某山寺の軒下でナナフシの死骸を発見。
仰向けに死んでいました。
同定のため、採集して持ち帰りました。
手元の本と見比べてみると(『ナナフシのすべて』p26)、初見のシラキトビナナフシ♀(Micadina conifera)と判明。
後翅を広げると鮮やかな赤色。
現場では見落としていたのですが、腹端の産卵弁から卵が一粒のぞいていました。
産卵中に寿命を迎えたのでしょう。
ナナフシの卵の実物を見るのも初めてです。
噂に聞く通り植物の種子に擬態しているようで、林床に落ちていても見つけられないでしょう。
ナナフシの種類によって異なる卵の造形美をじっくり観察するために♀の体から取り出そうとしたら、産卵弁にきつく締め付けられていて苦労しました。
堅い卵の表面は網目模様で刻印され、側面には切れ込みがあります。
虫ピンやピンセットを使って卵を摘出する際に堅い表面を誤って傷つけてしまったかと焦りました。
調べてみるとこの切れ目は精孔と呼ばれ、ここから精子が侵入して受精するのだそうです。
ただしシラキトビナナフシには♂の存在が報告されておらず、♀が単為生殖を行うらしい。
(従って未受精卵から幼虫が孵化する。)
採集した卵を容器で大切に保存し、外気に晒した状態で越冬させることにしました。
得られた卵はわずか一個のため春に幼虫の孵化を観察するのは困難だと思いますが、飼育してみるつもりです。
後で思うと、♀体内の卵巣に産み残した卵が残っていたかもしれないので解剖してみて採卵すればよかったですね。
※ 今日は珍しく動画ネタではなく写真のみです。
『日本動物大百科8昆虫Ⅰ』p116によると、
(ナナフシの)野外での産卵行動の記録は少ないが、飼育下での観察によると、産卵方式には「落下方式」と「粘着方式」がある。大部分の種類は、産卵の際に腹端を上下に振って卵を産出する落下方式である。
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