2023/02/16

ハエが群がる下痢便状の物は溶けたスッポンタケか?

 

2022年9月上旬・午前11:50頃および12:10頃・くもり 

里山の山腹をトラバースする平坦な小径に少量の下痢便が山道に残されてました。 
緑がかった黄土色の液状便です。 
ハエ類が獣糞に集まっていたのに、私が近づいたことで一斉に飛び去ってしまいました。
しばらくその場でじっと待つと、徐々に舞い戻ってきました。 
きれいな緑色や赤緑色の金属光沢に輝くキンバエ類の種類を私は見分けられないのですが、大小様々、♀♂混在のキンバエ類が下痢便に群がり、興奮したように離着陸を繰り返しています。 
ニクバエの一種も1匹だけ飛来しました。(@0:30〜) 
新鮮な下痢便の表面にハエが止まっても、粘性が高く表面張力で軽量のハエは足が沈みません。 
口吻を伸ばして糞の表面から吸汁しています。 

赤緑色のメタリックカラーの個体は、どうやら獣糞が目当てというよりも求愛しているように見えます。 
別個体(メタリックグリーン)の背後から忍び寄りマウントを試みても足蹴にされていました。 
素人目には体色が異なる別種に見えるので、誤認求愛なのでしょうか。 
せっかく面白くなりそうなのに、撮影中はこの行動に気づきませんでした。 

この山道を一度通り過ぎ、20分後にまた戻ってきました。(@1:08〜)
糞の右上の落ち葉に見慣れない小さなハエが来て居ました。 
黒っぽい金属光沢があり(構造色)、林床を歩き回りながらも翅を激しく動かしていました(翅紋誇示?)。 
ツヤホソバエ科の一種ですかね?(当てずっぽう) 
下痢便を占拠しているキンバエの群れに遠慮しているのか、謎の小バエは獣糞に近づくどころか離れて行きました。 

動画撮影中にふと横を見ると、アカバトガリオオズハネカクシ(旧名アカバハネカクシPlatydracus brevicornis)がやって来ました。 
タヌキの溜め糞ではハエ類と並ぶ常連客です。 
しかしカメラを向けた途端に後翅を広げて飛び立ってしまいました。 
アカバトガリオオズハネカクシの離陸・飛翔シーンは初見です。 
まずは1/5倍速のスローモーションでご覧ください。(@1:40〜) 
直後に等倍速でリプレイ。 
ハネカクシの仲間は鞘翅(前翅)が短いだけで、折り畳んでおいた透明な後翅を広げて飛ぶことができるのです。
「糞便臭に誘引されて飛来したアカバトガリオオズハネカクシが獣糞に着陸」というストーリーを思い描いたものの、どこに行ったのか見失ってしまいました。
自然観察では予測が裏切られてばかりで、なかなか思い通りに行きません。

さて、一体これは何の糞でしょう? 
これまでの調査でアナグマは軟便や下痢便が多いと分かったのですが、こちら側の山系ではトレイルカメラに写ったことがこれまでたった一度しかありません(生息密度がきわめて低いらしい)。 
タヌキの溜め糞という感じではなく、獣道を移動中に腹痛を我慢できず下痢便を漏らしてしまったように見えます。 
同じ地点(22b)に繰り返し通って排便するのなら、トレイルカメラを設置して糞の主の正体を突き止めることが可能です。 
しかし後日何度か通っても、同じ地点に獣糞は二度と残されていませんでした。 
野生動物のフィールドサインに関する本を読んでも、健康時の固形糞の典型的な特徴しか書いておらず、体調が悪いときの下痢便については見分け方が載っていません。 
プロのフィールドワーカーは獣糞の匂いだけでも種類をほぼ嗅ぎ分けられるのだそうです。 
しかし大型の重いザックを担いで山中を歩き回っていると、獣糞の匂いを嗅ぐためにザックをいちいち下ろすのが億劫になってきます。 
この日バテていた私は糞便臭のチェックを怠り、撮影も立ったままで済ませました。 
まだまだ修行が足りません。 
後で思うと、わざわざ地べたに這いつくばって獣糞の匂いを直に嗅ぐ必要はなくて、適当な落枝を拾って獣糞をつついてみてから枝先の匂いを嗅げば済むことでしたね。 

鳥の糞または白いキノコのような塊が下痢(?)の海に浸っているのが気になります。 
もしかして、これは下痢状の獣糞ではなく、スッポンタケなどのキノコ子実体のグレバがドロドロに溶けた跡なのかもしれない、と今思いつきました。
(スッポンタケの)傘の表面に悪臭のする粘液質のものが一面に現れ、悪臭がするようになる。これはグレバで形成された胞子を含むもので、その悪臭は、ハエなどを誘引し、胞子を運ばせるためである。キノコ本体は一日でとろけるように消滅する。(中略)傘はグレバの色で暗緑色に見える。 (wikipedia:スッポンタケより引用)
私はキノコについて全くの勉強不足なので、聞きかじりからの思いつきです。 
スッポンタケの子実体が溶けると、これほど大量の粘液質の物が残るのでしょうか。 
1本だけでなくスッポンタケの群落があったのかな?
現場でもっと興味を持って、謎のペーストを小枝でかき回したりして中を探ってみるべきでしたね。 
獣糞ならば未消化の種子などが含まれていたはずです。 
改めて謎のペーストを見直すと、獣の下痢便にしては均一過ぎますし、少なくとも表面には植物の種子は見えません。

