スズバチ泥巣の飼育記録
2012年5月下旬・室温21℃
前年の11月中旬に山中の三角点からドーム状の泥巣を採集しました。
(詳細はこちらの記事参照。)
泥巣を室内で越冬させ飼育してきたものの、羽化してくるのは寄生者のドロバチヤドリニクバエ(Amobia distorta)ばかりでした。
明け方に飼育容器の方から聞こえるガリガリという音で目が覚めました。
このときはカタツムリ(ヒダリマキマイマイ)が餌を齧っているのかと思い、あまり気に留めずにまた寝てしまいました。
朝に飼育容器を覗くと、育房内でスズバチ(Oreumenes decoratus)の成虫が羽化していました。
泥巣を中から大顎でガリガリ齧って壊し、脱獄作業の真っ最中でした。
慌てて撮影開始。
無事に羽脱する瞬間を記録することができました♪
砂を噛むような生活? |
硬く乾いた泥巣を中から大顎で削り取り脱出を試みる。 |
羽脱直後のスズバチの体は土で汚れている。 |
容器の底には寄生者ニクバエの囲蛹が多数転がっている。 |
蜂はプラスチック容器の壁を登れないようです。
汚れた体をきれいにし始めました。
羽化したスズバチの性別は?(※)
標本にしないと分からないかも。
もう一つ育房が残っているのですが、多くのドロバチで見られるように雄性先熟なのだろうか?
大量のニクバエに寄生されて寄主は全滅かと諦めかけていたので一安心。
形状から予想した通り、スズバチの泥巣であることが確かめられました。
スズバチ羽化後の泥巣 |
側面に脱出口 |
3つある育房のうち、中央の育房から羽化していました。 |
残りの育房はニクバエに寄生されている? |
(つづく→「蜂蜜を舐めるスズバチ♀」)
【追記】
※ いつもお世話になっている「蜂類情報交換BBS」にて問い合わせたところ、青蜂@管理人さんから以下の回答を頂きました。
動画のスズバチの性別ですが、動画を確認したところメスのようですね。腹柄が第1節、それ以降の腹節を数えたところ腹柄を含めて6節でしたのでメスになります。
図鑑『札幌の昆虫』p352によると、蜂の♂と♀の区別は
ミツバチ、アナバチ、スズメバチ、ツチバチの仲間は、♂の触角は13節、♀は12節で、腹節の数も♂は♀より1節多い。
同一個体の標本 |
スズバチ♀顔 |
スズバチ♀右触角 |
スズバチ♀側面 |
腹柄が第1節、それ以降の腹節を数えたところ腹柄を含めて6節 |
腹端から毒針は伸びていなかった。 |
標本:腹面@方眼紙 |
標本:腹部腹面@方眼紙 |
【追記】
『とっくりばち (かがくのとも特製版)』によると、同じドロバチ科のキアシトックリバチは羽化の際に壺の泥壁を中から湿らせてから食い破って脱出するらしい。
唾液を吐き戻すのでしょうか。
次回はこの点に注目してドロバチの羽化を観察してみます。
拝見させていただきました!
返信削除とてもスズバチに興味を持ちました!
スズバチの真下からの写真などがあったら見せていただきたいんですがありますかね??
初めまして。
削除コメントありがとうございます。
こちらでスズバチは最も身近な(数の多い)ドロバチのひとつです。
真下からの写真とは腹面のことですかね?
同一個体♀標本の腹面を接写した写真を探してみたらあったので、追加掲載しておきました。
展翅・展足をしないで腰が曲がった姿勢のまま死骸を撮っただけです。
何かのお役に立てたでしょうか?