2014年8月上旬
▼前回の記事
採土に通うオオフタオビドロバチ♀を個体標識してみる
里山の山頂広場で巣材集めに通って来るオオフタオビドロバチを観察していると、なぜか相前後して小さ目で別種のドロバチも採土に現れました。
ムモントックリバチ♀(Eumenes rubronotatus rubronotatus)です。
採土行動には種による違いは取り立ててありません。
地面を大顎で削り取りながら吐き戻した水とこねて泥玉を作り、泥巣を作る材料とするのです。
本種の巣材集めを撮影するだけなら過去に散々やってきたので、今回は目先の違うことをやってみます。
▼関連記事採土に通っている蜂は何匹なのか知るために、個体識別のマーキングを施すことにしました。
・ムモントックリバチ♀の採土
・ムモントックリバチの巣材堀りと定位飛行
わざわざ捕獲して麻酔するのも面倒だし母蜂の体にも負担(ストレス)になるので、生きた蜂に直接マーキングします。
穴掘りで夢中になっている蜂に背後から忍び寄り、腹背に白の油性ペンでチョンと標識します。
このぐらいのことでは狩蜂に刺される危険がないことが、これまでの経験で分かっています。(それでも毒針が怖いと思う人は一時捕獲した蜂を炭酸ガスや低温で麻酔することをお勧めします。)
腹背に白点を打つと蜂は驚いて飛び立ち、そのまま泥玉を持って帰巣しました。
2回目に飛来した蜂は顔をこちらに向けて採土するため、腹背のマーキングがよく見えません。
本種の体型は腹部が弓型に曲がっているため、腹背のマーキングが正面からは見えにくいのです。
胸背や翅にマーキングした方が良かったかもしれません。
どうやら無印の別個体がいるようです。
アリに邪魔された蜂が驚いて飛び立ちました。
3回目に飛来した蜂は腹背が白点でマーキングされていました。
採土中に近づいてきたクロアリ(種名不詳)を嫌って飛び立ち、定位飛行してから帰巣。
4回目に飛来した蜂は無印の個体でした。
この蜂にも白以外の色で個体標識すればよかったですね。
同時並行でオオフタオビドロバチの撮影も行っていたので、余力がありませんでした。
5回目に飛来した蜂は、採土終了後の定位飛行でようやく白点を確認できました。
(実は三脚カメラで撮りながらマーキングの有無を見るため、蜂に近づいて確認しています。)
6回目および7回目に飛来した個体は残念ながらマーキングを確認できませんでした。
8回目に飛来したのは白点でマーキングされた個体でした。(このときはハイスピード動画で撮ったので、別の記事として公開予定。)
撮影時刻を映像に記録しておきましたが、私がよそ見をしていたり撮り損ねがあるかもしれません。
観察しているとアリに邪魔されて蜂が採土作業の中断を余儀なくされることが頻発しています。
毎回ムモントックリバチ♀は泥玉を抱えて飛び立つと山桜の梢に向かって行きました。
途中で見失ってしまい、残念ながら巣の位置を突き止められませんでした。
超小型の発信機を蜂に取り付けられたら追跡が捗るのになぁ…と夢想してみる。
個体識別してみた結果、ムモントックリバチ♀は少なくとも2匹が代わる代わる巣材を集めに通ってきていることが判明しました。
以前、エントツドロバチでも同様のマーキング実験によって集団採土所の存在を明らかにしています。
▼関連記事
エントツドロバチ♀の集団採土場(蜂を個体標識してみる)
ムモントックリバチの場合はマーキングする体の位置やインクの色に改善の余地がありそうです。
白点によるマーキングなのか、無印の蜂の体が黒光りしているだけなのか、咄嗟に見分けるのがかなり難しかったです。
他人に見せても説得力のある映像とは言えないかもしれません。
胸部もしくは、思い切って左右どちらかの翅にマーキングした方が紛らわしくなかったでしょう。
翅だと付着したインクを蜂が嫌がったり飛行に支障を来すのではないかと躊躇してしまいました。
▼つづく
採土をアリに邪魔されたムモントックリバチ♀の飛翔【ハイスピード動画】
無印の個体(腹背が黒光り) |
マーキング個体 |
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