2023/09/18

波状に滑翔するトビの謎(野鳥)ディスプレイ飛翔?

 

2023年3月上旬・午後12:35頃・晴れ 

岸に雪が残る早春の川の上空を単独で飛ぶトビMilvus migrans)の様子がおかしいので気になりました。 
周囲の木々が邪魔で撮りにくいのですが、翼の下面の斑紋からトビと同定できました。 
晴れた青空と白い雲を背景に、羽ばたかずに翼を広げてグライダーのように滑翔しています。 
上下に大きく波打つような飛び方をするトビを今まで見たことがありませんでした。 
風切り音でトビの鳴き声は聞き取れませんが、鳴かずに黙って飛んでいたようです。 
キョッキョッ♪と鳴くキツツキ(おそらくアカゲラ)の声が近くの河畔林から聞こえてきます。 

この波状飛翔の意味を知りたいのですが、トビの生態に特化した本や写真集は出版されていません。 
猛禽類の中でトビは普通種なのに、なぜかバードウォッチャーからは人気がなくて資料が無いのです。 
『フィールドガイド日本の猛禽類』シリーズでトビを扱った続編が出版されることを切望します。 

自分なりに、いくつか仮説を立ててみました。 
(1)独りで強風に乗る遊び(ウィンドサーフィン)を楽しんでいるのかな? 
(2)上昇気流に乗りながらクルクル回って帆翔したくても、上昇気流が弱くて不安定なのでしょうか? 
(3)繁殖期が始まり、異性にアピールするディスプレイ飛翔なのかもしれません。 (願望)

実は以前、鳴きながら似たような波状飛行を披露するノスリを観察しました。 




幸いノスリに関する専門書は出版されていて、それによると波状飛翔ディスプレイは威嚇や縄張りからの排除行動だと知りました。 
その解釈がそのままトビにも当てはまるのかどうか問題です。 
今回のトビは黙って飛んでいますし、私のことなど眼中には無いようで、対人威嚇には見えませんでした。
波状飛行ディスプレイにしては上下動が小さいでしょうか?


2023/09/17

雪山で見つけたニホンカモシカの立小便跡と糞粒【アニマルトラッキング・フィールドサイン】

 

2023年1月中旬・午後13:45頃・晴れ 

スノーシューを履いて雪深い里山に登っている途中で雪面にニホンカモシカCapricornis crispus)の新鮮な足跡を見つけたので、追跡開始。 
雪質が腐れ雪(湿雪)だと蹄の跡がくっきり残り、分かりやすいです。 
雪山でカモシカの溜め糞場を見つけるのが今季の目標です。 

やがてカモシカが立ち止まって(立ったまま)排尿した跡が雪面に黄色く残っていました。 
尿で自分の縄張りをマーキングする行動は様々な哺乳類で見られますが、そのようなマーキング時には少量しか排尿しません。 
それに対して今回のカモシカは、膀胱に貯まっていた尿を時間をかけて一気に放出したようです。 
温かい小便で雪が溶け、雪面に丸く穴が開いています。 

※ もしかして、私が雪面に立ち小便した跡を撮ったヤラセ映像だと思う人がいるかもしれません。
そうだとしたら、周囲の雪面に私の足跡が残るはずです。

カモシカの排尿姿勢には性差があるそうです。
雪面に残る尿の放出角度からカモシカの性別が見分けられるでしょうか?
ちなみに、ニホンカモシカのマーキングは尿ではなく、顔の眼下腺からの分泌物で行います。

15分後にはスギを植林した斜面でアカマツ林との境界付近にカモシカの新鮮な糞塊を見つけました。 
黒い糞粒の量はそれほど多くなく、排泄1回分のようです。 
カモシカの溜め糞場だとすれば雪の下に古い糞が大量に埋まっていることになりますが、そもそもカモシカがここに何度も通っている形跡がありません。 
縄張り巡回中に便意を催して、通りすがりに排便しただけでしょう。 

その後も足跡を追い続けると、いつの間にかカモシカの足跡が順行⇔逆行と頻繁に入れ替わるようになりました。 
雪山で体力の消耗を軽減するために自分の古い踏み跡の上を選んで歩いているのか、あるいはワンダリング(堂々巡り)しているようです。 
雪面の蹄跡を読み解くのが難しくなり、追跡を諦めました。 
おそらくカモシカはワンダリングで私の追跡をまいてから急斜面を登って行ったようです。 




早春の雪解け田んぼで採食するコハクチョウの大群と首輪標識を付けた個体

 

2023年3月下旬・午後15:00頃・晴れ 

早春の広大な雪田にコハクチョウCygnus columbianus bewickii)の大群が散開して採食していました。 
冬に渡来した白鳥の群れが毎晩過ごす集団ねぐらの川があるのですが、朝になって採餌のために塒から飛び去る行き先が長年分かりませんでした。 
白鳥に関する本を読んで、昼間に田んぼで採食するという知識は得ていました。 
しかし、ここ豪雪地帯では冬季に田んぼが深い雪に埋もれていますから、白鳥は採食できないはずです。
隣の宮城県や福島県など雪の少ない暖かな地方に毎日遠征して餌場に通っているのだろうと勝手に推測していました。 
念願だった白鳥の採食シーンを実際に観察するのは今回が初めてです。 
春になって雪が溶ければ、集団塒の川から遠出しなくても近場の田んぼで採食できるようになるのでしょう。
長年の謎(ミッシングリンク)がようやく解けたときの喜びは、自然観察の醍醐味です。 

白鳥の数があまりにも多く(数百羽?)、どの個体の行動に注目すべきか、目移りしてしまいます。 
採食中の白鳥にどれだけ近づけるか分からなかったので、警戒させないように、まずは遠くから大群の全景を撮影します。 
よく晴れて春の日差しが強く、残雪が溶けて露出した地面からは陽炎がゆらゆらと立ち昇っています。 
せっかくなので白鳥のシャープな映像を撮りたいのですけど、自然現象なので仕方がありません。 

コハクチョウたちは、雪が溶けて泥濘になった田んぼで落ち穂を丹念に食べているようです。 
羽毛が純白の個体は成鳥で、少数混じっている灰色の個体は若鳥です。 
採食だけでなく、羽繕いしたり、雪原や畦道に座り込んで昼寝をしたりする個体も見受けられます。 
その場で背伸びをしながら翼を羽ばたかせる個体もいました。 
コーコー♪と白鳥が鳴き交わす声もかすかに聞こえます。 

カメラを右から左へゆっくりパンしていると、大群に混じって1羽だけピンクの首輪を装着した個体が居ました。(@2:05〜) 
白鳥を一時捕獲して個体標識することで、渡りのルートなど詳細な研究が可能になります。
例えば、この個体はロシアのシベリア地方で首輪を装着されたのかもしれません。
首輪には個体標識の記号や文字などが記されているはずですが、遠いので残念ながら読み取れません。
それどころか、撮影中の私は首輪装着個体に全く気づきませんでした。 

参考サイト:


予定を変更し、この後も夢中で白鳥を撮りまくりました。 

つづく→

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