドウ、コクワ(サルナシ)などの実[3][7]。(wikipedia:ホンドテンより引用)
テンは甘い果実類が大好物である。(中略)カキだけではなくビワ、アケビ、マタタビ、ヤマブドウ、クワ、ミカンなどの実もよく食べる。(平凡社『日本動物大百科1:哺乳類I』p136より引用)テンは野ネズミを狩る天敵です。
私が山中に給餌場を設置したことで野ネズミが数分おきに通うようになり、その物音をホンドテンが聞きつけてやって来たのかもしれません。
テンが立ち止まって横を向いた際に口に獲物を咥えていませんでしたから、ドングリの運搬・貯食作業中の野ネズミは狩られずになんとか逃げ延びたようです。
エゾクロテンの糞を調べると、(中略)動物質の出現率が圧倒的に高く、全体の約85%を占める。とくにヤチネズミやアカネズミなどの野ネズミ類の出現率が動物質の約90%を占める。これとは逆に、近畿地方のニホンテンは、年間を通じて植物質が87%を占め、その80%が果実であるという報告がある。(同書p137−138より引用)今泉吉晴『がんばれひめねずみ』は子供向けの絵本ですが、テンに襲われそうになったヒメネズミがドングリを咥えたまま必死で逃げて行く姿が表紙になっています。
本文でもテンがヒメネズミの巣箱を襲うシーンが描かれていました。
天敵とのニアミスに怯えた野ネズミは、警戒してしばらくドングリ餌場に来なくなってしまいました。
どこか安全な隠れ家や巣穴に潜伏しているのでしょう。
7時間20分間もの長い外出自粛でほとぼりが覚めると、夜明け前に餌場通いを再開しました。
やはりテンの餌食とならず無事だったようで、一安心。
野生動物に給餌をすると、予想しないような連鎖反応が起きます。
給餌行為はヒトの勝手な都合で特定の野生動物に依怙贔屓 をしている訳ですが、自然界は一人勝ちを許しません。
急に増えた餌資源を巡って争いが起きますし、今回のように捕食者を呼び寄せることもあります。
ここで堅果給餌プロジェクトを続けると後日、野ネズミが別の天敵にあわや狩られそうになる危機一髪のシーンが監視カメラに写っていました。(映像公開予定)
私は給餌場で巻き起こるドラマをあくまでもドライに観察し、何が起きても興味津々で記録するだけです。
ドングリをせっせと持ち去り貯食する野ネズミやリスに愛着を持って可愛い名前をつけたりするタイプの人は、狩りのシーンを目の当たりにして精神的ショックを受けたり、「私が給餌したせいで…」と罪悪感を抱いたりするかもしれません。(←別にそういう人を揶揄したり非難したりする訳ではありません。)
野生動物に給餌するならそういう覚悟も必要ですよ、と言う話です。
【追記】
野生ホンドテンの糞内容物調査をした楠井晴雄・楠井陽子『テンが運ぶ温帯林の樹木種子』によると、(『種子散布―助けあいの進化論〈2〉動物たちがつくる森』p37-50に収録)
動物性食物については(中略)、哺乳類ではほとんどがノネズミ類で、食忠類(ヒミズ、ミズラモグラ)も含まれていた。(p39-40より引用)
実はこの場所でノネズミ以外にヒミズも出没しています。
テンの動物性食物の食性を見てみると、哺乳類への依存度も高く、その多くがノネズミ類であった。テンがノネズミ類を多く採食することによって、それらノネズミ類が貯蔵した堅果類はそのまま地中に残される可能性も高いのではないだろうか。したがって間接的にテンは堅果類の散布に対しても補助的な役割を担っていることが推察される。(p48-49より引用)
下線部についてはとても新鮮な見方でした。
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