2018/11/28

不規則網にかかったコガタスズメバチの創設女王を捕食するオオヒメグモ♀(蜘蛛)



コガタスズメバチ初期巣の定点観察2018年#3

▼前回の記事
コガタスズメバチの巣の下に不規則網を張るオオヒメグモ♂(蜘蛛)

2018年7月上旬

コガタスズメバチVespa analis insularis)の初期巣に特有の細長いトンネル状の巣口は、ワーカーが羽化するとすぐに取り壊されます。
この取り壊しの様子を見届けたくて、軒下の初期巣を毎日のようにチェックしていました。

前回の定点観察から6日後。
私の嫌な予感が的中しました。
恐れていた通り、初期巣の直下に張り巡らされたオオヒメグモParasteatoda tepidariorum)の不規則網に1匹のコガタスズメバチ♀が捕らえられていました。
既にスズメバチは毒液を注入されて死んでおり、オオヒメグモ♀が糸で軽くラッピングしていました。
オオヒメグモ♀は獲物に噛み付いて体外消化を始めます。

死んだコガタスズメバチ創設女王の腹端に水滴のような物が見えます。
これは毒針から放出した毒液かな?と想像したものの、毒針は伸びていませんでした。
(水滴ではなくて、半透明な翅の先端部かも?)

映像を見直すと、コガタスズメバチ初期巣の巣口の直下に実はもう一匹、別のクモが居ました。
ピントが合わず、よく分かりませんが、これはオオヒメグモ♂かな?

オオヒメグモの不規則網にはガガンボの死骸も食べ残されていました。

真下から見上げるアングルで撮ると遠近感が分かりにくいので、斜め横から写真を撮り直してみました。
するとコガタスズメバチ女王の死骸は巣口のかなり下に吊り下げられていることが分かります。

前日は異状なかったので、この1日の間に巣に出入りしようとした女王蜂が油断してクモの罠にかかったのでしょう。
オオヒメグモはさすが全世界で繁栄しているクモだけあって、その不規則網は地味ながら恐るべき捕獲性能を誇ります。
コガタスズメバチ♀が必死に羽ばたいても不規則網の糸の末端部にある強力な粘着球から逃れられなかったようです。
スズメバチは毒針で反撃しようとしたはずですが、糸で絡め取られて万事休すだったのでしょう。
私がもう少し早く気づいていれば、対決の様子を観察できたのに、残念です。
コガタスズメバチの巣を定点観察するためには軒下から天敵であるクモの網を払っておくべきでしたが、とても手が届かない高所だったのです。


▼関連記事(10年前の撮影)
キアシナガバチ創設女王がオオヒメグモ(蜘蛛)に捕まる

コガタスズメバチの初期巣に特有の徳利型の細長い入り口はそのままなので、ワーカー♀が羽化する前に女王蜂が非業の死を遂げたことになります。
もし巣内で既に幼虫の何匹かが蛹になっていれば、ワーカー♀が羽化してくるかもしれません。
しかし羽化する度に下で待ち構えているオオヒメグモの餌食になりそうです。
そんな期待をしながら定点観察をしばらく続けていたのですが、初期巣の形状は全く変化せず、コガタスズメバチ♀が新たにオオヒメグモの不規則網にかかることもありませんでした。

したがって、育房内に未だ蛹は育っておらず、卵や幼虫は女王蜂の死後、全て餓死したと考えられます。


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。



2日後には、オオヒメグモの不規則網にカシノシマメイガPyralis farinalis)が捕らえられていました。


左上:カシノシマメイガ(蛾)@オオヒメグモ(蜘蛛)不規則網@軒下:コガタスズメバチ巣

9日後、オオヒメグモの不規則網に卵嚢が2個吊り下げられているのを見つけました。
まさに弱肉強食の世界で輪廻転生を目の当たりにしました。



シリーズ完。




【追記】その後の経過

2019年3月中旬

この古巣はその後、秋から冬になっても軒下に残っていました。
梯子も届かない高所なので古巣を採集して中の状態を調べることもできず、放置していたのです。
春になってから再訪すると、いつの間にか古巣の外皮の下半分が壊れていて、中の巣盤が露出していました。
下から見上げると巣盤は1層しか見えません。
大きく育ったコガタスズメバチの巣では中の巣盤は何層も積み重なった構造になっていますが、この事例では初期巣の段階で造巣が止まっているので巣盤も単層のままだと思われます。

古巣が壊れた正確な時期も理由も不明です。
冬の風雪に耐えられず自然に崩壊したのか、スズメやヒヨドリなどの野鳥が壊したのか、それとも寄生虫が巣の内部を食い荒らした結果なのか、可能性は色々と考えられます。
▼関連記事 
キイロスズメバチの古巣を壊して捕食するヒヨドリ(野鳥)
巣盤をよく見るとその中央部の3つの育房に白い膜のようなものが付着していて個々に穴が開いています。
これが羽化後の空繭だとすると、この初期巣は創設女王が死んだ時点で蛹になっていたワーカー♀が3匹だけ羽化できたことになります。
しかし私が観察していた限りではコロニーの活動が無かった(巣に出入りするワーカーの姿を見ていない)ので、女王不在の巣に生まれたワーカーはすぐに逃去してしまうのかもしれません。



左上にオオヒメグモの卵嚢が4つ吊り下げられています。

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