獣糞ではなくスッポンタケの溶けたグレバだとすれば、キンバエやニクバエ以外の食糞性昆虫(アカバトガリオオズハネカクシやツヤホソバエの一種)が匂いに騙されかけても結局やって来なかった理由が説明できそうです。 
いつか山でスッポンタケの子実体を見つけたら、成長と分解の過程を微速度撮影してみたいものです。 
キノコ採りの名人になると鼻が利き、山中で独特のグレバ臭がしただけで辺りにスッポンタケが生えていると分かるのだそうです。

2023/02/15

早朝の林道にペアで現れた謎の野鳥:名前を教えて【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2022年9月上旬・午前5:10頃・(日の出時刻は午前5:07) 

里山の林道で水溜りのある区間を自動センサーカメラで監視していると、早朝に早起きの鳥が現れました。 
日の出直後ですけど、山の西側斜面には未だ朝日が射しておらず、赤外線の暗視映像で記録されていました。

林道脇の法面から湾曲しながら伸びたシナノキに地味な鳥が止まっています。 
シナノキの止まり木で方向転換してから右下に飛び降りました。 
続いて画面の左上隅から別個体が右下に飛び降りました。
スロー再生で見直しても、よく分かりません。
しばらくすると、画角の下端からひょっこり登場し、右上に飛び去りました。 
入れ替わるように別個体が右上から左下へ飛び降りました。 
この2羽は♀♂つがいなのかな? 
水溜りで朝一の水浴びをしたり水を飲んだりするのかと期待したのですけど、何もしないで飛び去りました。

腹に鱗模様があり、トラツグミかと思ったのですが、背中は鱗模様ではなく、のっぺりしています。 
白黒の映像とカラーの図鑑を見比べるのは難し過ぎて、私には分かりませんでした。 
この鳥の名前をどなたか教えてもらえると助かります。 

池で溺れるヒカゲチョウ♀に襲いかかるアメンボの群れ

 

2022年9月中旬・午後14:50頃・くもり 

山中の湧水が溜まった泉に地味な蝶が落水し、水面でパタパタと羽ばたいていました。 
カメラでズームインしてみると、ヒカゲチョウ♀(Lethe sicelis)でした。 
関連記事(8年前の撮影)▶ クロヒカゲの水難事故
後翅が破損している個体でした。 
翅の破損が左右対称ではないので、鳥に襲われかけたビークマークではなさそうです。 
口吻は伸びておらず、吸水行動ではありません。 
落水した蝶を中心として水面に波紋が広がっているのでヒカゲチョウをよく見ると、翅を細かく震わせていました。 
飛翔筋を使って準備運動をしているようです。
周囲は鬱蒼とした雑木林で、この日は特に薄暗く、気温も高くありませんでした。 
変温動物のヒカゲチョウは飛翔筋の準備運動をして体温を上げないと力強く飛び立てないのでしょう。 

その波紋を感知したアメンボの仲間(種名不詳)が水面を泳いで近づき、ヒカゲチョウの後翅にコツンとぶつかりました。 
アメンボ自身も動くと波紋が広がります。 
再びアメンボが獲物に襲いかかろうとした途端に、ヒカゲチョウが慌てたように激しく暴れ始めました。 
浅瀬なのに、水面でいくら羽ばたいても空中に飛び上がれません。 
このときヒカゲチョウの前翅表に白帯が見えたので、♀と判明しました。 
岸まであと少しなのに、泳いで岸に辿り着こうという発想もないようです。
「泳ぐ」という行動レパートリーが 蝶には無いのでしょう。
翅の表面を覆う鱗粉に撥水性があるので、水中に沈む心配はなさそうです。 

周囲から数匹のアメンボが一斉に集まってきたものの、暴れる獲物を仕留められません。 
口吻を獲物に突き刺して毒液を注入すればおとなしくなるはずですが、アメンボは狩りを諦めて退散しました。 
獲物が溺れて弱るまで待っているのでしょう。 

襲い来るアメンボを撃退したヒカゲチョウ♀は、閉じた翅を細かく震わせています。
水面から突き出た落枝の上に乗れば、飛び立てる気がするのですけど、どうでしょうか? 
水面に落ちた蝶はクモの網にかかったのと同じで、逃れようと暴れるとその振動で捕食者(アメンボ)に気づかれてしまいます。
気づかれないように死んだふり(擬死)するしかありませんが、それではいつまで経っても問題の解決にはなりません。
命のかかったジレンマです。

 次に、もっと大型の捕食者が登場します。 
一難去ってまた一難。 



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