2019/07/29

繭を紡ぐマメドクガ(蛾)終齢幼虫♂【100倍速映像】

マメドクガの飼育記録#18



▼前回の記事
ケヤキの若葉を食べ脱糞するマメドクガ(蛾)終齢幼虫♂【30倍速映像】

2019年5月中旬

マメドクガCifuna locuples confusa)の終齢幼虫♂bは、ケヤキの枝で葉裏に静止し、周囲の葉数枚を糸で綴り引き寄せ始めました。
いよいよ繭を作りそうです。
これは、みんに入る前の隠れ家です。

三田村敏正『繭ハンドブック』によれば、マメドクガの繭は

長さ約3.0cm、直径1.4〜2.0cm。
体毛を混ぜ込んだ褐色で、薄い。繭の中の蛹が見える。餌植物の葉を綴って作られる。
繭は初夏〜秋にかけて、餌植物で見られる。
とのことです。(p42より引用)


生き物を飼育するときは、なるべく自然の状況を再現するのが理想です。
私の目的は行動を動画で記録することなので、葉で綴った隠れ家の中で営繭されると過程が見えずに困ります。
このままでは営繭行動を撮影しにくいので、幼虫を繭棚に引越しさせることにしました。
養蚕で使うカイコの繭棚を我流で真似したものです。

中が格子状に仕切られたプラスチック容器を用意します。(100円ショップで購入した小物入れ)
1部屋の大きさは、4×4×3.5cm。
プラスチックの部屋の内面に紙を貼り、幼虫の絹糸が付着しやすくしておきます。
過去に別種のイモムシによる繭作りを観察したときの反省から、壁紙を黒くすることにしました。
背景が白いと、幼虫が吐く白い絹糸が見えにくいからです。
わざわざ黒い紙を文具店で買ってくる時間がなかったので、油性ペンで紙を真っ黒に塗り潰しました。
その黒紙を両面テープで容器内面に貼りました。
この繭棚にマメドクガ終齢幼虫を閉じ込めました。
観察しやすいよう上面は透明プラスチックの天井のままにしてあります。
繭棚の天井が明るいと、幽閉された幼虫は必死で脱出しようとするので、しばらく遮光しておきます。

2日後、みんから醒めた終齢幼虫が遂に繭棚で繭を紡ぎ始めました。
撮影のために繭棚のプラスチック蓋を開けておいたら、夜の間に幼虫は勝手に隣の繭棚に移動して、そこで改めて繭を作ろうとしていました。
もしかすると、壁紙を黒く塗った油性ペンの揮発性インクの匂いを幼虫が嫌ったのかもしれません。(次回は黒色の折紙などを使いましょう)
引越し先は過去にオビガ幼虫が繭を作った繭棚で、背景が茶封筒の紙です。(画面の左下隅にはオビガの古い空繭が残されたままです。)

古い壁紙が剥がれかけていてお見苦しいです。
せっかく今回は背景を黒くしようと企んだのに、準備が台無しになってしまいました…。

仕方がないので、このまま撮影に入ります。

繭を作り始める前に終齢幼虫は下痢便を排泄するのが普通です。
しかし、この個体では結局見ていません。
与えた食草(食樹)の含有水分が少なかったのかな?




営繭の一部始終を微速度撮影で記録しました。(午前7:02〜14:34)
撮影開始時の室温は21.5℃、湿度33℃。
終了時の室温は26.8℃、湿度29%でした。
100倍速の早回し映像をご覧下さい。
微速度撮影に特有の画面のチラつきを抑えるため、動画編集時にdeflickerフィルターを掛けました。
初めにマメドクガ幼虫は、自分の体の周囲に足場糸を張り巡らせただけの、ごく粗い繭を作ります。
やはり背景が茶色では、白い絹糸がよく見えません。
繭棚の天井は何も無くて露出した状態なので、幼虫はまずその天井に絹糸を張り巡らせてシートの様なもので覆い始めました。
繭が密になれば、蓋を開けておいても繭棚から脱走する心配はもうありません。

途中で終齢幼虫の動きを等倍速の動画撮影に切り替えて記録しました(@2:17-3:12)。
マメドクガ幼虫は下半身を繭内に固定し、反らせた上半身で8の字を描くように動かしながら口から絹糸を吐いていきます。
繭内で何度も方向転換し、万遍なく絹糸を追加していきます。

次第に薄っすらと黒い繭が作られていきますが、絹糸が黒い訳ではありません。
毛虫が繭内で激しく動き回ったり方向転換したりする際に抜け落ちる黒い毛が繭に少しずつ織り込まれていくのです。
幼虫の頭部の横から伸びる一対の長い毛束も営繭の後半にはどんどん抜け落ちてしまいました。
結果論ですけど、マメドクガの繭は最終的に黒くなるので、繭棚の壁紙を黒くしないで良かったことになります。
こういう細かな撮影ノウハウは、自分なりに飼育して試行錯誤してみないと分からないものです。

完成した繭内で幼虫がなぜか激しくのたうち回っています。(蛹化の蠕動運動ではない)
やがて終齢幼虫が動かなくなりました。
黒っぽい繭の長軸が繭棚の壁に対して水平に吊り下げられていました。(一方、過去にオビガ幼虫は繭棚の隅で斜めに繭を作りました)

マメドクガ幼虫に面白がって桜(ソメイヨシノ)の未熟な果実ばかりを食べさせた時期があったので、青酸中毒で弱ったり異常行動を始めたりするのではないかと心配でした。

無事に繭が完成したので一安心。

繭が完成した後で動かなくなった終齢幼虫は前蛹と呼ばれる状態になります。
繭が黒っぽい焦げ茶色なので中の様子がよく見えず、前蛹が脱皮して蛹になる様子(蛹化)は観察できませんでした。

9日後、成虫の羽化に備えて繭室から繭および蛹を取り出しました。
その写真はこちら。


マメドクガ(蛾)繭+蛹♂b@繭棚
マメドクガ(蛾)繭+蛹♂b@方眼紙
マメドクガ(蛾)繭+蛹♂b@方眼紙




↑【おまけの動画】
早回し速度を落とした10倍速映像をブログ限定で公開しておきます。



つづく→#19:羽化したマメドクガ♂(蛾)


マメドクガ(蛾)終齢幼虫♂b@繭棚+営繭
マメドクガ(蛾)終齢幼虫♂b@繭棚+営繭
マメドクガ(蛾)終齢幼虫♂b@繭棚+営繭

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