2012/10/13

初期巣の煙突内壁を磨くエントツドロバチ♀



エントツドロバチの営巣観察@東屋軒下:その1

2012年7月下旬

山道に立つ東屋の軒下のあちこちでエントツドロバチ♀(別名オオカバフスジドロバチ;Orancistrocerus drewseni
)が何匹も営巣しているのを見つけ、定点観察に通いました。

この日は急に激しいにわか雨が降り始めたので、東屋で雨宿り。
ひどく暑かったので、打ち水代わりになって一息つけました。

初期巣Eの煙突の奥に蜂の顔が見えます。
煙突内で何やら激しく動き続けています。
それまで別の泥巣での観察に集中していて気づきませんでした。
泥で作った煙突内で蜂は回転しながら内壁を脚で激しく引っ掻いていました。
これまで見たことのない行動です。
この作業に大顎はあまり使わないようです。
マクロレンズで接写するには光量不足なので、白色LEDの強力マグライトで照らしながら撮影しました。
蜂は眩しくても気にせず煙突掃除を続けます。
今にもChim Chim Cher-ee♪と煙突掃除屋さんの陽気な歌が聞こえてきそうです。

育房につながるトンネルをつるつるすべすべに磨いて、留守中に外敵が侵入するのを防ぐための行動でしょうか。
エントツドロバチの天敵としてはアリよりも寄生ツリアブ幼虫の侵入が怖いはずです。

煙突状の入り口は営巣初期に特有の一時的な構造で、やがて撤去されます。

煙突の設計ミスで体が中で閊えた蜂が外に出られずもがいている?などと他の可能性も無理やり考えてみました。
しかし前日の煙突作りを観察すると、蜂は煙突の中に入り外に向けて泥玉を付け足し煙突の増築を行っていました。
従って、煙突を狭く作ってしまったという設計ミスはあり得ません。

増築直後の煙突内壁は当然凸凹していました。

2日後、別の初期巣SSE-Rでも同様の煙突内壁磨き行動を観察できました。(映像なし)
個体識別のマーキングは失敗したものの、エントツドロバチ♀Eと♀SSE-Rはおそらく別個体と思われます。
煙突内壁磨きは本種で一般に見られる行動と考えて良さそうです。


『日本蜂類生態図鑑:生活行動で分類した有剣蜂』p37によると、日本で唯一の煙突造りのドロバチであるオオカバフドロバチ(Orancistrocerus drewseni drewseniが作る
この煙突は外径1cmの美しい円筒で、内壁面は滑沢だが外壁面には細かい波状の浮き彫りが横に走っている。これは営巣中の蜂にとって極めて重要な構造物のようで、少しでも破損すると直ちに修復される。(中略)この蜂の♀は多種のドロバチと異って、営巣期間中の過半の時間を、巣の監視に費やしていて、一旦頭から先に巣内に入って中で方向転換をして、煙突の中程まででてきて、そこで頭を巣の外の方に向けて監視につく。巣口に何かが接近して外光の変化をみとめると、蜂は煙突の端まででてきて顔だけを出して外の様子をうかがうのが常である。



つづく





前日の泥巣Eの様子



↑【おまけ】BGMをどうぞ!

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