2012/12/09

棚網上の決闘:寄生蜂ニッコウクモヒメバチ♀がコクサグモ♂にアタック失敗



2012年8月下旬

草むらの足元(地上約40cmの高さ)にクサグモの仲間が店開きしていました。
棚網の上に一匹の虫が乗っています。
網に落ちた虫がクモに気づかれないようフリーズしているのかと思いました。
しかしよく見ると、腹端に産卵管が伸びている蜂が網上を少しずつクモに接近しています。
クサグモの天敵として有名なニッコウクモヒメバチ♀(Brachyzapus nikkoensis、旧名クサグモヒメバチ)という寄生蜂のようです。
棚網の主であるクモにニッコウクモヒメバチ♀は正面から接近しています。
寄生蜂は抜き足差し足忍び足で辛抱強く少しずつ獲物との間合いを詰めています。
網の振動を感知されればクサグモの餌食となる恐れがあるため、慎重な足取りです。


虎穴に入らずんば虎子を得ず。 棚網に入らずんばクサグモを得ず。
映像を見てもクサグモの棚網に粘着性は認められません
棚網の全体にうっすらと朝露が付着しており、蜂が歩いた跡が水滴となって残ります。

すごい緊張感で、見ている方も痺れます。
途中からはカメラを三脚に据えて撮ったので、5倍速の早送り映像でご覧下さい。(@5:50〜)
その間、クモは天敵の存在に気づいているのかいないのか、身じろぎ一つせず静止したままです。
寄生蜂が獲物を誘い出すような挑発行為はしませんでした。
ときどき触角を動かします。
爪先や触角に触れた網の成分を感知して寄主のクモだと分かるのでしょうか?

いよいよ決着の時です。
遂に寄生蜂がアタックしました!(決定的瞬間@7:46)
電光石火のアタックを1/10倍速のスローモーションで確認すると、先に仕掛けたのはクモでした。
先制攻撃として蜂を狩る意図は無く、逃避行動として跳躍ダッシュしたように見えます。
寄生蜂の側は獲物へのアタック(毒針麻酔)に失敗したようです。

棚網で両者の位置関係が逆転しました。
蜂はクモの方へ向き直っている一方で、クモは網の外側を向いたままです。
寄生蜂はもう一度アタックをやり直すでしょうか?
再び5倍速の早回し映像でご覧下さい。
寄生蜂が忍び足でクモに再接近…するかと思いきや、途中で向きを変えました。
寄主にアタックする時は必ず正面から行うのだとしたら、迂回するのでしょうか?

蜂は以前より足早になり、棚網の上を移動して行きます。
身繕いすると、向きを変えて棚網の外に出てしまいました。
横に生えたヨモギの葉上で身繕いしていた蜂がピョンと飛び降り、どこかへ行ってしまいました。
手強い相手に産卵を諦めたのでしょうか?

棚網の奥に管状住居は見つけられず、棚網に指で触れても確かに粘着性がありませんでした。
撮影後、せめて寄主のクモだけでも入手しようと試みたものの、逃げられて採集失敗。(追記2を参照)
体表に産卵の有無を確認したかったのに残念でした。
現場で接写したクモの写真を見る限り、寄生蜂は産卵に失敗したようです。
今回の寄主はコクサグモ♂Allagelena opulenta)でしょうか。
古より「日光クモヒメバチを見ずして結構と言うなかれ」と申しますし、次回は是非アタックの成功と産卵を観察してみたいものです。



【参考】
『狩蜂生態図鑑』p77、149によると

(ニッコウクモヒメバチ♀は)クサグモの棚網に飛び込み、クモが襲ってくると太い前脚で押さえ込み、第2脚と第3脚の間、第4脚の基部を刺して一時麻酔し、腹部背面の付け根に産卵する。クサグモの網はべたつかないので、網の上で大胆に振る舞うことができるのかもしれない。
『クモを利用する策士、クモヒメバチ: 身近で起こる本当のエイリアンとプレデターの闘い 』p95-96によると、
ニッコウクモヒメバチは、クサグモが網を張る植物の周辺を飛翔し、突然棚網の中に着地する。するとクモは獲物がかかったと思ってトンネルから飛び出してきてハチに突進するが、ハチはカウンターブローのようにクモを一刺しして麻酔に陥れてしまう。ハチの個体によっては着地した後、トンネルに向かって歩いていくこともある。なお、このハチはコクサグモも寄生の対象としている。





触肢が若干膨らみを帯びているので♂?!









【追記】

「中部蜘蛛懇談会 クモの掲示板」にて問い合わせたところ、よしかわさんよりコクサグモとのお墨付きを頂きました。

これは、コクサグモのようですね。中部蜘蛛懇談会のホームページに以下の記事があります。似たもの同士の簡単識別法「クサグモとコクサグモ
【追記2】
『ファーブル写真昆虫記12:糸をつむいであみづくり』でクサグモを扱った章があり、クサグモの確実な採集法が伝授されています。 (p31)
管のような隠れ家の奥に予め紙袋を差し出しておいてから棚網のクモを抜け道へ追いやると良いそうです。

同書p47によると、
コクサグモは、頭胸部の背中側の黒い斑紋の中に、白い放射状のすじがあることで、クサグモと見分けることができます。



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