2021/12/11

ホツツジ訪花中のスズキハラボソツリアブ♀に交尾を挑む♂

 

2021年9月上旬・午前11:40頃・くもり

里山の尾根道に沿って咲いたホツツジの群落でスズキハラボソツリアブ♀(Systropus suzukii)が単独で訪花していました。 
腹部末端が太いので、おそらく♀だと思います。 
吸蜜中は花に足を掛けて羽ばたきを止めているので、ツリアブ類が得意とするホバリング吸蜜ではありません。 

腹端を少し上に持ち上げてから次の花へと飛び立ちます。 
そこへ別個体が飛来しました。 ほっそりした体型なので、おそらく♂でしょう。 
空中で♀に衝突したものの、すぐに別れました。 
ホツツジの花は比較的広範囲に咲いていたので、蜜源植物を巡る縄張り争いとは考えられません。
1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると、どうやら♂が♀を捕獲し交尾を挑もうとして失敗したようです。 
♀による明確な交尾拒否行動があったのかどうか、よく分かりませんでした。 
おそらく、この♀は既に交尾済みだったのでしょう。 
次は♂の求愛が成就して交尾に至る過程を観察してみたいものです。 



ところで、大谷剛『昆虫―大きくなれない擬態者たち』という本によると、
(寄生蜂の)産卵管はたいてい寄主に対応してうまく産卵できるように特殊化しているので、人の皮膚を突き破るのはなかなか難しいのだ。例外はアメバチのグループ。つい最近刺されてみたが、結構痛かった。だから、アメバチに擬態しているアブが存在する。 
写真4-1:アメバチ類とその擬態者。ニトベハラボソツリアブ、スズキハラボソツリアブのモデルがオオアメバチ、マツケムシヤドリコンボウアメバチ (p62より引用)
この指摘は面白く、初耳でした。 
確かにマツケムシヤドリコンボウアメバチとスズキハラボソツリアブは見た目がそっくり似ています。
しかし、私は夜に灯火の下ぐらいでしかアメバチ類を見たことがありません。 
(私の目が届かない山林の樹上などに多いのかな?)
昼間にフィールドで見かける個体数は、モデルよりも擬態種ハラボソツリアブの方が圧倒的に多い印象です。
アメバチは寄生蜂ですから、個体数が少ないのは当然です。 
そのような状況でベーツ型擬態が成立するかどうか(進化できるかどうか)、私は疑問です。 
つまり、鳥などの捕食者が擬態モデルのアメバチに刺されて(痛い目に遭って)学習する機会が乏しいのではないでしょうか? 
虫好きの脳は偶然の空似でもすぐに擬態だと言いたがる癖があります。
したがって、願望(希望的観測)や「言ったもん勝ち」ではなく、客観的な実証が必要です。 
食虫性の野鳥は本当にハラボソツリアブ類を怖がって忌避するでしょうか? 
実験でデータを取ろうとすると難しいですね。
だから今まで誰もやってこなかったのでしょう。

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