2025/01/13

疥癬で毛が抜けたホンドギツネがニホンアナグマの越冬用巣穴を覗いて回る【トレイルカメラ】

 



2024年2月上旬・午後12:40頃・気温11℃ 

根雪が積もった平地の二次林でニホンアナグマMeles anakuma)が越冬する営巣地(セット)をトレイルカメラで見張っていると、白昼堂々ホンドギツネVulpes vulpes japonica)が登場しました。 

この時期のキツネはふさふさの冬毛をまとっているはずなのに、この個体は毛並みが黒っぽく、ボサボサでやや汚らしい印象でした。 
特に、尻尾の毛量が貧弱です。 
素人目には尻尾の骨が曲がっているような気もするのですけど、どうでしょうか? 
全身の毛が濡れている訳でもなさそうですし、おそらく疥癬という皮膚感染症にかかっていると思われます。 
ヒゼンダニSarcoptes scabiei)が体外寄生した結果、痒くて掻き毟り、毛が抜けていくのだそうです。 
恒温の野生動物にとって、厳寒期に毛が抜ける疥癬症は死活問題です。 
この個体は果たして雪国の冬を無事に越せるのかどうか、心配です。
半年前の夏にここで見かけた個体「細尾」の症状が進行したのかな? 

関連記事(3、半年前の撮影)▶  


アナグマの巣口は2つとも開口しているのですが、疥癬キツネはまず巣口Lを覗き込んで匂いを嗅いでいました。 
次は巣口Rへ向かうと、そこでも匂いを嗅いだだけでした。 
巣内には侵入しようとせずに、右奥の二次林へとに立ち去りました。 
もしも疥癬キツネがアナグマの巣穴に押し入ったら、中で冬眠するニホンアナグマにもヒゼンダニが移り、疥癬の感染が拡大しかねません。

塚田英晴『野生動物学者が教えるキツネのせかい』によると、
キツネが、皮膚の中にひそむダニによって引き起こされる疥癬という病気にかかっていた場合、キツネが寝場所としたところなどに飼い犬や飼い猫が接触することで、この皮膚病に感染してしまう
・しっぽがゴボウのようにとがり、全身の毛が抜けた、お化けのような姿のキツネ
・疥癬がひどくなったキツネは死んでしまいます。


【関連文献】
曽根啓子; 西村祐輝; 野呂達哉. 名古屋市内で疥癬症によって死亡したと思われるアカギツネ. なごやの生物多様性, 2020, 7: 89-92. (全文PDFが無料ダウンロード可)


つづく→ 


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モエギザトウムシ?の群れがスギ林床で徘徊探索、身繕い、追跡逃走

 

前回の記事:▶  


2023年9月上旬・午後12:40頃・晴れ 

平地のスギ防風林で倒木の横に残されたホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の溜め糞場phを見に来たら、モエギザトウムシLeiobunum japonicum)の群れが集まっていました。
どうやら繁殖期のようです。 
どの個体に注目すべきか、あちこち目移りしてしまいます。 
複数個体を撮った寄せ集めの映像です。 

ヤブコウジ稚樹の葉の上に乗って、日光浴しながら身繕いしている個体がいました。 
歩脚に欠損はありません。 
特に長い第1歩脚(L1)の先端を口で舐めて掃除しています。 

タヌキの溜め糞場phで2匹のモエギザトウムシ?がニアミスしたのですが、1匹が薄暗いスギ林床を慌てて逃げ出しました。 

次はスギ風倒木の上を歩いてくる個体に注目しました。
歩脚が極細で異常に長いザトウムシが素早く静かに歩くと、まるでSF映画の惑星探査機ロボットのようだと、いつも見るたびに思います。 
この個体は、左足を1本欠損していました。 
スギ倒木の側面に沿って歩いていたら、倒木の表面に静止していたワラジムシPorcellio scaber)2匹と遭遇しました。 
モエギザトウムシが歩脚の先でワラジムシに触れたので、捕食シーン(狩り)が見れるかと期待しました。 
ところ次の瞬間、ワラジムシもザトウムシも慌てて逃げ出しました。 


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2025/01/12

外出中に新雪で埋もれた巣口を雪かきしてから中に入るホンドタヌキ♀♂【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年2月上旬

根雪の積もった休耕地でホンドタヌキ♀♂(Nyctereutes viverrinus)の越冬用営巣地を自動撮影カメラで見張っています。 


シーン1:2/2・午後22:00・気温-2℃(@0:00〜) 
雪が降る晩に、タヌキが単独で雪原を手前から奥へ向かって歩いて行きます。 
営巣地は新雪で覆われ、他の動物が残した足跡はありませんでした。 
タヌキの足は雪面にあまり深く残らないことから、凍結した雪面にうっすらと新雪が積もっている状態だと分かります。 
タヌキは 一直線に巣口Mに向かったものの、留守中に家の玄関(巣口M)が新雪にすっかり埋もれていたので、当惑したように雪面の匂いを嗅いでいます。 
身震いしてから雪原をあちこち彷徨き、雪面に鼻面を突っ込んでは匂いを嗅ぎ回ります。 (迷子になった)

この映像は赤外線による暗視動画であることを思い出してください。 
つまり、現場は真っ暗な夜の雪原です。 
タヌキの目にはタペータムがあるので、暗くても雪明りでなんとかぼんやり見えるのかもしれません。 

タヌキは巣口Mに戻ってきて前足で雪を軽く掘り、雪かきしています。 
入巣Mしたかどうか見届ける前に、残念ながら1分間の録画時間が終了してしまいました。 
この時点では、てっきり余所者タヌキが営巣地を訪ねて来た(家主の安否が心配?)のかと私は思いました。 



シーン2:2/3・午前2:06・気温-2℃(@1:00〜) 
約4時間後、日付が変わった深夜にも雪が降り続けています。 
2頭目のタヌキが雪原を手前から奥へ向かう動きに、監視カメラのセンサーが反応しました。 
タヌキの後ろ姿で尻尾の(付け根の)模様を見比べると、シーン1に登場したタヌキとは別個体bであることが分かります。 
【参考文献】野紫木 洋『オコジョの不思議』p74の模式図

4時間前のタヌキが雪原を歩いた足跡が未だくっきりと新雪に残っていることから、この間に積雪量はほとんどなかったことが伺えます。 
その古い足跡を読み解くと、営巣地から立ち去った足跡が無いので、シーン1のタヌキaは無事に入巣したのだと推理できました。 
自分の足跡を忠実に辿って手前に戻った可能性も考えましたが、前後の映像を見比べても足跡が完全にマッチする(変化なし)ことから却下しました。

一方、タヌキbは先行者aの付けた足跡を辿って巣口Mに来ると、匂いを嗅いで点検しました。 周囲を見回してから、ゆっくり巣穴Mに入りました。 


【考察】 
採餌中のタヌキは♀♂ペアで行動を共にすることが多いです。 
しかし今回は、(途中から?)別行動で採餌していたようです。 
餌の乏しい厳冬期は、各自が行動範囲を広げて餌を探し歩く必要があるのでしょう。 

外出から先に戻ったタヌキaが、留守中に新雪で埋もれてしまった巣口Mをなんとか探り当て、雪かきをしてから入巣Mしたようです。 
4時間も遅れてようやく営巣地に戻った後続タヌキbは、先行個体の足跡を辿って、雪原を迷わずに帰巣Mできました。 


つづく→


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