2022/12/15

翅紋を誇示しながら林床で身繕いするハネフリバエ科Euxesta属の一種

 

2022年8月中旬・午後12:45頃・晴れ 

廃道状態の細い山道にホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が残した溜め糞場fのすぐ横の林床で見慣れない微小なハエが思わせぶりな行動をしていました。 
おそらくヒロクチバエ科の一種と思われます。(間違っていたらご指摘願います。) 
双翅目の同定でいつもお世話になっている画像掲示板「一寸のハエにも五分の大和魂・改」にて問い合わせてみたところ、茨城@市毛さんから「Ulidiidaeハネフリバエ科のEuxesta属の1種」とご教示いただきました。
かなり微小な虫なので(未採寸)、マクロレンズを装着してじっくり接写してみました。 
腹背は緑がかった金属光沢(メタリックな構造色)に輝いています。 
胸背はシルバーで、剛毛は少ない印象。 
平均棍は白く、複眼は赤茶色。 
側面から接写すると口吻が独特の形状でした。 

透明な翅の前縁に黒い縁紋が2つあり、それを誇示するように左右の翅を交互に広げる動きをひたすら続けています。 
左右の翅を同時に動かすこともあれば、非対称に動かすこともあります。 
まるで手旗信号のようですが、誰に何のメッセージを送っているのか、暗号解読してみたいものです。 
普通に考えれば、交尾相手の異性を誘引する配偶行動(ディスプレイ)でしょう。 
同様の翅紋誇示をするミバエ科のとある種類では、天敵ハエトリグモの威嚇誇示(ディスプレイ)を真似することで(行動擬態)、捕食されないように牽制しているのだそうです。
Greene, Erick, Larry J. Orsak, and Douglas W. Whitman. "A tephritid fly mimics the territorial displays of its jumping spider predators." Science 236.4799 (1987): 310-312.
だとすれば、今回のハネフリバエもマクロレンズを近づける私に対して警戒していたのかもしれません。
動画の最後に翅を振るのを止めたのは、警戒を解いたと説明できそうです。

落ち葉や細い落枝の上で左右の前脚および後脚を互いに擦り合わせて身繕いしています。 
化粧中も翅紋誇示を止めません。
当時は微小な寄生蜂なのかと予想したのですが、今回じっくり接写してみると、ハチではなくハエの仲間でした。 
宿題だった謎が解けて、ささやかな喜びを得られました。 
暑い真夏に何度も山を登って溜め糞を探し歩いた甲斐がありました。 

私が溜め糞に近づいたので、警戒して一時的に避難したようです。 
Euxesta sp.が溜め糞に戻ってくれるまで辛抱強く待ちましょう。 



【追記】
「ハネフリバエ科Euxesta属」でネット検索してみると、「明石・神戸の虫 ときどきプランクトン」さんのブログ記事が2本ヒットしました。
掲載写真もそっくりですが、私が見た個体は産卵管が無かったので♂だったようです。

てっきり本種♀は獣糞に産卵するのかと想像したのですけど、意外にも伐採木の樹皮の割れ目に産卵するのだそうです。

2022/12/14

タヌキ・アナグマの溜め糞場の匂いを嗅ぎ回る若いニホンカモシカ【トレイルカメラ】

前回の記事:▶ 夏のスギ林道を昼も夜も行き来するニホンカモシカ【トレイルカメラ:±暗視映像】

2022年8月中旬・午後13:17・気温30℃ 

ニホンカモシカCapricornis crispus)が低山のスギ林道を左から歩いて来ました。 
タヌキとアナグマが共有している溜め糞場sの手前で立ち止まり、地面や下草の匂いを頻りに嗅ぎ回っています。 
角が細く体格も華奢なのでの若い個体(幼獣?)のようです。 
溜め糞場に興味津々なのも、若いカモシカの特徴です。 
異種の溜め糞の上にカモシカが対抗するように排便したら面白いのですが、そのようなことは一度もありません。

右へ立ち去りかけたカモシカが立ち止まり、トレイルカメラの存在に気づきました。 
それでも怯える様子はなく、引き返してカメラの方に近寄ってきます。 
死角に消えた後で何をしているのか、とても気になります。 
逆アングルにもう1台のトレイルカメラを設置したら謎が解けるでしょうか? 


飼育下で昆虫ゼリーを食べるセンチコガネ

前回の記事:▶  
オオセンチコガネ♂の水難事故 
池に落ちて溺れそうなセンチコガネをアメンボは襲うか?

2022年8月上旬・午前9:00頃 

里山で採集してきたオオセンチコガネとセンチコガネPhelotrupes laevistriatus)1匹ずつを持ち帰って飼い始めました。 
昆虫ゼリーで糞虫をある程度は飼育可能という情報を得たので、試してみます。 
他にはヤギ(山羊)Capra hircus)の糞を拾ってきて給餌してみました。 

しばらくすると、センチコガネは昆虫ゼリーを夢中になって舐めていました。 
周囲に置いたヤギの糞には見向きもせず、地面に埋め込んだ昆虫ゼリーの容器に入り込んだまま出てきません。 

昆虫ゼリーがなぜか液状化しています。 (水気が多い)
糞虫が溺れていたときに水を大量に飲み、それを飼育下で吐き出した(あるいは排尿した)のかな? 

ゼリーが黒く汚れているのは、糞虫が歩き回ったせいで土が混入してしまったのか、あるいはヤギの糞をゼリーの中に運び込もうとしたのかもしれません。
昆虫ゼリーの味がいまいち気に入らなかったセンチコガネが、ヤギ糞を混ぜて味変したのかな? 

一方、同居させたオオセンチコガネ♂は姿が見えません。 
地中に潜っていてヤギの糞を食べているのでしょうか。 
どうもオオセンチコガネは昆虫ゼリーが好みではないようです。 
体長はオオセンチコガネ>センチコガネだったので、昆虫ゼリーを巡る争いに負けたとは考えにくいです。 

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。 


夜中になるとブーン♪と飛ぶ羽音を聞きました。 
いつの間にか飼育容器から脱走したようです。 
与えたヤギの糞の鮮度が古かったのかもしれません。
今季は溜め糞場でのフィールドワークに注力したら、それだけで体力的にしんどくて、糞虫の飼育は片手間で中途半端になってしまいました。

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